163話 アイラの想い 1
「ど、どうしよう……」
マラークさんはその後、アイテムを全種類1個ずつ買って帰って行った。私にロンバルディア帝国に来てほしいと依頼はしたけど、その場で承諾するか拒否するのかを求めることはなかった。
私も転居に関してすぐに拒否しなかったのが悪いんだけど、マラークさんは「満足のいく答えが返ってくることを期待しております!」と瞳を輝かせて出て行った。
エンゲージの前のお客さんはたくさん居たけれど、私は接客できる気分ではなかったので、奥の調合室に入って溜息を吐く。はあ……。
「アイラ、どうするつもりなんだ?」
「クリフト様……自分でも分からないんですよ」
「ロンバルディア神聖国に転居しても良いという考え自体は、持っているということか?」
「いえ、転居っていうのはちょっと……向こうに移り住もうなんて考えていません」
資金的な面で考えれば、ロンバルディア神聖国に移ってお店の2号店をオープンさせる余力はあると思うけど、流石にそこまでする気は当分はない。
「転居なんて考えてはいませんけど、旅行という意味合いで行ってみるのは良いかなって思ってます」
「ほほう、興味が出て来たのか?」
「オディーリア様も言ってたじゃないですか。氷漬けの太古の錬金術士が奉られているって。その大聖堂に行ってみたい気がするんです」
「サンスクワット大聖堂じゃな」
「そうでしたね、確か」
アルファさんと話していた時に出て来た話題だ。氷漬けの錬金術士クレスケンス……錬金術を志す身としては一度、訪れた方が良いような気がする。私はなぜか強い直感のようなもので、そう感じ取っていた。
まあ、何かが変わるわけではないかもしれないけれど、サンスクワット大聖堂に向かうこと自体は勉強という意味合いから、無駄ではないと思うし。行って帰ってくるだけなら、何日か留守にするだけで済むはず。お店経営に影響が出るとは思えないわ。
「気になるのか、アイラ?」
「そうですね……氷漬けの人間も気になりますが、それよりも錬金術士のルーツみたいなのが分かりそうで……そちらの方が興味あります」
「ふむ、なるほどの。まあ、アイラにとっては良い勉強になるじゃろうて」
「そうか……寂しくなるな」
「クリフト様、やめてくださいよ。何日か留守にするだけなんですから」
クリフト様の大袈裟な言葉に私は驚いてしまう。もう、何年も会えないような表情はやめてほしい。不安になってしまうし。
さてと……どうしようかな? 流石に、ロンバルディア神聖国まで、五芒星の人達に付いて来てもらうのはあれだし。誰か雇おうかしら……それくらいの資金は十分にあるし、たまにはたくさん使っても大丈夫よね。
よろしければ、ブクマや感想などいただければと思います。
3月10日に書籍が発売されました!
コミカライズも決定し、進行中です!




