136話 動き出した相手 3
「……こ、怖い……」
「随分と緊張されていますね、アイラ殿」
「だって、ライハットさん……何かが起きるかもしれないって言われてるんですよ? 怖すぎますって」
「確かにそうかもしれませんが、怖がり過ぎるのも精神的に良くありませんよ?」
「それはそうかもしれませんが……」
私はオディーリア様からの忠告もあって、緊張感を持ちながらエンゲージの運営を行っていた。五芒星の護衛が3人付いているとはいえ、自分なりに警戒もしている。
まず、調合室にある窓に鉄格子を設置した。これはキース姉弟に依頼して設計してもらった特注品だったりする。これで調合室に居る間、扉以外からの侵入は不可能だ。それから、今は桜庭亭の一室を借り切っているけれど、定期的に寝泊りをする部屋を替えることにした。
流石に宿屋の窓に鉄格子というわけにはいかないし。定期的にランダムに部屋を移動する方が、確実な気がするしね。アミーナさんには迷惑を掛けるけど、了承してもらった。
「アイラのお店の恩恵を物凄く受けているんだから、そんなことくらい気にしなくていいわよ」
と言ってくれてはいたけど、やっぱりアミーナさんに手間を掛けるのは嫌だった。まあ、一般的に考えれば宿代+手間賃を払っていれば、大丈夫なのかもしれないけれど。
「アミーナさんには申し訳なく思ってしまいます……」
「といっても、対価はちゃんと支払っているのでしょう? それならば、そこまで考える必要はないと思いますが」
「そうでしょうか……」
「ええ、私はそう思いますよ」
う~ん……やっぱり私の感覚がズレてるのかな? まあ、大丈夫ならそういうことにしておこう。
「僭越ながら、私も護衛に一役買っています。五芒星も含めて、これでアイラ殿への手出しはまず出来ないでしょうね」
「そうですよね……」
グリフォンみたいな怪物が攻めて来ない限りは問題ないはず。私はそのように考えていた。決して楽観視などしていない。でも、どこまで行っても不安というものは残ってしまうのだった……。
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「アイラちゃん! 今日もありがとうよ!」
「毎度ありがとうございました! またお願いしますね!」
「おうよ! また来るぜ!」
本日も最後のお客さんであるレッグ・ターナーさんを帰して、店じまいとなった。有名な冒険者が来てくれる頻度も上がっているので、売り上げは倍増している。
「本日もお疲れ様でした、アイラ殿」
「はい! ライハットさんもお疲れ様でした!」
他の従業員は既に帰っている。もう夜遅いしね……店には私とライハットさんだけが残っていた。オディーリア様の忠告があってから1週間以上……今のところ、大きな変化はない。
「今月の売り上げも凄いことになりそうですね」
「いやぁ、あはははは……それほどでも……」
「このまま何もなければ、完璧なんですがね」
ライハットさんに面と向かって言われると恥ずかしいわ。そう、このまま何事もなければ完璧なんだけど……あれ? もしかして壮大にフラグを踏んでしまった……!?
と、その時……パリンッという音が奥の調合室から聞こえてきた。
「今の音は……!?」
「調合室ですよね……」
嫌な予感がしてしまう……的中しないことを祈りつつ、私達は現場に向かうことにした。
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