225話 ドラゴン 1
「伝説のドラゴンが現れただと……!? なぜ、門番の兵から連絡がないのだ!?」
「もしかすると、門番の一部が壊滅的被害を受けているとか……」
「そ、そんなことが……いや、あり得るかもしれませんね!」
私はマラークさんと共にドラゴンが現れているという、王都ヴァレイの西の入り口に向かっていた。クリフト様にシグルドさん、マリアベルも付いて来ている。アルファさんやオディーリア様やモーレス大公、アウゴさんは2号店に残ってもらっている。
私やクリフト様が向かうのは正直危険だったのだけれど、シグルドさんが一緒だしなんとかなるのかな? マリアベルもいるしね。
「ドラゴンに遭えるんだ! 楽しみ~~~!」
周りの焦り具合と比較してマリアベルだけは、無邪気だったのが気になったけど。1000年前だってドラゴンは凶悪な魔獣だったと思うんだけどな……。
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私達が西の入り口を超えた時、明らかに周囲の雰囲気が違っていた。門番が住民の人達を先導して王都ヴァレイの中へと入れていたから。
「落ち着いて行動してください! この西の門の近くにてドラゴンが出現しております! 王都ヴァレイの中へと避難してください!」
瘴気事件の時の災害警報みたいな様子だった。もっともあの時は門番の方々も毒に侵されたわけだから、こんなに騒いだりは出来なかったと思うけど。
「黒い竜……ダークドラゴンか? 何たる禍々しさだ……!」
「まだ離れてはいるが、遠近感がおかしくなるな……」
マラークさんとクリフト様は遠くに見えるダークドラゴンに畏怖の念を持っているようだった。私だって怖い……絶対に近づきたくないとさえ思えている。あの存在は間違いなくグリフォンを超えていると確信できたから。
「うわ~~! うわ~~~! ドラゴンだ、格好良い~~~!」
「ちょっとマリアベル! 不謹慎よ」
門や壁、周辺の大地が破壊されている様子はないけれど、ダークドラゴンが目の前に居るのだ。きっと応戦している兵士の中には犠牲者が多く出ているはず……。それを考えると私はとても笑っていられなかった。
「被害状況はどうなんだ? 民間人や兵士への被害は?」
「はい、マラーク様! 現状、我々に人的被害は出ておりません! ダークドラゴンが動くことによる周辺の破壊はあるようですが。しかし、こちらからの攻撃も全く通用しません!」
「そうか大変だな……ん? 人的被害がない……?」
マラークさんは門番からの被害状況を聞いている。あごに手を当てて辛辣な表情をしていたけど……思わず二度見していた。被害状況がない、というのはどういうことだろうか? え?
そんなことってあり得るの?
「どういう意味だ? 伝説のドラゴンがこんな場所に現れているのだぞ!? 人的被害が生まれていないことなどあるはずが……」
実際にこちらからは応戦しているんだから、絶対に反撃してくるはず。ドラゴンの方にいくらダメージがないからって、人間からの攻撃をただ耐えてくれるだけのドラゴンなんて存在するとは思えないし。
「とにかく俺達も行ってみるぞ。近くまで行けば何か分かるかもしれん」
「そ、そうですね! シグルドさん」
「やった、やった! すぐに行こう!」
マラークさんは兵士との話があったので、その場で待機という形になった。本来ならクリフト様もその場での待機が普通なんだけど……。
「アイラが向かうならボディガードとして、私も行かせてもらう。まあ、私のガードは大したものじゃないがな」
「く、クリフト様……? 大丈夫でしょうか? 第一王子殿下がドラゴンの前に行くなんて、前代未聞だと思いますが……」
一応、彼の護衛役が二人付いてはいるけれど……それにしても前代未聞の出来事だろう。
「今の状況で私だけここに残るのは得策とは言えない。ドラゴンはどうやら攻撃を行っていないようだし、その状況を見る義務がある。ホーミング王国にも現れるかもしれないからな」
「それは確かにそうですね……」
「どうでもいいが、付いて来るなら早くしてくれ。俺より前には決して出るなよ?」
「ああ、かたじけない。シグルド殿」
私はまだ足がすくんでいるけれど、クリフト様は恐怖を感じていないようだ。以前のグリフォン掃討作戦でさらに精神が鍛えられたのかしら? 凄いわね……。
私達はその後、ダークドラゴンの近くまで移動することになった。




