183話 オディーリアとの双性錬金 3
「……」
現在、超万能薬のアイテム調合に全神経を集中させている。万が一、完成すれば私のネプトさんから教わった技術と合わせて複製が可能になるだろうから。そうなれば……サンスクワット大聖堂の人々の命は救われそうね。一度解毒に成功すれば、しばらくの期間は瘴気の影響は受けないはずだから。
「どうした、アイラ? 手が止まっているように見えるぞ?」
「は、はい……すみません!」
超万能薬の製造には神経を使う……明らかに難しいものだったから。でも、私はオディーリア様の製造過程を真似ているだけだけれど、不可能という気はしなかった。このまま不測の事態がなければ、超万能薬は完成するだろう。そんな確信が生まれている。
それは良いのだけれど……私は戸惑っていた。なぜ、オディーリア様は現代では製造不可能と言われている超万能薬の製造方法を知っているのか。いえ、彼女は技量的には自分では無理だと言っていたけれど、私の技量では可能かもしれないと言っていた。事実、私は完成出来るという確信を持っている。
それも全て、双性錬金でオディーリア様の動きを真似ているからだ。ここでも疑問があった。彼女は……前から思っていたけれど、私と同じ動きをしているのだ。これは双性錬金をしているとか、キース姉弟のように双子だからとかそういった要因とは別の何か……もっと近しいものを感じてしまう。
「流石じゃのアイラ……信じられないことだが、超万能薬は完成に近づいているようじゃ」
「私も信じられません……神経は相当に使ってますけど、現代には存在しないと言われている薬が、こんなに簡単に生まれるなんて」
「シグルド殿の素材調達、大聖堂の錬金設備のおかげでもあるがの」
「そうですね」
もう間違いない……超万能薬の完成は目前だった。
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「おそらく、完成じゃな」
基本工程は万能薬の手順と似ていた。だからこそ、超万能薬の製造も上手くいったのかもしれない。見たこともない色……透明感。でも、万能薬の強化版であるとの確信は見ただけでも判断出来る程だ。
「純度に関しては正確には分からんが……まずは、シグルド殿に試してみるとするか」
「なんだか酷い感じが……」
「シグルド殿を治すことは優先事項の一つじゃろう。同時に超万能薬の効果も試せるというものじゃ」
「確かに、そうかもしれませんね」
戦力的に明らかにシグルドさんは必要だった。ダウンされると本当にピンチになりそうだし。超万能薬の効果を試す意味合いでも絶好の相手と言える。
超万能薬の製造過程で色々と不思議なことがあったけれど、それらの答え合わせは後程、考えることにした。まずは人助けを最優先に考えないといけないしね。
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「これが伝説の超万能薬か……」
「どうですか?」
大聖堂の隅に座り込んでいたシグルドさんに、事情を説明して試飲して貰った。彼は私が何も言わなくても状況を理解し、飲んでくれる。自分がその効果の治験役になっていることも理解しているのだろう。
「ほう、これは凄い……」
「シグルドさん、顔色が……」
明らかに顔色が良くなっているような……瘴気は取り除かれたと見て良いのかしら?
「ふむ……瘴気にやられていた身体が軽くなったような感じだ。完治とまで言えるかは分からんが、確実にそれに近くなったと言えるだろう」
「シグルドさん、良かったです!」
「ふん……」
久しぶりにシグルドさんの笑顔が見れた気がする。彼はぶっきらぼうに言葉を発していたけれど、私に感謝してくれているようだった。
「まったくお前は……心配を掛けさせて……」
「ほう、アルファ。心配してくれたわけか」
「なっ……バカ! 当然だろう!? ただし、あくまでも仲間としてだからな!」
アルファさんは顔を真っ赤にしながら明後日の方向を向いてしまった。なんだか微笑ましい光景だわ。
「ふふっ」
「なんだ、アイラ? 何か言いたいことがあるのか?」
「いえ、なんでもありませんよ、アルファさん。それでは私は超万能薬を他の皆さんに処方してみますね」
シグルドさんとアルファさんの関係性を理解し、二人きりにさせてあげるのも良いかと思って立ち上がった。
「なるべく瀕死の患者から処方をしてやることだな」
「分かりました、シグルドさん」
そんなことは分かっている。患者の容態については、神官の皆さんに聞けば分かるはずだ。死亡するまで余裕のあったシグルドさんに処方したのは特別で、まずは瀕死の人々に処方するのが定石なのは分かっている。
さてと……これでサンスクワット大聖堂に集まった人々を助けられたら良いけれど。外の人達まではすぐには厳しいけれど、せめてこの中に居る人達くらいはね……もう、死んでいくのを見たくないし……。
2021年12月10日にツギクルブックス様より書籍の第2巻が発売予定です!イラストは志田様です。




