145話 VSオイゲン商会 3
(デノン・アルスター視点)
「く、くそっ……! キース! 周囲で待機させていた者達はどうした!?」
「はい! 攻撃の合図は先ほど出しました!既に1階にてシグルド・バーゼルと戦っているはずですが……」
おかしい……1階からの戦闘の気配が伝わって来ない。一体、どうなっているのだ……? 私とキースの二人は現在、2階でアンジェリーナと対決中だ。
アンジェリーナは独特の形状のナイフを1本だけ所持している。「くない」と呼ばれる代物だということは知っているが……あんな小さな武器で、私達二人を相手にまったく傷を負っていないのだ。
私とキースは何度も連携攻撃を仕掛けているが、アンジェリーナには届かない。
くそ……これが現役、最強だと言われている冒険者の実力ということか? だが、下の者達を合わせれば流石のアンジェリーナと言えども……。
「伏兵が居たようだけれど、おそらく、もうやられているはず」
「なんだと? どういうことだ……!?」
アンジェリーナは高速で移動をしながら、表情をほとんど変えることなく話している。下の連中がもうやられているだと? 何を馬鹿なことを言っている。下で待機させていた者達は一人一人がかなりの実力者だ。それをシグルド一人に向けている。
1階での戦闘気配が感じないことは確かなので、可能性があるとすれば、私の部下たちが勝利したことを意味するのだろう。それ以外には考えられない。
そんな私の考えを、アンジェリーナは悟っていたのか、溜息交じりの言葉が返ってくる。
「……あなた達はシグルド・バーゼルという男を分かっていない」
「なんだと……?」
「1階で控えさせていた人間達は相当に強かったみたいだけど、そんな程度ではあの男の足止めにすらならないのだから」
「馬鹿なことを言うな! 私の用意した者達は腕利きだ! あの者達を相手に、足止め程度もさせずに倒せる人間などいるわけが……」
そう、居るわけがないのだ。元冒険者ランキングトップクラスの実力を誇っていた私が確信しているのだから。
しかし……その時、信じられない光景が目に入って来た。
「なんだ、まだ戦っていたのか? 手伝ってやろうか?」
「シグルド・バーゼル……!?」
あり得ない……1階の階段を悠々と上がって来たのは、まさにシグルド・バーゼル本人だったのだ。こ、こんなことが……!
「大丈夫、もう終わる」
「なに……? しまった……!!」
「ぐわぁぁ!」
一瞬の油断が勝敗を決めた……いや、そんな油断は気休めにしかならないだろう。私とキースはアンジェリーナに切りつけられ、その場に倒れ伏した。こちらも相当な差があったということか……。
「デノン様……申し訳ありませんでした……」
最後に聞いた言葉は副官であるキースの謝罪の言葉……私もその直後に目の前が真っ暗になってしまった。向かうのは……永遠の闇だろうか?
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書籍は3月10日発売です。
明日になりますね!




