108話 オイゲン商会の出店 1
「我はトロメア・オイゲン。直営店をこの大通りに出す予定だ」
大通りに面しているキースファミリー。その目の前で堂々と宣言している人物こそが、トロメア・オイゲン会長本人……37歳という年齢が若いのかどうかはともかく、19歳のローランドと口喧嘩をしている風に見えるのはどうかと思うわ。
「あれ? アイラやん、奇遇やな」
口喧嘩をしている二人の近くに立っていたエミリーが私の存在に気付いて手を振って来た。オイゲン会長も私の方向を見た。そして、怪しい笑みを一つ。
「ほう、アイラというのは……そこの「エンゲージ」という店の店主のことを指しているのかな?」
「ええっと、まあそうですけど……」
否定しても良かったんだけど、どうせバレるだろうと思い、私は頷いた。オイゲン会長はますます、怪しい笑みを浮かべ始める。そして、桜庭亭の前に立ててある看板に目を通し始めた。
「三大秘薬とエリキシル剤まで売っているのか……これは素晴らしい。ぜひ、我が傘下に入ってもらいたいくらいだ」
「……」
特に勧誘しているつもりはないんだろうけど、いきなりの「傘下」という発言に私は無言になってしまう。不用意に関わらない方がいいかもしれない。
「無駄話は好まないのか? まあ、いいだろう。直営店がオープンする頃にでもまた、顔を出すとしようか。それではな」
オイゲン会長はそこまで話し終えると、私とキース姉弟の顔を交互に見て去って行った。
「なんなんだよ、あいつは? 俺たちに喧嘩でも売りに来たのか?」
「まあ、宣戦布告っていう意味合いでなら間違ってはなさそうやけどな……」
「宣戦布告、ね……」
オイゲン商会の直営店が大通りに面した場所で開かれるんだとしたなら、確実にお店としてライバル店になるはず。客層が全く違えば別だけれど、そういうことはないんだろうし。それだけでも、警戒しておく必要があった。まあ、私のやることは今までと変わらないけどね。
その日は特に何もなく終了したけど、オイゲン会長が言っていた直営店が出店されたのは、2週間後だった。
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「失礼するのだよ、アイラ君」
「あれ? ネプトさんじゃないですか、それにアンジェリーナさんも……」
「……」
2週間振りの再会だけど、相変わらず無言で頷くだけのアンジェリーナさん。冷たい印象というよりは、寡黙な印象の方が強い。もしかしたら、口下手なのかもしれないけれど。二人は私の店が終了したのを見計らって現れている。
「結構、久しぶりですよね? 2週間ぶり……くらいな気がします」
「そうだね、もうそんなになるか。色々とオイゲン商会について調査をしていたら、すっかり足を運ぶのを忘れていて、済まなかったのだよ」
「いえいえ、お気になさらず。仕事優先なのは当然だと思いますし」
「そう言って貰えて助かるのだよ。さて、オイゲン商会がいよいよ、直営店を出したね」
「そうですね……」
やっぱり、本題はそっちだったか。キースファミリーの店の近くに大きな建物が建設され、それがオイゲン商会の直営店となっていた。確か、開店は明日からだったかな?
「明日開店のようだが、よければ一緒に見に行かないかね? アイラ君を誘う為にやって来たのだが……」
「なるほど、そうだったんですね。私もオイゲン商会の直営店の品揃えとか気になりますので、ご一緒させてください」
「わかった、よろしく頼むのだね」
「はい、こちらこそ」
イノセントの二人と一緒なら、何かあっても大丈夫だろうしかなり心強いわ。もちろん、五芒星の守りもあるしね。そうやって楽観的に考えていると、調合室から出て来る人物が一人。あ、そういえば……。
「姉さん……?」
今日はシスマが調合の手伝いに来てくれていた。訪ねて来たイノセントのメンバーである、アンジェリーナさんと彼女は鉢合わせた。二人が姉妹だったことを、今まで忘れていたわ……。
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