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118話 大部隊 1

(クリフト王子殿下視点)


「クリフト王子殿下! 野営の準備は完了いたしました!」


「ご苦労だった。では早速、明日からの調査に備えて休むんだ。お前たちの働きは周辺の村々の安全に直接つながるからな。寝不足で魔物にでも襲われたら洒落にならないぞ?」


 アイラの協力もあり、十分なアイテム類の蓄えが完了して2週間ほどが経過していた。私はその間にエコリク大森林へ向かう大部隊の最終チェックをし議会に報告、本日いよいよ到着したというわけだ。時刻は既に夕刻過ぎ……暗くなり始めている。


「ありがとうございます、王子殿下! それではお言葉に甘えまして、準備が完了次第、休ませていただきます」


「ああ、明日は忙しくなるだろう。しっかり、休んでくれ」


「承知いたしました!」


 途中経過の報告に来た兵士は敬礼をしてそのまま去って行った。野営の準備は完了し、各々が食事の準備を進めているようだ。それらを食したら、早めの就寝となるだろう。明日は大部隊で、広大なエコリク大森林の索敵になるからな。


 私も早めに休んだ方が良いだろう。指揮官が寝不足では洒落にならないからな。と、そんなことを考えていると、私の前に一人の人物が現れた。



「王子殿下、か」


「シグルド殿……」


 最強冒険者の一角とも言われているシグルド殿だ。たまたま、通りかかっただけか。せっかくなので、彼の参戦について礼を言っておくことにした。



「今回、有名冒険者である貴殿に参加していただいたのは非常に助かる。なんと礼を言ったらいいのか、分からないくらいだ。なにせ、相手はグリフォンだからな」


 居るかどうかは不明だが、複数体発見される可能性もある。その中での戦いは非常に困難を極めるだろう……いくらアイラのアイテム類が優秀だとしても。その為、シグルド殿の参加は非常に大きな助けとなっていた。


「別に俺だけじゃないだろう? 冒険者の参戦は。今回の戦いで名声を上げようとしている者は多いようだ」


 確かに、他の冒険者たちも参戦している。ランキング11位のチーム「アハト」のメンバーや、9位のチームである「ワルプルギス」など……有名な冒険者はシグルド殿だけではなかった。しかし、単独での参戦は彼だけだ。その事実が、他の冒険者とは一線を画していた。


「単独で今回の危険な任務に応募する度量……流石としか言いようがないな」


「俺は王子殿下とは違い、国民のことなんざ特に考えてないからな。あくまでも自分の為だ、自らの上限を知っておきたいという願望だけで動いている」


「上限を知りたい……か。アイラも同じことを言っていたな」


 私は無意識にアイラとシグルド殿を重ねて見てしまっていた。シグルド殿も珍しく目を丸くしている。


「なぜそこで、アイラ・ステイトの名前が出て来るんだ……?」


「いや、なんでもないさ……」


 まさか、嫉妬の類いだったとは言えない。嫉妬という程ではないのは確かなのだが、共有する感覚を持つ者同士というのは惹かれ合うと言われている世の中だ。そう意味ではアイラとシグルド殿はジャンルこそ違えど、同じ悩みを持つ者同士……私はそこに、嫉妬心というものを抱いていたのだろう。


「どうでもいいが、俺も早めに休むとするか。明日はグリフォン討伐だからな」


「存在するかどうかは不明だがな」


「それでは肩透かしもいいところだが……まあ、いいだろう」


「……」


 シグルド・バーゼルか……グリフォン討伐が任務となっても、全く狼狽えている様子がない。私もライハットたちと共に鍛えている為、一般の兵士よりは強いが、それでもこの男の前では何秒持つのか分からないレベルだろう。下手をすると最初の一撃でやられてしまうほどである。


 私はずっと隠し通していた嫉妬心を今、はっきりと自覚してしまった……。それを自覚した瞬間、焦りが全身を駆け巡ってしまう。アイラと共に、人生を歩んでいきたい……この理想を実現する為の足枷。私の脚にはそれが深く絡みついているような気がしていた。

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