194話 ロンバルディアの貴族 2
「まったく……この国はクレスケンス様の御力で支えられているというのに、意味不明な小娘がやって来たものだから、国民が混乱しているではないか。迷惑な話だ」
モーレス大公の愚痴はその後もしばらく続いていた。私が王都ヴァレイにやって来たことを疎ましいと思っているようだけれど。私はマラークさんに呼ばれたから来たということを忘れないで欲しい。
「アングラ様……そろそろお時間になります」
「むっ、もうそんな時間か……仕方ない。今日はここまでで帰るとするが、お前も早くクレスケンス様の御力に平服し、大人しくすることだな」
そこまで言うとモーレス大公は護衛の人達と一緒に去って行った。なんだか、滅茶苦茶失礼な人のような気がする……。
「アルファさん……あの人ってなんなんですかね?」
「あまり気にしない方が良い。この国は氷漬けのクレスケンスを信奉するテルミス教が中心の国家だ」
「ええ……それは聞いていますけど」
「しかし、派閥というのはどうしても生まれてしまう。氷漬けのクレスケンスではなく、今を生きているアイラを信奉しようとする者。今はこの派閥が圧倒的に多いかな? それとは別にクレスケンスを信仰の対象にしている者。それから……アングラ殿のように、クレスケンスを神格化している過激派だ」
なるほど……クレスケンスをただ信奉するわけじゃなくて、神格化している人達もやはり居るのね。それがモーレス大公っていうことか……。
「だが、この前の瘴気の騒ぎでクレスケンスは慈悲を与えてくれなかった。それとは逆に助けてくれたアイラ派が台頭しているとも聞いているぞ」
「アイラ派って……」
瘴気事件が起きる前から、少なくとも王都では私への待遇は異常だった気がする。ほとんどのお店で無料にします、っていう声が多かったし。アイラ派なんて台頭して来たら、どうなってしまうんだろう? 2号店オープンは早すぎたかな……もう少し、後にオープンさせた方が良かったかもしれないわね。
「ああ、そういえば……」
「どうかしたか、アイラ?」
「いえ、さっき言われていたクレスケンスが、瘴気の騒ぎの時に何もしなかったっていう話ですけど」
「ん? それがどうかしたのか?」
「何もしなかったというのは、語弊があるような気がします」
「そうか? まあ、彼女は氷漬けだし動けないが何もしていないのは事実だっただろう」
違う……クレスケンスは確かに「超万能薬」の存在を私に示してくれていた。これを理解してくれるのは、オディーリア様だけかもしれないけれど。彼女の一言? がなければ、あの後どうなっていたか分からないのだし。
暇な時間に一度、サンスクワット大聖堂に向かっても良いかもしれないわね。そう言えばちゃんとお礼とか言えてなかったと思うし……。




