195話 クレスケンス 1
「やっぱり、たくさんの人が訪れてますね……」
「そうだな、やはり素晴らしいと言うべきか」
私はクリフト様と一緒にサンスクワット大聖堂にやって来た。お店は一時的にお休み、アルファさんが居てくれるから安心だ。強盗に入られることもないだろう。シグルドさんは瘴気発生場所に行っているし、護衛は居ないけれど。
まあ正確にはクリフト様とその護衛の人々が居るわね。それから、グリフォン戦でも活躍した防御石も持っている。まあ、街中だし、余程のことがない限りはこれで安全だろうと思う。
瘴気事件があったばかりなので、多少、人は減っているかもしれないけれど……それでも氷漬けのクレスケンスに祈りを捧げている人は多かった。
「あ、アイラ様がいらっしゃった!」
「おお、アイラ様……! 私達を助けてくれてありがとうございました!」
「アイラ様!」
「い、いえ……私はその……はい、ありがとう」
私が行ったことは本当に一部だけなんだけどね……でも、ここに居る人達は主に、私に感謝の言葉をくれる。マラークさんやシグルドさんの活躍も知ってはいるんだろうけど、信仰の対象ではないからかな? 私は苦笑いをしつつ適当にやり過ごし、クレスケンスが祀られている所まで来た。
「こうして間近で見ると……本当にただの少女に見えてしまうな」
「そうですね、多分、私と同じ歳くらいだと思います」
オディーリア様みたいに若く見えるだけかもしれないけれど……それでもクレスケンスの肌は綺麗だった。氷漬けということは歳も取っていないんでしょうね。
「アイラ、ここに来た理由はなんなんだ?」
「クレスケンスが教えてくれたんです、超万能薬のことを。作り方はオディーリア様から知りましたが、もしかしたら最初に瘴気事件解決に動きだしたのは彼女なんじゃないかと思って」
「ああ、なるほど……頭の中に入って来たと聞いているが」
「そうですね……信じて貰えないかもしれないですけど」
でも、あれは間違いなくクレスケンスが話し掛けて来ていた。私はそれまでは、超万能薬なんて全く知らなかったんだから。アルファさんだって、私が突然その名前を出したことを聞いているのだ。
私はやはり彼女にお礼を言わないといけない。直接言うことは出来ないので、お祈りという形で感謝の意を示した。
「では、私も……」
「クリフト様……ありがとうございます」
「いやいや、これくらいどうってことないさ」
私だけでなく、クリフト様やお付きの護衛も祈りを捧げてくれていた。クレスケンスには少しは伝わっているのかな? 氷漬けから微動だにしないから分からないけど……と、思っていると不思議なことが起きた。
「あれ……? 光……?」
「ん? どうかしたのか、アイラ?」
「え……いえ……」
クリフト様や護衛、周囲の人々には見えていない? でも、確かにクレスケンスから光が放たれていた。そして、その光は移動を開始し、壁の中へと消えた。あの方向は……。
「サンスクワット大聖堂の錬金施設の方向です!」
「お、おい! アイラ! 一体、どうしたと言うんだ……!?」
私はクリフト様の声を聞かずして走り出していた。自分の意志とは無関係にその光を追っていたのだ……。




