197話 クレスケンス 3
マリアベル・ウォーカー……良く分からない少女がサンスクワット大聖堂の錬金施設に現れたのだ。光に導かれるように私とクリフト様が入ったのだけれど、彼女は眠そうにしていた。
「ええと……この場所がどこか分かる?」
「え……? あんまり分からないけど……眠い」
「サンスクワット大聖堂とか、ロンバルディア神聖国という名前を知らないのは確かなのよね?」
「さっきから言ってるじゃない……ふあ~~~あ……」
マリアベルは何とも緊張感のない態度を見せていた。私としてもどういう反応をして良いのか分からない……。
「クリフト様……どうしましょうか?」
「眠いと言っているのだから、宿屋に連れて行くのがセオリーな気はするが……彼女の存在がどういうモノか分からないのが難しいところだな」
「そうなんですよね……」
マリアベルの正体が分からない。それだけなら、マラークさん達に協力をお願いして彼女の素性を調べて貰うとかは出来るんだけど……マリアベルには1つ大きな問題があった。
「氷漬けのクレスケンスはそのままだったと思いますけど……ええと……」
「ああ……彼女の姿がクレスケンスにそっくりなのは、確かにマズイかもしれないな」
「だからクレスケンスって誰よ~~~?」
マリアベルは不満気に頬を膨らませていた。子供っぽいけれど、なんだか可愛い……ズルいわ。
「まあ、このまま表に出ると大騒ぎになるのは間違いないな……」
クリフト様の言っていることは尤もだった。マリアベルの外見はクレスケンスそのものだし……最近は王都ヴァレイは私の方を重宝しているらしいけど、それでも彼女が表に出ると周囲の人がどういう態度を示すかは火を見るより明らかだった。
マリアベルはクレスケンスだと思ったけど、やっぱり違うのかな? 氷漬けのクレスケンスの封印が単純に解かれたとすれば、今頃は大変な騒ぎになっているはずだし……。
「ていうかさ……ここって、錬金施設よね?」
「えっ、まあそうだけれど……」
「そっか~~~! こんな場所で寝るのは厳しいし、ちょっとだけ調合でもしようかな~~~!」
「ええっ!?」
マリアベルは現状を理解していないにも関わらず、どこまでも自由だった。全く焦りを感じさせないのは、素直に尊敬したいところだ。でも、この由緒正しき錬金施設で調合をするの?
しかし、クレスケンスと何らかの関係があるとしか思えない彼女の調合は興味があった。私は神官に報告することはなく、マリアベルの言動に注視することにした。内心では「ごめんなさい」と言いながら……。




