259話 静かな場所で
「……」
私は現在両腕に縄で後ろ手に縛られている。目隠しはされていないので周囲の状況は分かるけど……私の前には覆面をした二人組が立っていた。誘拐犯の一味だろうけど、こんな状況で逃げ出すことは不可能ね。所持品は全て没収されてしまったし、防御石だって今は持っていない。
一緒に誘拐されたナックさんは無事かしら……まあ、今は自分のことだけで手いっぱいで彼のことを心配する余裕はないけれど。
「よっしゃ、上手く行ったぜ! メテオが飛んできた時はどうしようかと思ったけどな!」
「あれは想定外だったな……クレスケンスの生き写しが居たとか聞いていたが、あの小娘がそうなんだろうな」
馬車で駆けだした際に飛んできた攻撃……あれはどうやら、マリアベルの攻撃だったみたいね。途中で攻撃が止んだのは、私への被害を危惧してなのかしら? まあ、そのおかげで今でも生きているんだけどね。
「マラーク神官長には身代金の要求はしたんだろうな?」
「ああ、既に済ませてある。2000万スレイブを用意するようにとも伝えてあるさ」
「ははは、やったぜ! これで俺達も安泰ってわけだな!」
「等分に分けたとしても、一人当たり300万スレイブ以上だ。あいつの報酬の200万スレイブを引いたとしても十分過ぎる収入だろう」
「確かにな! これはやめられねぇぜ!」
2000万スレイブの身代金……またとんでもない金額が出て来たわね。マラークさんに要求しているようだけれど、そんな金額をすぐに用意できるのかしら?
「姉ちゃん、済まねぇな。大人しくしてれば命までは取らねぇよ。あんたをダシにしてちょいとお金を得るだけだからな」
「……はあ」
命までは取らないという言葉をどれだけ信用すればいいのか分からないけれど、少しは安心しても大丈夫かしら。多分、シグルドさんやアルファさんが動いてくれていると思うし。それよりも、ナックさんは無事なのかしら。
「私と一緒に誘拐されたナックさんは無事なんですか?」
「ナック? ああ、あの野郎か。そっちに関しても問題ねぇよ。姉ちゃんは自分の身だけ心配していることだな。金銭交渉が失敗したら、いくら俺達でもあんたを殺すしかなくなるわけだしな」
うわ……やっぱり殺されることも想定されているのね。今さらながら、身体に震えを覚えていた。
「まあ、奴らが奇跡の錬金術士を人質に取られて、2000万スレイブを渋るとは思えないけどな
私に2000万スレイブもの価値なんてあるんだろうか……それがまず心配だった。
「お、おい……マズいぞ!」
「どうかしたのか?」
そんな時、別の誘拐犯と思われる人物が私を見張っていた二人に駆け寄って来た。何やら想定外のことが起こったみたいね。
「外に見知らねぇ奴が待機している。俺達の誘拐がバレたんじゃねぇか?」
「まさか……そんなはずは……!」
外にいる人達? もしかすると、シグルドさん達かもしれない。私は淡い期待を胸に抱いていた。




