146話 VSオイゲン商会 4
「はっ……!? ここは、地獄か……?」
なんだか不思議なことを言いながら起き上がる男。名前はデノン・アルスターっていうみたい。先ほどまで、オイゲン商会の直営店の2階でアンジェリーナさんと戦闘を繰り広げていた人だ。
アンジェリーナさんに敗れて気絶していたんだけど、起き上がりざまに「地獄か?」ていうあたり、あの世に行ったと勘違いしていたんでしょうね。
「残念だが地獄じゃねぇよ……まあ、これからの人生は地獄が待ってるかもしれんがな……」
「し、シグルド・バーゼル……!」
この場所は直営店の1階部分になる。デノンの周囲にはシグルドさんが倒した連中が捕縛されていた。それを目の当たりにしたデノンは急に大人しくなる。
「そうか……やはり、あれだけの人数の部下を倒したのは、シグルド・バーゼル。お前だったのか……」
「そうだな。随分と歯ごたえのない連中だったぜ。これならば、グリフォン1体の方がマシだろうな」
「ぐ、グリフォンだと……? あんな怪物と一緒にするな……」
デノンの見立てでも、グリフォンはやっぱり怪物クラスの相手なのね。本当に戦闘能力の序列って難しいわね。このデノンっていう男も10年以上前は冒険者ランキングのトップ3に入っていたみたいだし。その情報だけを聞かされた場合は、現在のランキング2位のシグルドさんとはそこまで強さが離れていないんじゃないかって思うだろうし。
アンジェリーナさんに敗れ、シグルドさんの強さも理解できたデノン。最早、何も言い返せなくなっているみたいだった。
と、そんな時、シグルドさんの隣に立っていたネプトさんが、今度はデノンに話しかけた。
「デノン・アルスターだね? 君の素性は既に調べてあるよ。まさか、今回の事件を正当化できるとも考えてはいないのだろう? 我々に協力し、二度とアイラ君たちに迷惑を掛けないと誓った方が良いと思うがね」
デノンに対して口調は優しいながらも、有無を言わせない程の覇気を感じさせた。口ごたえをしようものなら、平気で鉄拳制裁が飛んできそうな気がする。アンジェリーナさんもスタンバイして、いつでも攻撃可能な状態にしている。
「くっ……私に何をさせるつもりだ……!?」
「簡単なことだよ。オイゲン商会の会長であるトロメア・オイゲンを捕まえて、オイゲン商会を壊滅させるだけだね。ここまで来て、自分や部下達の命を懸けてまで商会を守るとは言わないだろう?」
「ぬ、ぬううう……!!」
ネプトさんも依頼されている仕事だからか、かなりギリギリのところを攻めているように感じられる。このままデノンが協力を拒めば、本当に彼の首をはねるのかもしれない。そう思わせる程の気迫が伝わってきた。
「部下の命まで握られていては従うしかないようだ……何をすれば良い?」
「そう言ってもらえてうれしいよ。手間が省けて良かった」
デノンの回答が予想通りだったからか、ネプトさんは仏のような笑顔を見せていた。でも、その裏には邪神の顔が眠っていると思うと、けっこう怖いけど……ネプトさん。
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