168話 サンスクワット大聖堂 1
ホーミング王国の南の関所を抜けさらに進むこと1週間近く……。途中の町での寝泊りを繰り返しながら、私達はロンバルディア神聖国の王都ヴァレスに到着した。
早速、宿などを確保し御者の人と別れて王都へと繰り出すことにした。
「アイラ、感想としてはどうだ?」
「不思議な感じですね……他国に来たんだなって思わされます」
ホーミング王国内とは建築様式がかなり違っているように感じられる。距離としては比較的近いはずなのに。
「ふふ、ここが私の故郷のロンバルディア神聖国の都になる。距離としては近いが、見た目はホーミング王国の首都とは異なるだろう?」
「そうですね……私もそう思います」
アルファさんの故郷でもあるロンバルディア神聖国……彼女の言う通り、確かにホーミング王国とはかなり異なっているわね。宿から出て、私達3人は大通りに出たところだけど、サンスクワット大聖堂は目の前にあった。
「サンスクワット大聖堂……あれがそうですよね?」
「ええ、その通りだ。他の国の教会と比較してもはるかに大規模な建物だろうな」
確かに……宮殿とかよりも大きいかもしれない建物だし、私は思わず驚いてしまっていた。もう少し離れたところに、王族が住んでいるであろう王宮みたいな建物が見えるけど、遠近感を考慮しても、明らかに大聖堂の方が大きかった。
流石は宗教国家というところね……。
「早速、入ってみるか? アイラ」
「そうですね、アルファさん。案内をお願いしてもよろしいですか?」
「任せておいてくれ。我が家のような場所だからな」
「アルファさんって、神聖国の神殿騎士でもあるんですよね?」
「まあ、それは確かにそうだが……神殿騎士と言っても、色々な雇用形態があってな。私は有事の際以外は冒険者として働き、稼ぎの一部を神聖国に収めているという雇用形態なのさ」
「なるほど、そうだったんですね」
だから、こうして私の護衛なんかも引き受けてくれるというわけね。他国でいうところの、民兵みたいなものかしら? 私達3人はそのままサンスクワット大聖堂に進んで行った。
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「これがサンスクワット大聖堂の中……」
「ああ、そういうことだ。王宮以上の広さを誇る神聖な建物さ」
祈りを行えるように並べられた椅子だけでも、はたして幾つあるのだろうか? 数えきれないわ……それに人の流れも激しいし。神官と思しき人の数も相当な数にのぼるようだった。
「アルファ、あの奥にある物が例のクレスケンスの彫像か?」
シグルドさんが大聖堂の奥を指差していた。そこには氷漬けの剥製のようなものが、鎖で厳重に固定されていた。あれが……。
「その通りだ、シグルド。まあ、彫像というよりは永久凍土から発掘された本物の人間なわけだが……あの氷は決して溶けることがない」
「ほう……興味深いな」
「ふふ……まさにあれは、サンスクワット大聖堂の守り神、信仰の対象となっているからな」
めずらしくシグルドさんが興味津々のような気がする。でもそれは、私も同じだった。サンスクワット大聖堂の守り神。
何人もの人々が、氷漬けのクレスケンスに祈りを捧げている。他の教会で言えば、その宗教の神様をかたどった像に祈りを捧げるようなものだろうか。私は祈りを捧げることはしなかったけれど、クレスケンスの姿を見て、とても懐かしい感情に支配されてしまっていた。
あれ……? この感情って……。




