212話 準備 2
「オディーリア様、それでは手を抜くってことですか?」
「手を抜くのとは少し違うがの。ただし、エリクサー等を作れることを言う必要はないじゃろうて。幸い、向こう側はお主らを上級回復薬程度しか作れないと思っているようじゃしな」
モーレス大公殿下は確かにそうだけど……マリアベルは不満そうにオディーリア様を見ているわね。
「手を抜くなんてヤダよ! 全力で倒したい!」
「別に直接戦闘をするわけじゃないじゃろう? 錬金術なのじゃから相手の得意分野で勝負をするくらいのハンデを与えても良いのではないか?」
「え~~~? 手加減するの~~~?」
マリアベルは不満そうにしていたけれど、オディーリア様に逆らう様子は特に見せていなかった。この辺りは素直と言うか、相手を見て遠慮したりしているのかしらね。錬金術の実力では確実にマリアベルの方が上だろうけど、オディーリア様は経験的に逆らいにくい雰囲気があるし。
「相手にハンデ与えたとしても、勝負は見えている気がしてしまうがな」
「確かにそうだな、シグルド。アイラとマリアベルには誰も勝てない気がしてしまうよ」
シグルドさんとアルファさんも私達の実力を信じてくれているようだった。二人からのお墨付きを貰えたら、自信になってしまうわね。
「なんだか久しぶりの錬金勝負だし、楽しみね私も」
以前の錬金勝負っていつだっけ? キース姉弟との勝負とかシスマとの暇な時間を見つけての錬金勝負が最新になるかしらね。どちらにしても結構前の話だし。
「えへへへへ、楽しみだね!」
「そうね」
ん? 陽気なマリアベルだったけど近くにあった台座を用意し始めた。何を始める気なんだろう?
「ほらほら、アイラ。腕相撲しよ、腕相撲!」
「えっ? 腕相撲……?」
意味が分からないわ、さっきまで錬金勝負の話をしていたのに。急に腕相撲の話になるなんて……。
「なんだかハイテンションになっちゃったしさ。集客にも繋がるかもしれないよ?」
「いやまあ……それは確かに」
私達の様子を窺っている人達は多いわね。腕相撲大会が行われたら、確かに集客に繋がるかもしれない。マリアベルって結構、商売上手かもしれないわね。見習うべきかもしれない。歳下だけれど……あはは。
「いや、でも……私は絶対に勝てないし」
「え~~~?」
マリアベルは噂ではメチャクチャ強いみたいだし、明らかに勝負を挑む相手を間違えている気がする。そんな時、オディーリア様が前に出て来た。
「ふむ、ではわらわが最初の相手になってみようかの」
「オディーリア様……?」
シグルドさんやアルファさんではなく、一番最初に名乗りをあげたのは意外にもオディーリア様だった。確かにオディーリア様は武芸にも精通しているとは聞いていたけれど……大丈夫なのかしら?




