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97.身辺調査及び警護はお任せください!

 



「次、スクエアパス行くよ?」

「「はーい」」


 体育館に響く声にバッシュの擦れる音。絶え間ないドリブルと光る汗。そんな光景を横目に、私はマネージャーとしての仕事を学んでいる。

 自分自身、今まで運動部に所属した事はない。ただ、昔から不思議とどんな競技であれ人が必死になっている姿を見るのが好きだった。


 何かに必死になれる。努力ができる。

 そんなひた向きな姿勢が輝いて見えて……自分に力をくれる気がする。


 そしてそんな場に、こうしていられるのはある意味幸運だった。

 入学式で隣だったつなちゃんが、偶然にも太陽先輩も居るバスケサークルに入る予定であり、マネージャーに誘ってくれた。


 一石二鳥どころか、一石五鳥ぐらいのミラクル。それに輪を掛けるかのように、


「よっ! あぁ外したぁ」

「つなちゃんファイト~!」

「頑張るよっ! りこっち!」


 ここに来て最初に出来た友達の鯉野繋ちゃん。出会ってまだ間もないけど……すごく波長が合う。


 ……ふふっ、ここまでは完璧。あとはどうやって太陽先輩を射止……


「じゃあ、ラストダッシュやるぞー!」

「ダッシュか。あっ、日城?」

「はっ、はい! 太陽先輩!」


「ダッシュの時このビブス邪魔だからさ? 頼むよっ!」

「りょっ、了解です!」


 はっ……太陽先輩が来てたビブス……つまり先輩の汗が……うっ、ちょっとだけ匂いを……ってダメダメ! 我慢しなさい日城凛恋!


 けど……


 我慢できるかなぁぁぁ!!!




 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




「じゃあ明日ね~」

「は~い」


 ふぅ、初日から色々とヤバかったぁ。


 ある意味理性との戦いとなったマネージャー初日。正直想像以上の仕事量に驚きはしたものの、それを上回る満足感に疲労は感じなかった。


「ふふっ。やっぱり先輩格好良いなぁ。汗が滴る姿も出し、たまにシャツから見える腹筋なんて……ジュルリ」


 なんて眼福の光景を思い出し、思わず零れそうな涎を間一髪で受け止めながらも……私の足は次の目的地へと向かっていた。


 ふぅ、ご褒美の時間はここまで。ここからは真剣にいかないと。マネージャーが表の仕事なら、こっちは裏の仕事かな? さてさて、見えてきましたカフェ&レストランゴースト。あの先輩の天敵3人がバイトしているという、差し詰め魔王城と言った所かな? 

 とりあえず、今日は内情視察と行きましょうか。


 私は1つ息を吐くと、足早に目的地へと向かう。

 大学から徒歩で数分。思いの他早くそれは目の前に現れた。

 見た目は一般的なファミレス調。外壁等は綺麗にペンキが塗られているあたり、管理者はまともな部類なのだろう。

 こうして周辺を観察しながら、私はとうとう目的地の入り口前へと到着した。


 まぁ、先輩がバイトしてた位だし雰囲気は良いんだろうけど……目的はその中で働いてる人達。

 ……いざ。


 ウィーン


「いらっしゃいませー1名様でしょう……か」


 って! いきなり澄川っ?


 それは何とも言い難い偶然。可能性としてはあり得たかもしれないけど、実際に遭遇すると驚きは隠せなかった。

 ただ、今日の私は一味違う。一瞬にしてこの状況を好機と捉えられる余裕がある。


「あっ、1人です。あれ? こんにちはっ☆澄川先輩! 案内お願いしますね?」

「こっ、こちらにどうぞ……」


 こうして幸先良くターゲットを発見できた私は、澄川の後を付いていく。案内されたのは奥の角席。幸か不幸か店内一帯を見渡せる場所に、今だけは澄川に感謝したい。


 ふふっ、なんか幸先良い感じ。じゃあとりあえず注文して、色々観察しよっと。呼び出しボタンポチッとな。


 その瞬間、店内に響くコール音。すぐさま聞こえる、


「はーい」


 店員さんの声。この辺りは東京も青森も関係ないのだと、しみじみ感じていると……こちらに向かって来る一人の店員さんが目に入った。


 昼時ともあって結構人が多いにも関わらず、早速の反応。店の方針というかマニュアルもかなりまともなんだな……って、あれ? あの店員さん……


 それはまたしても偶然にしては出来すぎた展開だった。なにしろ今回は内情視察が目的。3人の内誰かに会えれば良いと思っていただけに、入店早々に澄川が居ただけでも御の字。なのに、まさかこの人物にも会えるとは思いもしなかった。


 まさか……あなたも今日バイトだったの? 


「失礼します。ご注文をお伺いしま……す」


 立花。


「あっ、立花さんっ☆ここでバイトしてるの? ふふっ、とりあえずブレンドコーヒーお願いしまーす」

「ブッ、ブレンドコーヒーですね。かしこまりました」


 立花は少し驚いた表情を見せたものの、マニュアル通りの動きで対応をする。けど澄川同様、私には少なからず意識をしているに違いない。


 これでますます内情が……


「澄川さん? オムライスお願い」

「はっ、はい」


 その時だった。何気に厨房方面から聞こえてきた……聞き覚えのある声。

 それを聞き漏らす事なんて出来なかった。なにせ私にとってもっとも印象深く……そして最も悪意のある声だったから。


「あと、ハンバーグも出来たからっ!」


 ……風杜。厨房で働いてるのか。てっきりホール係かと思ったけど……まぁいいや。本当に今日は良い日だ。なんせ、3人がシフトに入ってる日に来られたんだから。ふふっ、全員私が居るのに気が付いて……どんな感じなのかな? 

 徹底的に観察させてもらうよ?


「お待たせしました。ブレンドコーヒーです」

「あっ、ありがとうございます」


 ん? 立花じゃない。さすがに動揺でもしてるのかな? えっと名札を……店長? 能登……さん?

 あれ? この状況で店長さんと出会えたって事は……


「あっ、ここの店長さんですか?」

「はい。店長の能登と申します」


 今日の運の良さを考えるに……


「あっ、あの急に変な事お聞きしてもいいですか?」

「えぇ、なんでしょう?」


 ありえるかも……


「すいません。ここって今……」


 しれないっ!!


「バイトって募集してますか?」




次話も宜しくお願いします。

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