171話 王都を巡る 2
「アイラ様! よろしければ、こちらの服などは如何でございますか? もちろん、お代はいただきませんので!」
「アイラ様! 占いなどに興味はございませんか!?」
「アイラ様だ、本物だ!」
「アイラ様~~~!」
私は楽しくロンバルディア神聖国の王都ヴァレイを回るつもりだったのに……散々な目に遭ってしまい、それどころではなくなってしまった。適当なお店に入ったとしても、私の顔は知られているらしく、必ず呼び止められてしまうのだ。そして、お代はいらないからということで商品を勧められてしまう。
相手からすれば、慈善事業みたいなものなのかもしれないけれど、こちらとしては困ってしまう事態だった。見知らぬ人から、無料で施しを受けるなんて申し訳ないし、私はそんな高尚な人物ではないし。
王都ヴァレイに到着して、まだ数日も経過していないけれど、早くも息苦しさを感じてしまっていた。
「くははは、面白いな」
「シグルドさん……楽しんでますよね?」
「楽しんでいるわけではないが、せっかくの無料の提示を拒みまくるお前は滑稽ではあったな。俺からすれば、拒む理由が良くわからん」
「だって……」
私は必要以上に崇められるのは好きじゃない。ホーミング王国では褒められはしても、そこまで崇められることはなかったんだし余計にだ。王都ヴァレスに来て3日しか経っていないけれど、ここまで奉られるのは正直、予想外だった。神官の人々に崇められるくらいはあると思っていたけれど……。
「アイラがそれだけ凄いということだよ。まあ、息苦しさを感じるのも分かるけどね」
「アルファさん……ありがとうございます」
シグルドさんとは違い、アルファさんは私の気持ちを理解してくれているようだった。まあ、シグルドさんも分かってはくれているのだと思うけど……まあシグルドさんは、私を気遣うキャラでもないしね。
「アイラ様……分かっていただけましたかな?」
「えっ?」
そんな時、急に私の名前を呼ぶ声が聞こえた。私の前に現れたのはマラークさんだ。私はまったく気付いていなかったけれど、シグルドさんとアルファさんは気付いていたのか、平然としていた。
「マラーク殿、私達の後をずっと付けていたようだが……どういうおつもりかな?」
「ああ、これは申し訳ないアルファ殿。特に悪意があったわけではありませんよ」
あ、大分前から付けられていたんだ……全然気付かなかったわ。流石はアルファさんね。
「では、どういうつもりなのですか? 私とシグルドは、アイラ・ステイトの護衛を任務としております。場合によっては、マラーク殿でも拘束させていただくことになるかもしれませんよ?」
「これは恐ろしいことだ……アルファ殿が本気になれば、私を拘束することは比較的容易でしょうな。ただ、悪意を持ってつけていたわけではありません。それだけは信じていただきたい」
「ええと……では、どういう意味でつけていたのでしょうか?」
私はマラークさんに恐る恐る聞いてみる。
「この2~3日の間で、分かっていただけたと思いますが……アイラ様は王都ヴァレスで非常に歓迎されております。ヴァレス内で店を作る予定等はありませんか? 出来ればこちらに移り住んでいただけると助かるのですが……勿論、費用面は全て神聖国が負担いたします」
「え、ええ~~~!?」
マラークさんの提案に私は驚きを隠せなかった。2号店の出店はともかくとして……王都ヴァレスに移り住むって……? しかも費用面は全て無料? ここまで来ると私としてはどうすれば良いのか分からなくなってしまう。なんて返せば良いんだろうか?
マラークさんは悪意を持っているわけではないだろうし……むしろ、善意で言ってくれているのだろうしね。




