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254話 悪巧み 2


「良かった、今日もたくさん売れてくれて」


 日も暮れ始め、2号店の閉店の時間がやってきた。本日の売り上げも上々である。


「良かったね、アイラ! 本当にびっくりするくらいの売り上げだよ!」


「うん、まあそうね。マリアベルが明るく接客してくれているおかげよ」


「私は大したことしてないよ! 店長が美人なおかげもあるんじゃないかな!」


「美人て……」


 褒めてくれるのは嬉しいけれど、ちょっと照れ臭かった。


「アウゴさんもありがとうございました」


「いえいえ、とんでもないです。私も勉強させていただいておりますよ。ただし、調合過程を見ても、私ではエリクサーを作ることは出来なさそうですが……」


「は、はあ……」


 やはりそうなのだろうか? 私の調合は一種のスキルのようなモノ……他人が全く同じ過程をしたところで同じ結果にはならない。そんな気がしなくはないけれど。


「アイラのお店は3大秘薬が名物だけど、他の初級から中級くらいのアイテムが売れているのも大きいよね!」


「そうね、そちらの売り上げの方がむしろ重要かもしれないわ」


 初級回復薬から超上級回復薬までのアイテム類や、毒消し薬、風邪薬など……比較的安価なアイテム類が売れることはお店を長く経営していく上で必須なことだ。エリクサーの類いはある程度資金に余裕がある人じゃないと買えないしね。


 エリクサーが2万スレイブ……普通の家庭の2か月分の給料に相当するのだから。これを簡単に複数買える人は上位の冒険者や貴族などに限られると思う。


「でもさ~ここで2号店をオープンしたから、割を食っている薬屋は多そうだね」


「うっ、嫌なことを言うわねマリアベル……」


「だって本当のことじゃん? このお店に人が集まってるってことは、確実に他のお店の客足は減少しているだろうし」


 マリアベルはその言動の割に賢いと思う時が偶にある。流石はクレスケンスと同一人物と言われるだけのことはあるわね。彼女の言う通り、他の薬屋については気になるところだった。それはリンクスタッドで1号店をオープンしている時からに遡るけれど。


 一度、周囲のお店に挨拶に行った方が良いかもしれないわね。そう言えば、忙しくて忘れていたわ。そういう人情も重要になってくるだろうし。ないとは思うけど恨みを買われたりしたら大変だしね。


「繁盛しているようで何よりね」


「えっ……? あ、カミーユさん……!?」


 と、私がそんなことを考えていると、予期せぬ人物が2号店を訪れた。冒険者ランキング4位のチームリーダーであるカミーユ・シェイドだ。まさかこのタイミングで現れるなんて……なんて返せばいいのか悩んでしまう。


「ええと……いらっしゃいませ」


「なによ、随分迷惑そうじゃない?」


「そ、そんなことは……ないですけど……」


 大分慣れたとはいえ、最初のインパクトが強すぎたせいで苦手な部類に入る人物だとは思う。


「ふ~ん、かなりの品揃えみたいね……」


 カミーユはエンゲージ2号店の品揃えをマジマジと見ているようだった。


「あ、ありがとうございます。どうですか? エリクサーや蘇生薬なんかも充実していますよ」


「そうね……エリクサー貰えるかしら?」


「は、はい。ありがとうございます」


 カミーユは意外にも素直に応対をしてくれた。彼女は唯我独尊的なイメージがあったので、なんだか調子が狂ってしまう。いつものように、傍若無人な振る舞いをしてくれた方が私としても助かるのに。こんなに素直に買い物をされては何を話せば良いのか分からない。


 私はこの時、戸惑いを感じていた。


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(ナック・バルバロイ視点)


「よし、行くか……」


 大丈夫だ、案ずることはない。現在は最強の冒険者とされるシグルド・バーゼルは素材調達で不在のはずだ。もう一人のアルファ・ルファはマラーク神官長に呼び出しを受けているはず。この呼び出し自体はオリバとその仲間達が画策したことらしい。あのトップレベルの階級であるマラーク神官長を動かせるとは、何気に凄いことなのかもしれない。


 とにかく今はアイラの周囲に実力者はいないはずだ。まあ、俺の役目は彼女をオリバの指定した場所に連れ出すことだが。アイラ・ステイトもまさか誘拐されるとは思っていないだろう。俺は実力行使で連れ出す必要はないし、まずはフレンドリーに接するとしようか。


 同じ薬屋同士の自然な会話だ……まず大丈夫だ。彼女には少しだけ恐怖を味わってもらうことになるが、これで200万スレイブが手に入るのだ。今の俺の店の経営からすれば何年分の報酬になるか分からない額だ。ふふふ、これで従業員にもまともな給料が支払えるぞ。その為に犠牲になってもらうか。死ぬわけじゃないんだし、大丈夫だろう。




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