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125話 エンゲージにて 3


「カエサル殿。申し訳ないがあなたとアイラ殿では、顧客以上の関係は難しいでしょう」


「む……あんたは確か、伯爵令息のライハット・クレスタだったな?」


 ライハットさんの言葉により、一触即発のムードになってしまった。カエサルさんもライハットさんを睨んでいる。


「俺は医者をやっている。アイラはその医者には必需品と言える、様々なアイテムが精製可能だ。大きな接点だと思うが?」


「それを言うなれば。冒険者も同じことが言えるでしょう。特に、才能という意味合いではシグルド殿はその方面ではとても強い」


「俺も医療の分野では負けなしだが……なるほど、あの男が居たか」


 シグルドさんの名前を出されると、一定の納得をしているカエサルさんだった。カエサルさんにシグルドさんか……それからライハットさんもなのかな? 私の意見は完全に無視されているように感じられるけど……。


「モテモテじゃねぇか、アイラちゃん。悪い気分でもないだろ?」


「そ、それはまあ……て、何を言わせるんですか!」


「ははははっ、素直になった方がいいぜ? 人間は素直でナンボなんだからな」


 レッグさんまで勝手なことを言っている……まあ、別に不快な思いはしてないけどさ。


「やるわね、アイラ。両手に花どころの話じゃないんじゃない?」


「シスマまで……しかもそれ、使い方間違ってない?」


 両手に花っていう言葉は、普通は男性が二人の女性に言い寄られている時に使うものだと思うけど。まあ、シスマが言いたいことは理解できた。


 と、そんな時……新たなお客さんが現れたようだ。その人物は……。



「あれ……? お邪魔だった、かな?」


「クリフト様!」


 いつもの二枚目な出で立ち……に比べると、やや衰弱している様子だったけれど、紛れもなくクリフト様が護衛の兵士達を連れて、私の店にやってきた。久しぶりに見るその姿は、エコリク大森林の調査が無事に終了したことを物語っているようだった。


「アイラ、久しぶりだね」


「はい! お久しぶりです! エコリク大森林の調査は終了したんですか?」


「ああ。シグルド殿や他の冒険者にかなり助けられたが、無事終わったよ」


「そうですか……」


 グリフォンという凶悪魔獣の探索と討伐。その指揮を行っていたのが、クリフト様になる。精鋭の兵士達を動員しているとは聞いていたけれど、かなり大変だったんじゃないだろうか。


「クリフト様、寝てないんですか?」


「いや……一応、睡眠は取れたさ。ただまあ、今回の調査では合計で10体以上のグリフォンが発見されたからな。かなりハードではあった」


「10体……以上?」


 一体でも倒すのにあれだけの労力が掛かったのに、それが10体以上も……。聞いただけでも、混乱しそうだった。


「正直、シグルド殿の協力と君のアイテム精製の助力がなければ、途中でアイテムが尽きとても最後までは調査出来なかっただろう。アイラには感謝しかできないよ」


「いえ、そんな……クリフト様、お疲れ様でした」


「ありがとう、アイラ。しかし、今回の真の功労者はシグルド殿だろう。彼がまた、この店に来た時には労いの言葉を掛けてやってほしい」


「畏まりました……というより、今日は来てないんですか?」


「みたいだな。彼も忙しいんだろう」


 というよりも、クリフト様と一緒に行動するわけもないか。また、お店に来てくれた時にでも話してみようかな。ところで……さっきから、レッグさん達の様子がおかしいような気がする。


「ほほう、本命のご登場ってわけだな」


「流石はクリフト王子殿下……一気にアイラ殿の気持ちを持っていきましたね」


「アイラの本命はクリフト王子殿下か……なるほど」


 レッグさんもライハットさんもカエサルさんも、各々好き勝手言っているようだった。


「どういうことだ……? アイラ?」


「えっと……あんまり気にしない方が良いかもです……」


 私はため息を吐きながら、クリフト様に話しかけた。私の恋人話については、流石にクリフト様が現れてからは下火になり、その後は完全に消え去った。まったく……皆、どれだけ恋話に飢えてるのよ……。


 私はそんな風に呆れながらも、彼らとの束の間の会話を楽しんでいた。

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