239話 それぞれの想い 3
「俺の率直な気持ちとしてはだな、アイラ」
「はい、カエサルさん……」
焦っている様子を見せていたカエサルさんだけど、その時間は一瞬のものだった。すぐに平静に戻り私の目を真剣に見つめて来る。ええと、逸らすわけにもいかないし……どういう反応をして良いのか悩んでしまうわ。
「エディという少年と付き合うことは、君にとって有意義なものになるかもしれん。見聞を広めるという意味合いでも重要なことだろう」
「は、はい……それは確かに」
「しかしだな……」
カエサルさんの眼差しは鋭さを増していた。なんだか恥ずかしくなってしまうわ。
「俺の率直な意見を言うと、アイラに恋人ができるというのは困るのだ」
「えっ、困るんですか……? カエサルさん」
「ああ、とても困る。非常に困る」
それはどういう意味でだろうか? 続く言葉によっては大変なことになりそうだけど……。
「勘付いているかもしれないが、俺は君のことを単なる薬の仕入先だとは考えていない」
「えっ……それって」
「そういうことだ。俺はもっと君と深い関係になりたいと思っている。もちろん、アイラが迷惑でなければの話だが……」
「……」
それはカエサルさんからの紛れもない告白だった。エディ君に続き、カエサルさんからも告白されてしまうなんて……私のモテ期というやつだろうか? まずい……なんて返せば良いのか分からないわ……。
「アイラが迷惑なら、今この場で言って欲しい。君に心労を与えるつもりはないからな」
「いえ、そんな……迷惑だなんてことは……」
カエサルさんから想われて迷惑だなんてことは決してない。それどころか好きだと言われて嬉しいまであるかもしれない。しかし、この時の私はとても困惑していた。
「カエサル殿、今の言葉は……本当にアイラを愛している、と受け取って良いのかな?」
「もちろんですよ、クリフト王子殿下」
「……そうか」
「何か不都合がありますかね? 王子殿下?」
「……カエサル殿、言ってくれるな……」
「もちろんですよ。もう、アイラに自分の胸の内を明かしてしまいました。今後は何も恐れることはありません。これ以上恥ずかしくなる場面はないわけですからね」
何やら、クリフト様とカエサルさんの間で険悪なムードが作られているような気がした。クリフト様を挑発するカエサルさんと、眉間にしわを寄せているクリフト様といった構図だ。
「うわ~~、これは中々面白いことになりそうやな。カエサルさんがまさか告白するとは……」
「確かに面白いな、姉貴。よしよし、それじゃあ俺も告白でもしてみようかね」
「ローランド、これ以上はややこしくなり過ぎるから、その気がないんなら止めとき」
「はいはい、わかったよ姉貴」
キース姉弟は蚊帳の外から楽しんでいる様子だ。ローランドも私に告白しようとしてたみたいだけど、これは冗談だとすぐに分かる。
「それで? クリフト殿下はどうなさるつもりなんですか?」
「それは……」
「アイラはエディという人物から告白を受けています。それから俺からも……クリフト殿下、この状況を祝福してもらえますかね?」
カエサルさんとクリフト様……二人を覆う雰囲気はさらに濃くなっていた。クリフト様がなんて返すのか、とても興味深いわ。




