98.とある人の現状
「はぁ? お前が勝手に妊娠したんだろ? 俺は関係ぇねぇ。二度と連絡してくるな!」
はぁ、昼間からイライラする。
電話を終えた画面には、11時15分。一応単位の為に嫌々大学に向かってる道中で、更に胸糞悪い声。
もはや俺のテンションは駄々下がりだった。
セフレ5号から久しぶりに連絡来たもんだから、たかってやろうと思ったのによ。何が妊娠だ。何勝手にそんな事してんだ。えっと、確かなんて名前だったか……二木だったか? 金は持ってたから5号にしといたけど、さよならだな?
「あぁ、イライラするわ。マジ今日はツイてねぇ……よっ!」
ドンッ
この自販機邪魔なんだよ。ん?
メガネオタクに、キモいババがこっち見てやがる。
「なぁに見てんだこら?」
「ひっ」
「……」
ったく。ん? いや待てよ? 今日は臨時収入があるじゃねぇか。確か英治達、昨日アルバイト行ったんだよな? じゃあ、朝に事務所行って取り分もらってるはず……
♪~♪♪~
おっ、なんて思ってたらナイスタイミング。えっと、英治からだな?
「お~、英治! 昨日の取り分どう……」
「よぉぉ如月ぃぃ」
えっ、この声……しっ……下北さん?
「あっ、下北さんですか? どうしてかずの……」
「やってくれたのぉ」
「やっ、やってくれた?」
「こいつらしくじりやがってよぉ、葛霧、鷺嶋、鏑木に柳沼……みんな今事務所居るんだわ」
はっ? しくじった? 事務所? ちょい待て、モノを渡して金受け取る簡単なアルバイトだって、アンタラが言ったんじゃ……
「えっ? やだなぁ下北さん。そんな冗談。だって簡単な」
「モッ、モノ渡してカネ受け取るだけって言ってたじゃないですか! なのに銃持ったウッ!!!」
「えっ、英治!?」
「うっさいのぉ葛霧。今わしが如月と話してるんじゃねぇか。なぁ如月?」
まっ、マジか……
「いや……その……」
「まぁいいわ。こいつらよぉブツだけ渡して、金受け取れなくなぁ。まんまと逃げられた訳よ? こっちは大損な訳よ? 言ってる意味分かるか?」
「はっ、はい」
「おぉ流石、じゃあ誰のせいかも分かるな? こっちは大損。その責任はどうするか……お前なら分かるな?」
ヤバい……ヤバい……
「それじゃあ、すぐ事務所来てくれよ。じゃあな」
プープープー
電話が切れた瞬間。額から汗が流れる。
今の電話でおおよその見当はついた。そして英治達がどうなっているのかすらも。
やべぇやべぇ。嘘だろ? そもそも簡単な取引の手伝いだって言ってたじゃねぇか? だから、英治達も一緒に行って……お小遣い稼ぎだってアイツ等も言ってたじゃねぇか!!
なのに……くそっ!
「どうする。大学なんて行ってられねぇ、ましてや事務所に行ったらやられる」
そっ、そうだ。一旦東京離れよう。大体、アイツには俺が大学生だなんて一言も言ってねぇ。
……いや待て、英治達ゲロったらどうする? くそっ、今はそんなのどうでもいい。そうだ、ほとぼりが冷めるまで北か南か……どっかに居ればいい。親のクレカあれば金は大丈夫だ。
その内連絡して、適当に理由をつければ……
「あっ、いた……皇次……」
「あぁ? って!」
数秒でも急いでこの場を離れなきゃいけない非常事態に、不意に聞こえた女の声。思わず振り返ると、そこに居たのはあのクソアマだった。
「あぁ、なんだセフ……あんたか」
「ねぇ……ひどくない? さっきの電話」
あぁ、めんどくせぇ。
「なにがだよ」
「あんたが付けたくないって言ってたから、付けなかった。将来を見据えてそういう覚悟があるから、いいだろ? って言ってたじゃんか」
あぁ、ムカつく。
「んな事言った覚えはねぇよ」
「はぁ? ホテル代だって全部アタシ持ちじゃん。さっきの言葉信じてたからアンタの望む事、さんざんヤッてきたのにっ!」
あぁ……
「ねぇ、さっきの電話冗談だったんでしょ? ねぇ、アタシとこの子の面倒を……」
うぜぇ!
「うるせぇよ! セフレ5号!」
「えっ……」
「ただのセフレが粋がんじゃねえ。てか、むしろ俺みたいなイケメンのDNA孕んだ事に感謝しやがれ!」
「嘘……でしょ? 冗談……でしょ?」
「あぁ? んな訳ねぇだろ。じゃあな? 俺の奉仕活動は終わり! もう連絡してくんな!」
よし。これでいい。どうせこれからセフレ1号から7号まで会う機会もねぇ。本当の事言っても大丈夫だろう。それにこいつの顔も二度と見たくないわ。
じゃあとりあえず、駅だな。
俺は一頻り5号にぶちまけると、ここを離れるために駅への方へと足を進める。とにかく急いでこの場を離れる。とにかくどこか遠くへ……その一瞬だった。
……ついさっきまでは。
グサッ
「はっ?」
それは一瞬の事だった。
背中に感じた痛み。
かと思うと、燃えるような熱さが……背中を覆う。
なっ、なんだ……
状況が読み込めないまま、俺は視線を後ろに向けた。
するとどうだろう、そこにはセフレ5号が立っている……あるものを握って。
「ふふっははっ……しょうがないじゃない。こうするしかないじゃない……」
5号はそう言いながら、笑みを浮かべている。
ただその目は……狂気をはらんでいた。
「えっ……熱い……痛い……熱い……」
なんだこれ……なんで……赤い……
「こっ、こうでもしないと……ねぇ? 一緒に……」
どうして……どうして……
「居て……くれないじゃない皇次くぅん!!!!
こう……なっ……た
ドサッ
次話も宜しくお願いします<(_ _)>




