147話 オイゲン商会の崩壊 1
「えっ? トロメア・オイゲンが捕まったんですか……?」
「ああ、ホーミング王国の裁判所で裁いてほしいという依頼が来ていたよ。私に直接な」
「クリフト様に直接……ですか? じゃあ、その依頼してきた人物って」
「ネプト・オルタネイティブとアンジェリーナ・ラーデュイの二人だ。通称、イノセントと言った方が有名かもしれないな。冒険者ランキング堂々の1位……彼らがトロメア・オイゲンを捕縛して現れた時は流石に驚いたよ」
それは確かに驚くわね……デノン・アルスター達を使って、オイゲン商会を追い詰めることを計画していたのは知っていたけど。
あの日から、1週間ほどが経過していた。あの日というのは私が誘拐犯に襲われた日である。つまりネプトさん達はしっかりとした証拠なども用意して、1週間で頭目のトロメア・オイゲンを追い詰めたわけか……何という早業だろう。
「クリフト様、忙しくありません……? いきなり、罪人を裁くための段取りを決めないといけないでしょうし……」
「そうだな……実質、オイゲン商会に関わっていた相当数の人間を裁判にかけることになるからな。最近は睡眠時間が短くなっている」
「無理はしないでくださいね……」
睡眠時間が短くなっているというのは心配だ。あんまり身体に良くないことだし。
「ユリウスの罰則についても保留になっているところがあったしな。今回のことで、一気に前へ進むことになるだろう」
「なるほど」
そういえばユリウス殿下なんて居たわね。すっかり忘れていたけれど。トロメア・オイゲン達の裁判も始まるわけだし、今までゆっくりやっていた裁判所も大忙しになるだろう。そうなるとユリウス殿下の処遇は一瞬で決まりそうだ。
「とにかく、体力は養わないといけませんよ?」
「分かっているさ、アイラ。心配を掛けてしまって済まない」
「ふふっ、私のお店にはスタミナ回復薬とかエリクサーなんかもありますから! どうぞ好きなだけ買って行ってくださいね?」
「最終的にはそこに行きつくか……いやいや、非常に参ったよ。でもまあ、せっかくだし購入させてもらおうかな」
クリフト様は懐からお金を出し、本当に払おうとしていた。まさか、本気にするとは……私は慌てて言葉を訂正する。
「じょ、冗談ですよ……クリフト様! いつもお世話になっているクリフト様から搾取するわけないじゃないですか。はい、このスタミナ回復薬とエリクサーはいつものお礼です」
「構わないのかい? 無料で貰っても……」
「もちろんですよ、私とクリフト様の仲じゃないですか。これで英気を少しでも付けて、頑張ってください!!」
「やれやれ……アイラ、君には本当に驚かされるよ。その無垢な気持ちは……本当に貴重なんだな」
無垢な気持ち……? クリフト様は冗談を言っているのかしら? 私って結構、現実的な女に映っていると思っていたけれど。でもまあ、嫌な気分はしないし否定はしないでおくわ。
誇って良いことでも否定をし続けるのが私の悪い癖でもあったしね。
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