170話 王都を巡る 1
「わあ! このお魚、とても美味しいですね!」
「アイラ様にそう言っていただき、とても光栄でございますわ。ありがとうございます」
「いえ、そんな……」
サンスクワット大聖堂で氷漬けのクレスケンスを見た私達3人。マラークさんとはその場で別れて、王都ヴァレスを巡ることにした。マラークさんが案内役を買って出てくれたけれど、こちらにはアルファさんが居たので問題なかった。
それで、今はレストランで昼食を食べているのだけど……。
「アイラ様がまさか、このお店を選んでくださるなんて……本当にありがとうございます」
「あ、あはは……どういたしまして……」
私はその店の料理長から感謝の意を表されていた。正直、事前に予約をしたわけでもないのに、なぜか私の訪問がバレたようで……。
「そちらの肉はロンバルディア神聖国が誇る、鴨肉となっておりまして……」
「なるほど、そうなんですね……」
料理長の説明はとてもありがたいのだけれど、正直、長いと感じてしまった。それに、そんなに感謝されるようなことはしていないし。
「アイラ様のお口に合う料理を作れたこと、至上の喜びでございます」
「あ、ありがとうございます……」
私はだんだんと苦笑いになっていった……。
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「ふふ、アイラ。随分と人気者だな」
「やめてくださいよ、アルファさん。正直……疲れます」
「はは、まあここはロンバルディア神聖国の王都だからな。アイラのことを知っている者も多いのだろう」
それからしばらくして、ようやく料理長から解放された。私は静かに食事にありつけている。
「そういえば、ここに来るまでに視線を感じましたね。あれももしかして……」
「おそらく、アイラを見ていたのだろうな」
やっぱり……私は少し溜息を吐いてしまった。レストランに来る前に雑貨店などに寄っていたのだけれど、そこでも視線を感じたし、私の想像以上に私は認識されているようだ。
「まあ、新たな神として奉るようなものだからな。お前の存在の大きさは相当なんだろう」
「シグルドさんまで……」
「ふん、おそらくだが、煩わしさを感じるのはここからだと思うぞ」
「えっ……?」
ま、まさかね……シグルドさんの言葉が妙に頭に残ってしまった。
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「はあ……ようやく、分かってくれた……疲れた」
「無料で飯が食えるところだったのに、勿体なかったな」
「止めてくださいよ、シグルドさん……」
その後、レストランの料理長と代金の件で揉めることになってしまった。店側は、私達の料理は無料にすると言い出したのだ。流石にそんな施しを受けるわけにはいかないので、私は無理矢理代金を置いて去ることにした。
お釣りを貰っていないから、多めに出すことになったけれど……。
「はあ……せっかく、王都の散策を楽しめると思ったのに、前途多難ですね」
「分からなくはないな。私も想像はしていたが、これは少し過剰かもしれない」
神聖国出身のアルファさんでも、少し過剰と認めている。せっかくの王都だけれど、嫌な予感が強くなっていった……。何事もなく終わって欲しいけれど……やっぱり、無理かなこれは。
「……」
「シグルド? どうかしたのか?」
「いや……何でもない」
「シグルドさん?」
その時、一瞬だけだけどシグルドさんが王都の入り口の方に目をやっていた。すぐに視線を戻したみたいだけれど、何かあったのかしら? この人の感覚は常人離れしているから、何かしらの気配を悟ったのかもしれないわね。




