110話 オイゲン商会の出店 3
次の日、オイゲン商会の直営店がいよいよ新規オープンした。キースファミリーの店と同じ通りにあり、距離で言うと200メートルも離れていない。古い建物を改装したのか、1~2階部分がお店として使われているようだ。
「私やキース姉弟の個人店と比べるのは変ですけど……大きいですね」
「流石は大規模商会の直営店といったところだね」
「従業員の数からして、既に規模が違うわ……」
新規開店というだけあってか、一般のお客さん達が朝から買い物に来ている。それらに応対する従業員の数は私のところの軽く数倍は居た。衣類や日用雑貨なんかも置いているので、薬屋という印象は薄いわね。アイテム屋……といった方が正しいかな?
錬金術士の私としてはやっぱり、ポーション系アイテムの品揃えが気になってしまう。私は本来なら、オイゲン商会が怪しいと聞いていたので、こちらに様子見に来ているはずなんだけれど、普通のショッピングのような感覚で楽しみ始めていた。
「……アイラ、楽しんでいるでしょ?」
「えっ? あ、あははははは……!」
一応は敵情視察なはず。シスマにはしっかりと突っ込まれました。
「だ、だってしょうがないでしょ。私もほら、錬金術士なんだしさ」
「気持ちは分かるけれど、今日はあまり目立たない方がいいんじゃない?」
「やっぱり、そうかな?」
「これだけお客さんが居れば大丈夫かもしれないけれど、どこに行くつもりなの?」
「回復アイテムどういうの置いてあるのかなって思ってさ」
オイゲン商会が危険とはいっても、まだ何かをされたわけでもない。回復アイテムの品揃えを確かめたいという欲求には勝てなかった。その工程は必要なものだろうし。
「どのみち、品揃えを確認するためにやって来たのだから、構わないんじゃないかね?」
「あ、ネプトさんもそう思いますよね?」
「うむ、そうだね。さて……薬関係は、あの辺りかな?」
流石ネプトさんは話が分かる! 私はウキウキした気持ちで薬関係が並んだ売り場に行った。
「ふむふむ、ほお……これは」
「これは……」
種類は……ざっと見たところ、30種類は超えているかな? 上級回復薬や毒消し薬、風邪薬などのアイテムが並んでいる。ネプトさんやアンジェリーナさん、シスマもアイテムの品揃えには、それぞれの感想を持ったようだった。
「アイラ君から見たら、この品揃えはどうなのかね?」
ネプトさんは敢えて質問をしたのだと思う。私の店は前に見て、品揃えは知っているはずだから。
「そうですね……なかなか凄い方だと思います。種類で言えば、私のお店の方が豊富ではありますが、1つ1つの個数では負けているので」
まあ、個数で負けるのは仕方ない。オイゲン商会は組織で動いているはずだし。でも、この店にもエリクサーや蘇生薬といったアイテムは売っていないみたいね……。私は密かにそれを期待していたのだけれど、徒労に終わってしまったかもしれない。
と、そんなことを考えていると、見知った顔が奥の階段を下りて来た。トロメア・オイゲン会長だ。
「おや……? 何名かの冒険者と一緒に居るようだね」
「本当ですね」
私のお店にも来てくれていた冒険者の人と何かを話しているようだ。内容は聞こえないけれど、私にはとても怪しいことのように見えて仕方がなかった……。
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