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226話 ドラゴン 2


 私達がダークドラゴンの近くまで来た時、兵士の何名かがドラゴンに対して戦闘行為を行っていた。槍を投げたり砲撃をしたりと遠距離攻撃が中心だけれど……。


「グルルルルル……」


「くそう! 全く効いている様子がないぞ!? 俺達じゃ何も出来ない!」


「住民達の避難が完了するまでここに足止めしておくだけでいい! ダークドラゴンの注意を王都ではなく、私達に引きつけろ!」


 兵士達は必死で攻撃を行っているけれど、先ほどからダークドラゴンがダメージを負っている様子はない。そのためか隊長と思しき人は注意を向けられるだけで成功としているようだ。表面の鱗が固すぎるというよりはそこにすら届いていないように思えるけど……。


「ドラゴンは全身を強力な魔力で覆っている。魔力による障壁、とでも言えばいいのか」


「魔力の障壁すら貫通できないなら全然ダメじゃん。本当にドラゴンは傷1つ負ってないよ」


 シグルドさんの言葉に合わせるようにマリアベルも専門的なことを述べていた。えっ、シグルドさんはともかくマリアベルにも分かることなの?


「兵士の者達は下がって貰おうか。守り切れる保証もないしな」


「な、なんだと……!?」


「いや、でも彼は……」


 シグルドさんの偉そうな発言に反発する兵士とそうでない兵士がいた。反発しない兵士はシグルドさんの顔を知っているのだろう。それにしてももう少しマシな言い方は出来ないのかしら? 流石は我が道を誰にも遠慮することなく進んでいるシグルドさんだわ。私に対しても遠慮がないし、クリフト様にも遠慮がないように見えるしね。


「済まない、シグルド殿の言葉による非礼は詫びよう」


 ここでクリフト様が割って入った。味方同士で険悪なムードにならないように気を遣っているのかもしれない。クリフト様も大変ね……。


「これはクリフト・ホーミング王子殿下……!」


「えっ? クリフト・ホーミング王子って、あの隣国の第一王子殿下ですか!?」


「そういうことだ!」


 兵士達の隊長は当然のようにクリフト様のことを知っているようだった。流石というか、最初から態度が違って見える。


「私はクリフト・ホーミングで間違いない。ここには来れていないが、マラーク殿から話を受けている者だ。こちらにいるのはかの冒険者であるシグルド・バーゼル殿。可能であればダークドラゴンの対応を彼に任せてはもらえないだろうか?」


「あの最強冒険者と名高いシグルド・バーゼル!?」


「ああ、そういうことだ」


「それならば私達の出る幕はありません! マラーク様から許可も得ているようですし……皆の者、すぐに撤退するぞ!」


「はっ! 畏まりました!」


 やや違和感を感じていた兵士もいたようだけれど、上官の命令は絶対なのか隊長の言うことを聞いてすぐに全員撤収していた。ロンバルディア神聖国の兵士はかなり教育されているみたいね。ホーミング王国ではこうはならなかったかもしれない。


「ようやく邪魔者はいなくなったか……アイラとクリフト殿下は俺の後ろから離れるなよ? 何かあっても守れないからな」


「分かった、シグルド殿」


「分かりました、シグルドさん」


 私達はシグルドさんの言い付け通り、彼の後ろに待機した。マリアベルを除いて……。


「ダークドラゴンを見れるなんてラッキーだよね! ワクワクするな~~~!」


「その様子を見ると、お前はドラゴンに遭ったことがあるのか?」


「ダークドラゴンに関しては空を飛び回っていたのを見たことがあるくらいだけどね」


「ほう、それは頼もしいな。もしかすると、あのダークドラゴンは1000年以上生きている可能性もあるのか」


「そうなんじゃない? 竜族は数千年以上生きるのが当たり前だし。私が見たダークドラゴンと目の前のドラゴンは同じかもしれないよ?」


 なかなか核心に迫った話をしている気がする……マリアベルが1000年前のクレスケンスだとする重要な話のような。彼女の言葉にはシグルドさんも驚いているようだった。


「1000年を超えて同じドラゴンに遭遇する、か。相当に規模が大きいな」


「えへへ、そうかもしれないね」


 まあ、マリアベルがクレスケンス本人だという前提の話だけれど。私は凄い場面に出くわしているような気がしてならなかった。


「グルル……」


「あれ?」


 そんな時、先ほどまではほとんど動いていなかったダークドラゴンに大きな動きがあった。と言っても首を地面に付けただけなんだけれど。なんだか他の動物に見られる服従のポーズのような? そんな気がしてしまうわね。


「えへへ、いい子いい子」


「グルルルルル」


「……」


 気付いた時にはマリアベルはシグルドさんの前に出ており、あろうことかダークドラゴンの頬を撫でていた。ちょっと信じられない光景なんだけど……。


「おい、このドラゴンはお前のペットなのか?」


「そんなことないよ? 私は空を飛んでいたダークドラゴンしか知らないし。でも、そんなに警戒する必要はないんじゃないかな~~~?」


「グルル……」


 ペットでもないのに危険極まりないドラゴンの頬を撫でられる存在、それがマリアベルだ。いくら人間を襲っていないからって言ってもダークドラゴンの頬を撫でられるのは尋常じゃない。


 マリアベルは自由人だと思っていたけれど、まさかここまでとは思わなかった。周囲からはダークドラゴンを手なずけているようにしか見えない。この光景はかなり異常だわ。


 マリアベルは本当に不思議な人ね……。


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