113話 怪しい2階 2
「おかしい……」
オイゲン商会直営店の怪しい2階。その秘密に迫ろうと、2階を利用した冒険者を捕まえる……もとい、話しを聞く作戦だ。内容的には単純で、お客さんとして直営店で買い物をしつつ、2階へと上がり下りて来る人に話を聞くものだった。
直営店が新規開店して3日……それは決行されていた。
でも、おかしい……そう、おかしいのだ。ネプトさんも唸るくらいにはおかしいことがある。
「誰も下りて来ませんね……」
変装するのもおかしいので、私は単純に街を歩く時の服を選びながら様子を伺っていたのだけど。階段を上って行く、特別なお客さんの姿はチラホラあった。でも、誰もその階段からは下りて来ない。まるで、吸い込まれたまま粉々になったかのような不思議さだ。
「怪しい2階というよりは、不思議な2階って感じかしら?」
「そうよね……なんで下りて来ないんだろう? なにか会議でもやってるとか?」
シスマも不思議そうに2階を見つめている。私は会議と言いながら、ランキングトップの人達で行われるギルドでの会議を連想していた。ちょうど、怪しい階段を上り、上に行っているのも冒険者達だからだ。カミーユやサイフォスさんクラスの人達は居ないみたいだけど。ランキングで言えば、もっと下の人達かな?
「……」
私達はこの前に集合した4人で来ているけれど、アンジェリーナさんは無言で私と同じく服を選びながら2階への注視は最大限にしている模様。といより、この人だけ殺気を纏っているような気がする……。
「あの、アンジェリーナさん……?」
「……なに?」
反応がやや鈍いけど、私が話しかけるとちゃんと応えてくれる。
「なんだか、戦闘態勢になっている気がするんですが、気のせいでしょうか?」
「……あなたやシスマを守る為」
「あ、そうなんですか……あ、ありがとうございます……」
「……ん」
気にするな、という手振りをしてくれた。殺気の正体は私やシスマの護衛にあったわけか……五芒星の守りもあるけれど、アンジェリーナさんがそのような気配りをしてくれている方が、より安心できるしね。
「多分もう、2階に上がってある程度時間が経った者は、そこには居ないだろうね」
そんな時、ネプトさんがよく分からないことを言いだした。私はすぐに質問してみる。
「どういうことですか? ネプトさん? あの場に居ないって……」
「別の出入り口から出ている可能性があるということだよ。おそらくは裏口のような……分かりにくいところに出る、隠し扉のようなものがあるのだろうね」
なるほど……そう考えると合点がいく。でも、それなら2階へ行った人達はますます怪しいことをしているということになるけど……。
「私達が見るべき場所はここではなかったようだね。念のため、アンジェリーナとシスマ君は此処に残っていて貰えるかい? 私とアイラ君で別の出口を探してみようかね」
「……了解した、気を付けて」
「うむ、アンジェリーナもね」
「アイラも気を付けてね」
「うん、シスマもね。大丈夫だとは思うけど」
私達は軽く言葉を交わすと、二手に別れることにした。私とシスマは戦闘経験なんてないけど、隣に居てくれるのは冒険者ランキング1位の人達。これほど頼れる存在もないと言える程だ。
「それでは、探そうかね……どちらの方角から行くか……」
「悩むところですね……」
私とネプトさんは店を出て、周囲を観察し始める。流石にそんな入り口に近いところに秘密の出口があるわけがない。ということは裏手が怪しいかな? 私達二人は直営店の裏手に回ってみることにした。
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