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161話 神官長マラーク 1


「ええと……風邪薬とダークポーションですね? 少々、お待ちください!」


「さらに忙しさが増した印象ですね……はい、畏まりました! 上級回復薬とオートポーションですね! ただいまお持ち致します!」


 ロンバルディア神聖国のからの使者が訪れてからというもの……薬屋「エンゲージ」はさらに忙しくなっていた。従業員のみんなや、ライハットさんを総動員しても間に合わないレベルで……しまったわ、最近はアルファさんなどの強力な冒険者が来てくれていたから、低級の回復薬の製造を怠っていた……経営者としては大きなミスね。反省しないと……全てのお客さんに平等にサービスを提供出来るように。


「繁盛しているようだな」


「あっ、クリフト様! すみません……今は、本当に忙しい時間帯でして……」


 クリフト様が悪いタイミングで訪ねて来たようだ。私は失礼だと思いながらも、彼に対して忙しい今は対応が難しいことをアピールする。まあ、こういったことは1度や2度じゃないけどね。


「大丈夫だよ、アイラ。いつも通り、素材はここに置いておくから」


「ありがとうございます! クリフト様! お支払いはまた今度ということで……!」


「ああ、分かっている。支払いについては今度で大丈夫さ」


 売り上げが上がっているので、クリフト様とは正式に契約をして、素材の調達料金をお支払いしている。流石にいつまでも甘えているわけにはいかないからね。


 エンゲージのお店は本当に忙しくなった。でも、それは売り上げが順調すぎるくらいに伸びている証でもある。シグルドさんなどの大口の顧客を除いたとしても、経営状況は非常に良いと言えるだろう。


 単純に私の経営の努力と周りの人達からの支え……その両方が相乗効果を生み出したのだと思う。ライハットさんを初め、従業員の人達への給料をもっと上げても良いかもしれない。それをするくらいの余裕は十分にあると思う。


 実際問題として、私のお財布事情は見たことのない金額になりつつあるわけで……えへへへへ。


 て、違う違う。私はそんな守銭奴じゃないのよ! 正気に戻らなくちゃ。さて、そんなこんなでクリフト様から素材を受け取り、私はまた調合室に籠ろうかと思っていた矢先……。


「アイラ様! 少しよろしいでしょうか!?」


 大きな声と共に、一人の男性が私を呼び止めた。ロンバルディア神聖国のマラーク神官長だ。


「マラークさん……!? どうかしたんですか?」


 意外な人物の登場に私は驚いてしまった。また、以前のように迷惑を被ることになるんじゃないかという不安と共に。


「心配しないでいただきたい。本日は単に客として来たまでですよ。アイラ様の素晴らしいアイテムの数々を売っていただければ、と思いまして」


「アイテム購入ですか? はい、それなら全然問題ないですが……」


「ありがとうございます。それでは早速ですが……」


 私が許可を出すと、マラークさんは安心したように薬の物色を開始した。今回は彼一人の訪問のようなので、特に他のお客さんの邪魔になることはない。でもどうしてかしら……私は言い知れぬ不安が心の中から消えないでいた……。

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