246話 修行 1
「ええと……どういうこと?」
「だから~! 私とシグルドさんのパーティにエディ君が加入したって話だよ!」
2号店の経営をしていた私にマリアベルは楽しそうに話していた。正直、内容に関しては意味が分からないけれど……というか、マリアベルとシグルドさんはチームを組んでいたの? シグルドさんは単独冒険者だったはずだけど。
「シグルドさん、本当なんですか?」
「ま、事の成り行き上な……」
シグルドさんは頷いていたけれど、不本意な雰囲気を漂わせていた。これはおそらく、マリアベルが勝手に決めたわね。
「エディ君が加入したというのも驚きですけど、マリアベルとシグルドさんが組んでいる事実の方が驚きですかね」
「お前も勝手な誤解はするな。俺は誰とも組んだ覚えはない」
「やっぱりそうですよね」
最強の冒険者たるシグルド・バーゼル。そんな彼のプライドを易々と乗り越えられる人物なんて居るはずがなかった。
「でもさ~、シグルドさんは確かにエディ君が行動を共にすることをOKしたんだよ?」
「そうなの?」
「うん! それでさ、この間、迷宮回廊っていう近くのダンジョンに行ったんだけどさ。エディに説教ばかり言うんだよ! 私も可哀想になってきちゃった!」
と、マリアベルはシグルドさんに対する文句を言っている。しかし、シグルドさんは気にしている素振りはなかった。
「ふん、何とでも言え。俺はエディに実力がなければ認めないとハッキリと言っているからな」
「え~~、なによそれ~~~! 私だってシグルドさんの隣で働いてるじゃん! あんなに辛く当たることはないと思うんだけどな!」
「……」
マリアベルはシグルドさんのエディ君への対応に、納得がいっていないみたいね。叫び声が周囲にこだまし、お客さんたちも何事かと彼女を見ているわ。
「最低限の強さに到達しない者を、俺は連れて行くつもりはない。冒険者は遊びの仕事ではないからな。命懸けだということはエディも十分に分かっているはずだ」
「む~~~!」
マリアベルはまだ納得していないみたいだけど、私はシグルドさんに賛成だった。冒険者の仕事は1回だけ同行したことがあるけど、あの時も命の危険を感じたしね。シグルドさんは性格的に優しさを表に出す人ではないけれど、これは彼なりのエディ君への気遣いなのかもしれないわね。
マリアベルとの行動をなんだかんだ言いつつも認めているのは、彼女の強さが最低限のレベルを超えているからだと思う。その辺りの考え方は流石にプロね。
エディは現在、シグルドさんに認められることで必死といったところだろうか。素直に凄いと思ってしまう。なんだか元気付けられてしまうわ。修行期間といったところかしら? 私も頑張ってお店を大きくしていかないとね。




