134話 動き出した相手 1
(トロメア・オイゲン視点)
「我の読み違いだったか」
「トロメア様、どうなさいますか?」
「そうだな……」
首都にオープンさせた、オイゲン商会の直営店。薬や雑貨、衣装などを豊富に取り揃える店として人気店になってはいるが……。
「デノン、直営店の売り上げはどうなのだ?」
我は直営店の管理を任せている、デノン・アルスターに問いかける。オイゲン商会の幹部の一人だ。オイゲン商会の幹部をやるまでは、冒険者ランキングのトップ5に入っていた実力者でもある。その強さは衰えるどころか、研ぎ澄まされているらしい。
「薬屋エンゲージ……あの店はどうやら、3大秘薬などの数が飛躍的に増大している模様です。それに加えて、圧倒的な薬品の種類もアドバンテージになっています。単純な売り上げは、2階の売り上げを入れたとしても負けているかと」
「なんということだ……これほどまでとはな」
周辺国家にも名を轟かせる、我がオイゲン商会。その直営店がただの個人店に売り上げで負けるとはな。
「それともう一つ、お知らせがございます」
「なんだ?」
「薬屋エンゲージの向かいにある店、キースファミリーですが……そちらの売り上げもエンゲージには及ばないまでも想像以上のようです」
「キース姉弟はシンガイア帝国最高レベルの錬金術士という噂があったな」
「左様でございますね……」
キース姉弟の店ということであれば、警戒する売り上げを叩き出しても、ある意味では想定内と言える。しかし……情報ではただの田舎村出身の小娘が、それ以上の売り上げを叩き出しているとは。流石は上位の冒険者の間でも名が広まっているというべきか。
「トロメア様……やはり、行いますか?」
「そうだな……これ以上、エンゲージが売り上げを伸ばすようなら、アイラ・ステイトを拉致監禁する必要があるだろう。デノン、いつでも実行に移せるように準備を万端にしておいてくれ。我の指示があれば、即刻、拉致できるようにな」
「畏まりました、トロメア様……」
「うむ、期待しているぞ」
拉致監禁……一般的に言えば誘拐というやつだ。これには時間を掛けるわけにはいかない。時間を掛ければ目撃される可能性が増えるからな。以前は失敗しかけたこともある。まあ、今回の実行犯はデノンを始めとした強力なメンバーだ。これらに歯向かえる輩などほぼ居ないと言える。
出来れば通常の売り上げで負かしたいところではあったが……仕方ない。小娘が調子に乗った代償は非常に大きいということを分からせなければならないな。
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