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178話 瘴気を拭えない


 それから数日が経過した。私はサンスクワット大聖堂に籠り、アイテムを製造して体調の悪い人に与えるという作業を休憩を挟みながら繰り返していた。被っている防毒マスクのおかげで瘴気の影響は今のところ受けていないけど……。


 王都に迫って来た瘴気は徐々に濃くなっているようだ。王都は現在ロックダウン状態で、外に出ないように言われているのだ。その状況は日々、厳しくなっていた。マラーク神官長から聞いている。シグルドさんもまだ戻って来ていないし、心配ではある。


「私の薬……王都の他のところにも出回っているんですよね?」


「ああ、そう聞いている。また、王都の薬士も総動員されているらしいぞ」


「ええ、それなら心強いのですが……」


 神聖な場所と私の足手まといにしかならないという理由で、サンスクワット大聖堂の錬金設備は私しか使っていない。瘴気が蔓延している現状では、それは正しい判断なのだと思う。変に錬金施設を移動して瘴気にやられる方が怖いしね。


 神聖国の議会は今頃、大慌てだろう。どのように対策をしたら良いのか、というところで。このままの状態が続くと本当にマズイ。なぜなら……。


「私の万能薬の効果も完全ではないようですね」


「マラーク殿の話を聞く限り、そのようだな……」


 毒消し薬、上級毒消し薬、万能薬でも瘴気を完璧に拭うことは出来なかった。万能薬を持ってしても完全に治すことができないのだ。一度、瘴気に侵された人はいずれは死んでしまうことを意味している。


「ああ、ロイ! そんな……!」


「ハンナさん! ロイ君はもう……アイラ様の薬の効果でも……」


「う、うわぁぁぁぁ……!」



 この数日間だけで、何回そんな光景を見ただろうか? また一人、子供が死亡したのだ。抵抗力の低い人間から殺していく殺人的な未知の瘴気……そんなものが噴出しているなんて。ロイ君という子供に覆いかぶさるように泣き崩れる母親を見ながら、私は何とも言えない感情が出ていた。


 そんな私の肩にアルファさんの手が置かれる。


「アイラが心を痛めることではないさ。この状況は流石にどうしようもない。アイラはよくやっていると思うよ。シグルドの奴もそう言うさ」


「アルファさん……ありがとうございます……」


 アルファさんの言葉で私は少し助けられる。


「マラーク殿もかなりの多忙だろう。大聖堂に戻って来る暇もない程に駆け回っているだろうからな」


「そうですね……」


 眠れる氷のクレスケンスに祈りを捧げている人も多い。自分達をお助けください、と瘴気を取り除いてください、と祈っているのだろうか。私に出来ることは万能薬などを出来るだけ多く量産することだけだ。でも、それは時間稼ぎにしかならない……根本的な解決がなければ、この王都は放棄されることになるだろう。


 サンスクワット大聖堂の中だけでも死者が出ている。王都全体では何人の人が死んでいるのか。また、瘴気発生場所の近くの村々では……ああ、駄目だ悲観的になり過ぎている。ストレスを感じ過ぎて、瘴気に当てられたら、防毒マスクの上からでも感染してしまうかもしれない。


 私が倒れることだけはあってはならない。マラークさんもそう言っていた。


「しかし……これ以上、瘴気が濃くなると私でも危ないかもしれない。それに、防毒マスクも効果がなくなるだろうな。そうなると……」


「そんな……」


 アルファさんは真剣な表情で不吉なことを言っていた。それでは本当に八方塞がりになってしまう。なんとか……なんとかしないと……何か、何か手はないの? と、そんな時だった。サンスクワット大聖堂の入り口が開かれたのは。誰か入って来たようだ。


「随分と危険な状態のようじゃな……ふむ」


「はい、左様でございますね……」


「お、オディーリア様……?」


 入って来たのはオディーリア様と五芒星の人達だった。まさか、こんなタイミングで王都ヴァレイにやって来るなんて……。危険極まりないことではあるけれど、とても頼もしくもあった。


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