214話 腕相撲 2
「アイラ様の店の前で腕相撲大会……? 面白そうね」
「いやはや、しかもあのお方は……」
周囲のギャラリーの中には、オディーリア様の存在に気付いた人達もいるようだ。マリアベルは変装しているから気付かれていないけど。
「へへ、注目されているね」
「そうじゃな、このギャラリーの前で負けると恥をかくことになるが、覚悟は良いかの?」
「言ってくれるじゃない! 負けないんだから~~!」
オディーリア様とマリアベルは既に右手を組んでいる。合図があればすぐにでも腕相撲は開始されるだろう。
「アイラよ、合図を貰ってもよいじゃろうか?」
「わ、わかりました。それではいきますね。始めっ!」
シグルドさんやアルファさんや五芒星の人達が見守る中、二人の腕相撲は開始された。お互いの右手に力が入っていくが、私にも感じられた。
「あれ? オディーリア様、流石に自分で強いと言うだけあって強いね!」
「お主の方こそな。流石というべきか……」
お互い互角くらいなのか、最初の開始位置から動いていない。腕相撲が始まっているのは事実なのに動いていないところを見ると……。
「二人の実力は同じくらいなんですかね」
私はなんとなくシグルドさんに話しかけていた。シグルドさんは何も言わなかった。どうやら腕相撲を注視しているようだけれど。
「流石というところか……」
「オディーリア・カッサバルト様……流石に国一番の実力者と謳われるだけはありそうだな」
「そうだな、アルファ」
シグルドさんとアルファさんは真剣に話し合っている。なんだか割り込みにくい雰囲気だわ。
「えへへへっ」
「……! ぬう……!」
「……?」
腕相撲をしている二人だけれど、ここへ来てオディーリア様が焦っているような?
「動かぬ……お主、わざと止めておるな?」
「オディーリア様の力を測っていたんだよ。その言葉が出るってことは今が全力ってことだね」
「オディーリアの実力は十分だっただろうが、マリアベルはそれを大きく超えるパワーを持っていたようだな」
シグルドさんから、そんな言葉が聞こえて来た。彼はマリアベルが手を抜いていたことを見逃さなかったようだ。逆にオディーリア様が本気だったことも。次の瞬間、マリアベルが右手を倒し勝利となった。マリアベルはその気になればいつでも勝てたということか。
「えへへ、私の勝ちだね! オディーリア様!」
「う~む、そのようじゃな。国一番の実力者……この程度の肩書きでは、まったく勝負にならなかったようじゃ」
たかが遊びの腕相撲ではあるけれど、私にとってはオディーリア様が敗れたことが信じられなかった。マリアベルはまだまだ余力を残しているようだし……本当に彼女は凄いのね。
「おお~~! なんだかすごい勝負だったわね!」
「見ていて迫力があったわ! あなたもチャレンジしてみなさいよ」
「止めてくれよ……俺なんかじゃ全然勝てないって」
周囲のギャラリーも先ほどの腕相撲を楽しんでいるようだった。その騒ぎがさらに多くのお客さんを呼んでいる。
「それでそれで? 次は誰が勝負してくれるのかな?」
挑発的なマリアベルの言葉……その視点は私達に向けられていた。
「シグルド、どうするんだ?」
「俺が行こう」
「シグルドさん……?」
オディーリア様が負け、代わりに前に出て来たのはシグルドさんだ。まさかのアルファさんを飛ばしての登場だった。アルファさんでも厳しいとの判断だろうか? それとも自分が戦いたいだけ?
……後者の可能性が高いわね。
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