235話 相談 3
(エディ・スミス視点)
「今日はアイラさんいないみたいだな……用事でもあるのかな?」
その日はアイラさんではなく、マリアベルという少女が店頭に立っていた。それからアウゴ様や護衛の人の姿もあるけど。あの人はシグルドさんかな? 僕がアイラさんに告白してから数日……エンゲージの2号店は相変わらずの人気みたいだった。
アイラさんはいないみたいだけど、せっかくだからアイテムでも買って行こうかな?
「あ、すみません。アイテムを買いたいんですけど……」
「は~~い、いらっしゃいませ~~!」
マリアベルという少女は元気に対応してくれている。僕と同じ歳くらいに見えるけど、噂ではクレスケンス様本人だとかなんとか。そういえば、氷漬けの彼女と似ている気がするし。いや、でもまさかね。
「何をお求めですか~~?」
「ええと、毒消し薬と中級回復薬と初級回復薬、それからダークポーションをください」
「は~い、ありがとうございます~~~!」
マリアベルは手慣れた手つきでそれぞれのアイテムを袋の中に詰めて行った。それにしてもこのお店は露店とは思えないくらいの品揃えになっている。王都ヴァレイには他にもアイテム屋はあるけど、ハッキリ言ってこの店の売り上げには太刀打ち出来ていないだろう。
エリクサーや蘇生薬、万能薬という3大秘薬まで売っているんだから、まさに圧倒的だろう。
「あの、アイラさんは今日は……?」
「アイラですか? アイラならホーミング王国の首都リンクスタッドに戻ってますよ。アルファ・ルファさんと一緒に」
「そうだったんですか? アルファさんと戻っているのか……」
アルファさんはおそらく、彼女の護衛役を務めているのだろう。そうか、これだと現在の2号店に僕の知り合いはいないわけだ。シグルドさんとは同じ冒険者だけど面識はないし……。
「アイラさん、アイラさんね……」
「? どうかしましたか?」
そんな時、マリアベルがアイラさんの名前を連呼しているのに気付いた。
「もしかして、君がエディ君? そうだよね?」
「えっ、そうですけど……どうして分かったんですか?」
「だってアイラのことを、さん付けで呼ぶ人なんて他にいないじゃん。様付けとかなら分かるけどさ」
「あ、なるほど……そういうことでしたか」
呼び方でバレてしまったか。マリアベルという子は中々鋭いのかもしれない。確か風の噂ではアイラさんに並ぶ錬金術士であり、シグルドさんの腕をへし折ったとか聞いているけど。流石に誇張されているかとは思うけどな。
「そっかそっか……君がアイラに告白した張本人なんだ。ふ~~ん」
「そうですけど……エディ・スミスって言います」
「私はマリアベル・ウォーカーだよ! よろしくね!」
「は、はい……よろしくお願いします」
とてもクレスケンス様本人には見えない雰囲気だ。でもこの元気な性格は嫌いじゃないかもしれない。落ち込んでても元気を分けて貰えそうだしな。
「エディ君、アイラは現在クリフト王子殿下に会いに行ってるんだよ? なかなか厳しいライバルがいるから恋が成就するかは分からないけど、しっかりと頑張ってね」
「クリフト・ホーミング王子殿下……なるほど、分かりました。頑張ります……」
前にアイラさんと話しているところを見かけたことがある。クリフト王子殿下がアイラさんのことを好きならかなりのライバルだ。でも、負けるわけにはいかない。僕だってアイラさんのことが大好きなんだから。
「何かあったら、いつでも相談に乗るからね! エディ君!」
「あ、はい。ありがとうございます……マリアベルさん」
「マリアベルでいいよ! 私は16歳でエディ君とほぼ変わらないんだし」
「わ、わかったよマリアベル。じゃあ、また機会があればよろしく」
「うん! またね~~~!」
こうして僕は買い物をして2号店から離れた。マリアベルと知り合いになったけど、これはこれで良かったのかな?
それよりもクリフト殿下のことが心配だ……アイラさんとどういう話をしているのか。
「マリアベルに相談とは、中々酔狂な奴もいたものだな」
「なによ~~シグルドさん! 失礼ね~~~!」
お店の方からはそんな会話が聞こえて来たけど、僕は敢えて振り向かずにそのまま去って行った。




