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180話 超万能薬 2


「超万能薬……現代の調合技術では製造不可能な幻の解毒薬じゃな。万能薬の上位版といったところか」


「やっぱり、名前的にそうなんですね……」


「うむ、その通りじゃ。よく勉強しておるの、アイラ。素晴らしいぞ」


 オディーリア様に褒められちゃった。それは嬉しいけど、知識として知っていたわけじゃない。


「いえ……超万能薬については知っていたわけじゃないんです」


「ん? どういう意味じゃ?」


「ええと、なんていうか……ほら、氷漬けのクレスケンスが居るじゃないですか?」


「うむ、そうじゃな」


 あの時のことを思い出す……ほんの数日前の出来事ではあるけれど、あの時も確かこうして何気なくクレスケンスを見ていたんだっけ。そしたら……頭の中に「超万能薬」という言葉が浮かんだわけで。まるで、クレスケンスと会話したかのような錯覚……そんなわけはないけれど。


「なんだかその時に、超万能薬という言葉が頭に浮かんだんです」


「そう言えば、急にそんな言葉を口にしていたな」


「はい、そうですね。アルファさん」


 あの時はアルファさんにも褒められたんだっけ。知っていたわけじゃない薬の名前が急に浮かんだ……よくよく考えると、とても不思議な現象よね。


「その話は本当なのか……?」


「オディーリア様……?」


 オディーリア様は今までにない程の真剣な表情になっていた。えっ、どういうことかしら? 私が何か変なことを言ってしまった?


「あの、すみません……何かご気分を害してしまったでしょうか?」


「ああ……いや、違うぞアイラ。済まなかったな……お主が悪いことは何もない」


「……?」


 オディーリア様にしては焦っていたような? 気のせいかな……彼女はすぐに笑顔になったけど、なんだったんだろう。


「超万能薬なら現状を打開できる可能性はあるのでしょうか?」


「可能性は十分にあるじゃろう。と、いうよりもそれ以外に打開できる術はないだろうがな」


 確かに……万能薬が完全には効かない時点で既に詰みの状態だ。瘴気は既に王都ヴァレイを吞み込みつつあるはず。ロンバルディア神聖国は大きな選択を迫られているのだろう。


「と、いうことは……このままでは王都を放棄する以外に選択肢がなくなるということか……」


「アルファさん……そうなりますかね……」


 まさか、旅行気分で訪れた王都でこんな事態に巻き込まれるとは思ってもみなかった。サンスクワット大聖堂内はまだ落ち着いているけれど、王都の各地ではパニック状態になっているのではないだろうか。そんな時に、王都を放棄する以外に助かる術がないと分かればどんな暴動になるか……下手をすると、パニックを起こした住民の動きだけで死傷者が出てしまうかもしれない。


 それ程に、現状は切羽詰まっていると言えた。マラークさん達は、出来るだけ混乱が起きないように手を尽くしているとは思うけれど、それもどれだけ持つのだろうか。大聖堂内がまだ平和なのは、自慢をするわけではないけれど、私が居るからなのかもしれない。それに、アルファさんや他の神官の方々も居るし、ある種の安心感が生まれているのだろう。


「アイラ……もう分かっているかもしれないが、これはもう超万能薬を完成させるしかないようじゃな」


「そ、それは分かるのですが……超万能薬は作れないのでは?」


「まあ、そうとも言い切れん。可能性はある」


「えっ、どういうことですか……?」


 オディーリア様の言葉の意味が分からなかった……超万能薬を作れる可能性? 現代技術では不可能とされているのに? 私も聞いたことがない薬だし、作れる自信なんてまったくないけれど。


「実はここに来る途中にシグルド殿と会っていてな」


「シグルドさん、無事だったんですね?」


「うむ、今のところはな。しかし、瘴気の発生場所からはAランクの魔物がどんどん出てきているようじゃ。瘴気もより濃くなっているらしくての。出来る限り迂回するように怒鳴られたというわけじゃ」


 良かった……シグルドさん、無事だったんだ。まあ、あの人がピンチになるところは想像出来ないけれど、やっぱり心配ではあった。アルファさんも安心しているようだ。


「先を見越して、万能薬の素材を取っているとも聞いておる。彼も近々、こちらに戻って来ると言っていた。運が向いているかもしれんぞ」


 シグルドさん……Aランクの魔物討伐しながら、瘴気用に万能薬の素材まで集めているの? ああ、なんだか涙が出て来る……私はなんで絶望感なんかに駆られていたんだろう。シグルドさんは私を信じてくれているのに……。


「ほれほれ、アイラよ。私達にしか出来ないことを始める時が来たのだぞ」


「そ、そうですね! 瘴気を拭えないと、虚無感に襲われている場合ではなかったです!」


「うむ、その心意気じゃ。それでは、わらわ達にしか出来ぬことをこれから説明するぞ。良く聞いておくのじゃ」


「はい!」


 わずかな光明が見えて来たのかもしれない……私はオディーリア様の話に集中することにした。



 

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