158話 神聖国の訪問 4
「誰だ、お前達は……? 見たところ、この宿屋……桜庭亭だったかな? そこの客人のようだが」
「その通りだよ……! こっちは冒険で疲れてんだ。教会か神聖国だかなんだか知らねぇが、薬を買いに来たんじゃなければ、さっさと帰れよ!」
若気の至りとはまさにこのことかな。年下の私が言うのもなんだけど、彼らも18歳とかその辺だし、感情の起伏を制御できない年齢なんだろうと思う。
「ウォード・スパイル……冒険者ランキング8位のハングリーパンチのチームリーダーだな」
「ウォード・スパイル……ですか?」
「神聖国のマラーク殿に文句を言っている人物の名前さ」
クリフト様がまさかそんな情報を知っているとは……私はちょっと驚きだった。
「私は以前のグリフォン討伐に参加した際、シグルド殿に助けられた経緯がある。あの後から少しではあるが、冒険者について勉強しているのさ」
「あ、なるほど。前のエコリク大森林の掃討作戦がきっかけだったんですね」
「まあね」
クリフト様が冒険者チームに詳しい経緯は分かったけど……それにしても、ハングリーパンチって……もう少しマシなネーミングはなかったのかな? まあ、5位以内の人達のチーム名も良いかどうかは微妙だけれど。
「なんでも、素手で魔物を仕留めるスタイルらしい。いわゆる格闘タイプ、徒手空拳の達人と言えばいいのか」
「へえ、そうなんですね……徒手空拳か」
今まではカミーユ達の魔法系かシグルドさん達の剣タイプ。あとはネプトさんみたいな念動力の能力者は見て来たけれど。完全に素手って珍しい気がした。
よく見ると、ウォード・スパイルは懐からメリケンサックを取り出して、両手に付けだしていた。攻撃態勢に入っているような……。
「さっさと出て行かねぇんなら、力づくで追い出すけど、どうするんだ?」
「おやおや、乱暴な方が居たものだ……これだから冒険者というのは素行が悪くて嫌われるというのに」
「ああっ? 馬鹿にしてやがんのか?」
マラークさんは明らかにウォードを挑発している。力そのものには自信があるのか、ウォードに対して警戒している様子はまったくない。
「時代は過去の錬金術に向いているのですよ。我々はその布教活動をしているのです。アイラ・ステイト様はまさにその立役者と言えるでしょう。彼女の店の前で、野蛮な行為は控えていただきたいですねぇ」
「アイラ・ステイトを信奉したいなら、さっさと外に出ろよ……迷惑だって気付いてないのか?」
「なんですと、迷惑……?」
ウォードは頭を抱えているようだった。マラークさんを始め、数人の神聖国の人達は私の方向を見る。彼の話が本当かを確認するために。
「迷惑……なのでしょうか、アイラ様?」
「迷惑、というわけじゃありません。ただ、このお店はアミーナさんの桜庭亭とも連動しているお店ですし。お客様として来ていただけるのでしたら大歓迎ですけど。ただ、大人数で目立つように薬の品揃えの確認のみ、というのは今後は控えていただきたいです」
私はこの際、はっきり言ってしまった方が良いと判断した。マラークさんはその言葉を聞いて目を丸くしていたけど。
「なるほど……これは申し訳ないことをしてしまったようですね。畏まりました、アイラ様の言う通りに致します。私達は出直すとしましょう……」
「ありがとうございます、マラークさん」
「いえいえ、とんでもない。私達の崇拝の対象であるあなた様にご迷惑を掛けるのは、本意ではありませんので」
そこまで言うと、マラークさん達は桜庭亭から出て行った。とりあえずは一触即発は免れたのかな? 外に待機していたメンバーも姿を消し始めたし。
でも今後、ロンバルディア神聖国とはややこしい関係になりそうね。私はこの時、そんな予感を持っていた。
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