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257話 誘拐 2


(シグルド・バーゼル視点)


「で、アイラはまんまと連れ去られたというわけか」


「そーだよ! 連れ去られたんだよ!」


 マリアベルがかなり怒っているようだが、とりあえずは無視しておく。俺はアルファに声を掛けた。


「アルファ、どうなんだ?」


「済まない、シグルド……言い訳でしかないが、マラーク神官長との話があって少し店を離れていたんだ」


「なるほど……そういうことか」


 俺かアルファ……傭兵として雇われている以上はどちらかが、アイラの元にいるという手筈だったが。それが狂わされたということか。


「マラーク神官長との話はどういったものだったんだ?」


「いやそれが……あまり実入りがある話ではなかった。世間話のついでの話というのか……どうもマラーク神官長自体が他の者からの依頼で私を呼んだようなんだが」


「ほう、それは興味深いな」


 マラーク神官長が今回の誘拐に関与しているとは考えにくい。上手く使わされたということか? 俺は色々と考えを巡らせながらマリアベルに視線を合わせる。


「お前が近くにいても、アイラを救うことは出来なかったか」


「だってしょうがないじゃん! メテオを撃とうとしたけど、カミーユさんに止められたんだし!」


 マリアベルはかなり不満そうな顔をしているな。しかし、カミーユの判断は正しいと言えるだろう。


「まあ、お前の広範囲魔法ではアイラ自身を殺しかねなかっただろうからな」


「う~~~! せっかくアイラを救おうとしたのに~~!」


「カミーユ、済まなかったな。世話になった」


 俺は偶々訪れたカミーユに礼を言った。本来なら俺達雇われた者で解決しなければならない事態だ。彼女の参戦は完全に想定外だからな。


「へえ、シグルドにしては素直じゃない。いつもそのくらい素直なら、もっと女にモテるんじゃないの?」


「茶化すなよ、これでも感謝しているんだ」


「へえ、随分と殊勝な心掛けね。流石にアイラを攫われたのは厳しかった?」


 カミーユは挑発的な物言いだったが、図星と言える。傭兵の仕事を請け負って今回のような失態は初めてだからな。常に警戒していたつもりだったが、アイラが攫われる現実を目にすると考えが甘かったと言わざるを得ない。


「お前の言う通りだ。今回は完全に失態だな。アイラから受け取っている金銭を返却しなければならないかもしれん」


「ちょっと……あんたらしくないわよ。もっと傍若無人な振る舞いをしてくれないと、こっちの調子が狂うわ」


「ふん……」


 カミーユは少し戸惑っているようだったが、今の俺には傍若無人な振る舞いをする権利がなかった。それだけのことだ。


「シグルド、この後はどうする?」


「アイラを攫った馬車がどの方向に行ったのかは把握しているだろう? その方角で身を隠せそうな場所を探すのが先決だろうな」


 最悪、アイラ自身が殺されていることも想定される。もしも殺されているなら、攫った者達は皆殺しだが……俺の中ではそう決めていた。


「アイラを攫った馬車は南の方に行ったことは分かっているが……それだけでは特定は難しいだろう?」


「あ、大丈夫だよ~~! 私の能力で探知できるから!」


「なんだと……?」


 南に向かったという情報だけでは雲を掴む作業になりそうだったが……ここに来て、マリアベルが頼りになりそうな言葉を発した。まあ、こいつの能力は未知数だからな。話を聞いても良いかもしれない。俺はマリアベルの声に耳を傾けることにした。


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