230話 突然の少年
「ええと、上級回復薬でよろしいですか? 2000スレイブになりますが」
「は、はい! では、2000スレイブで!」
「ありがとうございます」
「い、いえ……!」
私は2000スレイブを受け取り、少年に上級回復薬を渡した。ホーミング王国の1号店と比べて、上級回復薬の価格も2倍にしている。それでも大繁盛しているのだから、嬉しい限りだ。
商品を渡す時に少年と目が合った。彼はすぐに明後日の方向を見たけれど。先ほどから行動が怪しいような気がする。この少年は一体何者だろうか?
「え、えっと……エリクサーなんかも売っているんですよね? アイラさんは……」
「はい、そうなりますね。よろしければ購入してくださいね」
「いえ、今の僕の稼ぎでは難しいですが……もっと稼いで必ず買えるようにします」
「ありがとうございます。冒険者をされているんですか?」
私は少年に何気なく聞いてみた。
「はい、冒険者をやっています。新米なのでまだまだこれからですが……」
「そうなんですか。頑張ってくださいね」
「はい! ありがとうございます! アイラさん!」
少年はいつの間にか元気になっていた。先ほどまでの暗い感じが嘘のようだわ。明るい笑顔を見ていると少年が思いの外二枚目だったことに気付いた。私より2~3個くらい歳下なのかな? なんだかそんな感じがするわ。
名前も知らない少年はその後、私に頭を下げて走り去って行った。本当に何者なんだろうか? 悪い印象はなかったけれど。
「一体なんなんですかね、あの少年」
「なんだって……気付いていないのか?」
「そ、そうですね。どういう意味ですか?」
「いや、なんでもないよ。こういうことは自分で気付くことが重要だからな」
「???」
ますます意味が分からなくなってしまった。アルファさんはどうやら詳細を教えてくれるつもりはないようだ。
「アルファさん、意地悪ですね……」
「ははは、こちらの方が面白いじゃないか。そう言えばアイラは17歳なんだったな?」
「そうですけど……」
「なら、そろそろ経験しておくのも良いかもしれないな。まあ、頑張るんだ」
「はあ……」
「ふむ……アイラ様、私も応援しております」
アウゴさんまで意味深な言葉を発していた。この二人は確実に気付いている。なんだか私だけが取り残されたような気分だわ。で、結局、あの少年の正体はなんなの?
不思議な少年……あの子は私のことをアイラ「さん」と呼んでいた。この国のほとんどの人が「様」と呼ぶのに。
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「アイラさん、こんにちは!」
「あれ、今日も来たんだエディ君」
「はい、アイテムを買いに来ました」
エディ・スミス君。年齢は15歳で私よりも歳下だ。新米冒険者でシグルドさんと同じく単独でダンジョン攻略に精を出しているらしい。王都ヴァレイの冒険者ギルドでアルファさんも何度か会ったことがあるみたいだった。
あの日から頻繁にエディ君は私の店を訪れている。その関係から、お互いの自己紹介は済ませた間柄になっていた。
「今日は中級回復薬3個と氷結瓶を貰えますか?」
「畏まりました、毎度ありがとうございます。いつも買ってくれてありがとう」
「いえ、とんでもないです」
エディ君は最初の印象とは違ってとても明るい子だった。話していて気が合うかもしれない。私もどちらかと言うと明るいからね。
「あ、あの……アイラさん」
「どうしたの、エディ君?」
いつもならアイテムを購入した後は帰って行くのに、今日はその場に立ったままだった。真剣な眼差しをしているし……どうしたのかしら?
「あの……良かったら今日のお昼一緒に食べませんか?」
「えっ、わ、私と……お昼!?」
「は、はい……」
エディ君はそこまで言うと、元気さがなくなり俯き始めた。恥ずかしくなったようね。こ、これってまさか……デートの誘い? いやでも、ただお昼に誘われただけだからそんなわけないか。以前にもカエサルさんに誘われたことがあるしね。もちろんクリフト様にも。
「だ、駄目でしょうか……?」
「別に構わないけど、私と一緒で良いの?」
「はい! 是非よろしくお願いします!」
エディ君はとてもキラキラとした目になっていた。少し照れくさいけれどここまで喜んでくれるなら嬉しいかな。私はエディ君とお昼を共にすることにした。




