209話 オディーリアとマリアベル 3
「……というわけで、あなたは1000年前から飛んできた可能性があるのよ」
「う~ん、イマイチ意味が分からないけど……そうなのかな」
私はマリアベルにこれまでの経緯を改めて説明していた。ここに来る前はリュハイン王国に居たのだとしたら、あのクレスケンスの光を通ってワープして来たと見るのが妥当だと思うし。
「まあ、世の中には魔法っていう超自然現象だってあるんだし、魔物だって居るんだから、あなたみたいに過去からワープしてくる人が居ても不思議じゃないのかもね」
そもそもこの世界の成り立ちは分かっていないのだし。神々が創造したというのが濃厚みたいだけれど。ただ、そんなのはリュハイン王国が栄えていた時代よりもはるかに昔の話だ。文献とかも残っているレベルじゃない。
「それなら、私は誰なの? クレスケンスなんて人、知らないけど……」
「それについては……ええと、オディーリア様なら分かりますか?」
「ふむ、そうじゃな」
オディーリア様に質問してみるけれど、要領を得ないようだった。答えは分かっているみたいだけど。
「まあ、普通に考えれば答えは1つしかないがな」
「シグルドさんは分かるんですか?」
「ああ、おそらくマリアベルはクレスケンスの本名だろう?」
「あ、そういうことか……」
なんで今までその考えに至らなかったんだろうか。クレスケンスと言う名前が本名だと思っていたからかな? シグルドさんはオディーリア様の方向を見ていた。回答を求めているような……。
「どうなんだ?」
「ふむ、おそらくはそれで間違いないじゃろうな。クレスケンスというのは英雄名であり、本名というわけではないからの。当時の彼女の功績を讃えて与えられた称号とでも言うべきか」
オディーリア様が異様に詳しいのは気になるけれど、これでマリアベルの正体にまた1つ近づいた気がするわ。クレスケンスから放たれた光の謎も分かった気がするし。
「う~~ん、よくわかんないな。私は国一番の錬金術士だったけど、そんな称号与えられてなかったけど……」
マリアベルはここに来ても能天気だった。自分の正体についての疑問は晴れないようだ。でも、おそらくは彼女が若い頃のクレスケンス本人であることは間違いなさそうね。エリクサーや蘇生薬を作れる時点で実力の方も確かなんだし。
「おやおや、何やら楽し気な会話をしているようじゃないか。随分と暇なのかな?」
「えっ? あなたは……」
そんな時、見下すような言葉が耳に入って来た。振り返るとアングラ・モーレス大公殿下が立っている。複数の護衛と共に……うわぁ、会いたくない人が来たものだわ……。




