174話 自分に出来ること 1
(シグルド視点)
「やはりか……」
俺はロンバルディア神聖国のマラーク神官長と共に、瘴気の発生場所に来ていた。
「シグルド殿、あれはやはり、あなたの良く知る瘴気なのでしょうか……!?」
「ああ……おそらくは間違いないだろう。まだ、そこまでの濃度ではないようだが」
ロンバルディア神聖国の王都ヴァレイより北に5キロ程の地点……俺達は少し離れた場所から観察しているが、臭いや見た目から、メビウスダンジョンの瘴気と同じものであることは疑いようがなかった。
ちっ、あのダンジョンは全長はかなりの長さになると踏んではいたが……まさか、国境線を越えて、王都ヴァレイの近くまで来ているとは思ってもいなかったぜ。まだまだ、攻略出来ていない部分は多そうだな。まあそれは、未知の魔物が居る可能性を秘めていて、俺にとっては嬉しいことではあるが。
「しかし、周囲の連中にまで被害が及んでいるのは看過できんな」
「確かにそうでありますな……!」
「上級の毒消し薬を作れる薬士は、王都にどれだけ居るんだ?」
「上級毒消し薬ですか? 少数ではありますが、数人は心当たりがございます!」
「メビウスダンジョンの未知の瘴気にどこまで効果があるかわからんが、ないよりはマシだろう。すぐにでも、集めることだな」
「りょ、了解いたしました! シグルド殿は如何なさいますか? 私は王都へと戻りますが……」
「俺はそうだな……」
瘴気の発生場所……魔物の気配を感じる。この雰囲気は、ヴィヴィドスネークか? 今、周辺に待機している神聖国の騎士達では相手にならんだろう。
「俺は少し仕事をしてくるとしようか。お前は戻ってアイラのサポートでもしてくるんだな」
おそらく今回の件は、アイラが居なくては解決出来ないだろう。いや、あいつでも果たして、といったところか……未知の瘴気だからな。
「承知いたしました。私はすぐに王都へ戻ることにします」
「ああ、それから、瘴気の発生場所には誰も近づけるなよ? 凶悪魔獣の気配がしている。死んでも責任は取れんからな」
「わ、わかりました、すぐに撤収させます!」
「ああ」
頭が固いタイプかと思ったが、緊急事態においては意外と柔軟に動けるタイプのようだな。流石は神官長までになれた男と言ったところか。俺の相手はヴィヴィドスネーク等の凶悪魔獣……それに、この程度の瘴気であれば、特に身体に影響することもない。濃度が濃くならない限りはな。
だが、他の連中は大丈夫なのか? アイラ自身が倒れても大変なことになりそうだが……まあ、王都の心配をするのは俺の役目ではないがな。アイラとアルファを信じるとするか。
俺は凶悪魔獣の掃討に集中するか、万が一、王都へなだれ込む形になれば、それこそ地獄絵図だからな。




