116話 偽物 2
「では認めるのだね? あの店……オイゲン商会の直営店でグリフォンの翼を購入したという事実を」
「ああ、確かにその通りだ……」
ネプトさんに見事に倒された冒険者の二人は、観念したのか、素直に事実を話し始めていた。現在、私達は桜庭亭に戻っている。アンバーとオリバの二人には休める部屋の提供が必要とのことで、ネプトさんが自腹で彼らの宿代を出したという具合。
自分を負かした相手が温情をかけてくれている……と、映っているのかどうかは分からないけれど、現在の状況でアンバーとオリバの二人に話さないという選択肢はないようだった。この辺りもネプトさんは計算済みな気がしてならない。決して、脅して言わせてるわけじゃないことをアピールできるようにしてるのかしら?
「……なぜ、そのような真似を?」
シスマとアンジェリーナさんとも合流しているけれど、意外にもアンジェリーナさんが口を開いた。私は最初誰が話しているのか分からなかったけれど。
「決まってるだろ、冒険者ギルドからの報酬を貰う為だよ。グリフォンの翼は高く売れるからな……それに、冒険者としてのポイント加算も大きいだろ。あんたらなら分かるはずじゃねぇか?」
「確かに、私達も以前にグリフォンを討伐した経験はあるがね」
「いくらくらいで売れるんですか?」
そういえば、カミーユたちは以前のグリフォンの死体を回収していたはず。いくらで売れたんだろう?
「その時の状況によって様々ではあるね。損傷が激しいと、防具などへの素材として使いにくいため価値は下がる。逆に損傷があまりない場合は……翼だけでも5万スレイブ以上になるだろうね」
状態の良いことを前提としてもなかなかの金額だ。果たして、ほとんどの部位を状態よく残したら、グリフォン1体でいくら稼げるんだろう。
「5万スレイブ……一般家庭の5か月分くらいの額ですよね」
「まあ、そういう見方も可能だね」
しまった、ついつい商売人としての勘定が出てしまった気がする。少し、ネプトさんが引いているような。
「アイラ、しっかり計算してるわね……」
「し、シスマ? な、なんのことかしら? お、おほほほほ……!」
シスマの呆れた視線が痛い……私は咄嗟に笑って誤魔化したけど、全然、誤魔化しきれていなかった。でも……5万スレイブもする翼なら、一体いくらで買ったのかしら? それ以上の大金を出したのだとしたら、全く意味がないし。
「この翼はいくらだったんだい?」
「1万スレイブもしたんだよ。俺たち弱小冒険者からしたら、かなりの大金だぜ?」
1万スレイブを出せる冒険者が弱小なのかは置いておいて、腑に落ちなかった。
「なんだか、おかしくないですか?」
「アイラ君もそう思うかね」
「はい……」
もし、この綺麗な状態のグリフォンの翼が5万スレイブで売れるなら、オイゲン商会はその価格でギルドなりに売ればいいわけで。わざわざ、1万スレイブにする意味合いが薄い。慈善事業をするとも思えないし。
「君たち二人は1万スレイブでグリフォンの翼を仕入れ、それを冒険者ギルドに5万スレイブ前後で売る手筈なわけだ」
「あ、ああ……一応はそうだったんだが……」
そこを私達に遮られたってわけね。でも、確実にアンバーとオリバの為にはならないし、今回のことで目を覚ましてほしいかな。同業者でもないし、知り合いというわけでもないけど、私はそんな風に思っていた。赤の他人だって同じ人間なんだから、心配することだってある。この二人はそんなに悪い人でもなさそうだし。
「確証はないんですけど、ネプトさん」
「なんだね、アイラ君?」
私は本当に確証はなかったけど、オディーリア様に聞いた話を彼にしてみることにした。
「その翼、偽物なんでは?」
「ふむ、やはりその疑問に辿り着くか……」
「ば、バカな……!? そんなわけが……!」
ネプトさんもある程度予想はしているみたいだった。アンバーとオリバの二人は驚いている様子だったけど、状況を冷静に考えるなら、この翼が本物なはずはない。私も自分の店を経営しているだけあって、仕入れと儲けには詳しくなってきた。
その嗅覚が単純に「偽物だ」と告げていたから……。
よろしければブクマや評価、感想やレビューなどいただければと嬉しいです。




