143話 VSオイゲン商会 1
(デノン・アルスター視点)
「ほう、素直にシャッターを開けるとは……少し意外だったぞ」
「……そうね」
オイゲン商会の直営店……入口のシャッターを開け、外に居たのはやはりこの二人だった。
シグルド・バーゼルとアンジェリーナ・ラーデュイ……どちらも冒険者界隈では最高峰の実力者として知られている。私も元々はトップクラスの冒険者だったが、それを加味しても間近に見る二人の闘気は圧倒的と言えるだろう。
思わず汗が吹き出てしまうほどであった。
「これはこれは……有名なお方のお出ましか。こんな時分に何か用かな? オイゲン商会直営店の営業時間はとっくに過ぎているのだが……」
「ふん、営業時間と来たか……アイラ・ステイトを誘拐する手筈を整えていた分際で良い度胸だな?」
「アイラ・ステイトの誘拐だと? 何のことを言っているのか、良く分からないな」
「……何のことだか分からない、と?」
「ああ、その通りだ」
シャッターを開けた直後に核心に迫る話題を出してくるとは……こちらの出方を伺っているのか? いきなりの戦闘行為を望んでいたのかもしれないが、そうはいかないぞ。
「閉店時間の店のシャッターを叩く行為……明らかに迷惑行為なのだが、その点の説明はないのかな?」
「そのことか……迷惑を掛けた点については、後程、金で賄うとしようか。俺達の目的はそっちじゃないんだ」
「……」
この二人に迷惑料などを請求したところで無意味か……どうせ、簡単に払えるに決まっている。少し切るカードを間違えたな。
「気配を察知するところ、相当数の伏兵が配備しているようだ。とても堅気の商売とは思えないな。適当に始末して吐かせるだけでも、誘拐の証拠は得られそうだ」
「何を言っているのだ? シグルド・バーゼル……お前は自分が何を言っているのか、分かっているのか?」
「もちろんだ」
バカな……どうなっている? シグルドとアンジェリーナは知能も高いとは聞いていたが……これでは短絡的な輩と大差ない。もしも何も出てこなかった場合、どのように責任を取るつもりなのか。
「……!?」
その段階で私は気付いてしまった……この二人は責任に関しても金で解決するつもりなのではないのか、と。
「迷惑を掛けた部分については、相応の金を払おう。もちろん、お前達が潔白だったらの話だがな。ネプトからの話では素材の偽物を売っているのは明白のようだし、叩けば埃は出て来るんだろう?」
「くっ……!」
なんという大胆不敵な行動だ……! おそらくは短絡的で馬鹿のような振る舞いも全て計算通りなのだろう。マズイ……このまま、この二人のペースに嵌るわけにはいかない。
戦闘行為は避けられんか……いいだろう、たった二人で攻めて来たことを後悔するんだな!
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書籍の発売は3月10日になります。




