137話 誘拐犯 1
「一体、何事だ!?」
「ライハットさん、気を付けてくださいね!」
「ええ、分かっています!」
私とライハットさんは何かが割れるような音がした為に、急いで調合室にやって来た。扉を開け、真っ先に中へ入ったのはライハットさんだ。
「これは……?」
「窓ガラスが……割れてる?」
予想通りと言えばいいのか……何者かの攻撃の形跡は見られた。調合室にある窓ガラスは全壊している。でも、事前に取り付けていた鉄格子によって侵入者は入って来られなかったみたいね。
ガラスの破片は床に散乱していた。本来であれば、とても恐ろしい状況なんだけど。この時の私は妙に落ち着いていた。なんていうのか……鉄格子を破られなかった安心感とでも言えばいいのかな?
ただ、ライハットさんは真剣な表情で散乱したガラス片を見ていた。
「想定はしていた事態ですが……まさか、このようなことが起きるとは」
「そうですね。やっぱり、狙いは私だったのでしょうか?」
「調合室をわざわざ狙っている時点で、その可能性は高いと思われます。鉄格子での対策がなければ、室内に侵入されていたでしょう」
怖い……備えあれば憂いなしとはよく言ったものね。と、その時、入口の方からも激しい物音がした。
「まさか……こんなあからさまに攻めて来るなんて! 信じられない!」
「行ってみましょう!」
調合室への攻撃は罠? そんな予想を立てながら、私とライハットさんは桜庭亭の入り口を目指した──。
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「そこまでです、悪党ども」
「なんだ、この女……? いつから、そこに居た?」
私たちが入口に付いた時、五芒星の一人であるエメルさんが、二人の侵入者と相対していた。私の左右からはインビジブルローブを外した二名の姿もある。
「アイラ様、もう少し離れていただけますか?」
「は、はい……!」
五芒星に促され、私はライハットさんと離れた位置に立たされた。彼女たちが護衛を確実に行える距離なのかもしれない。
「おいおい、あいつがアイラ・ステイトだろ?」
「そうだな……風貌からして間違いないだろう」
「ひゃはははは、じゃあ、さっさと周囲の奴らはぶち殺して誘拐すればいいんじゃね?」
「ゆ、誘拐……?」
桜庭亭に入ってきた侵入者の二人は、確かに誘拐と言った。私を誘拐するってこと? 一体、そんなことしてなんとメリットがあるんだろうか。
「お気を付けください。この二人は有名な賞金首だ。只者ではないでしょう!」
「はい、分かっています。しかし、グリフォンに比べれば弱い相手と言えるでしょう。アイラ様の護衛として、私たちも完璧に仕事をこなしてみせます」
エメルさんの覚悟は、その表情を見なくてもひしひしと伝わってきた。もしかすると、グリフォン戦でのことを引きづっているのかもしれない。
「そういうことでしたら、私もお手伝いいたしましょう。丁度、2対2だ」
「ライハット様……申し訳ありません」
「いえ、お気になさらずに」
「ずいぶんと舐められたもんだな? 後悔させてやるぜ!」
ライハットさんとエメルさんはお互いに臨戦態勢を取っていた。私と他二名の五芒星は、巻き込まれないように下がっている。
桜庭亭内でまさかの戦闘が行われようとしていた……。
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