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210話 邪魔者


「相変わらず、露店商とは……店の品質が疑われるレベルだな」


「は、はあ……」


 モーレス大公殿下は店の前に来るなり、品物を物色し始めた。私の店の品揃えを小馬鹿にしに来たんでしょうね……デジャブというか、ユリウス殿下を思い出すからすぐに分かるわ。


 どこの国にもこういう人って存在するのかしら?


「……」


「……」


 シグルドさん達は顔色を一切変えず、いきなり現れたモーレス大公殿下にも挨拶をすることは特になかった。多分、挨拶をする必要性がないと思っているのだと思う。


「何かご用ですか? 買い物に来ていただいたんでしょうか?」


「前にも言っただろう。上級回復薬程度の品揃え、他の店で代用が可能だからな」


 モーレス大公殿下の主張は以前と変わっていない。私を馬鹿にしに来たのは間違いないようね。シグルドさんやアルファさんが護衛としているから、直接的な嫌がらせをするとは考えられないけど。


 言葉で小突くのを楽しんでいる感じかしら。


「なによ、おじさんは! アイラを馬鹿にして! アイラはすっごい錬金術士なんだから!」


「なんだ、この娘は……顔が隠れているが相当にガキだな?」


「む~~~! ガキじゃないもん、マリアベルだもん!」


 マリアベルは16歳という年齢から見てもやや子供っぽいけれど、そこがまた可愛いかな。まあ、それは良いとして……モーレス大公殿下もマリアベルの強気な発言に本気になっているようだ。


「マリアベルと言ったか……ふむ、聞かぬなだが。それならば、錬金勝負でもしてみるか?」


「錬金勝負……いや、それは……」


「なんだ、アイラ・ステイトよ。私の配下の錬金術士と勝負するのがそんなに怖いのかな? まあ、気持ちは分からなくはないがな」


「……」


 モーレス大公殿下は自信満々に言っていた。上級回復薬レベルは作れる錬金術士みたいだけど……流石にこの勝負は……怖がっているというより、モーレス大公殿下のことを思って言っているのであって。


「まあ、クレスケンス様の代わりをほざいている癖に、錬金勝負すらまともに受けないのであれば、こんなところで露店を営む資格はないと言えるがな」


「いえ、別に構いませんけど……モーレス大公殿下さえ良ければ、勝負しますよ?」


「ほほう、言うじゃないか。ならば後日、この場所で錬金勝負をするとしようか。ギャラリーも大勢集まるだろう。そのギャラリーの前でその鼻っ柱をへし折ってくれるわ。ふははははははっ!」


 モーレス大公殿下は大笑いしながら言った。そして、そのまま護衛達と一緒に去って行く。やれやれ、ようやく帰ってくれたわね。


「ふっ、面白い状況になったじゃないか」


「いえ、シグルドさん……面白くはないですよ」


「モーレス大公殿下が可哀想になってくるな」


「ふ~む、確かにの」


「絶対に勝つもん! コテンパンにしてやるもん!」


 シグルドさんやアルファさん、オディーリア様もモーレス大公殿下のことを可哀想に見ているようだった。それはそうよね……マリアベルもやる気になっているし。自信過剰になるのは良くないけれど、モーレス大公殿下に従わされる錬金術士が可哀想になってくるわ。



 

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