表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/149

95.熱、再熱

大変お待たせいたしました。

これからはちょくちょく更新できればと思いますので、宜しくお願い致します<(_ _)>

 



 部屋の窓から差し込む光。

 それを横目に感じながらも、私は椅子に座りながら枕に顔をうずめていた。


「うぅ……」


 思わず口から零れる声。ちなみに体調が悪いという訳じゃない。いえ? ある意味そうなのかもしれない。

 なぜなら風邪でも引いたのかのように、


 顔が熱ぃ!!


 尋常ではない火照りを感じていたから。

 けど、自分でもその原因ははっきりと分かっていた。というより、1つしか当てはまらない。

 昨日の自分が犯した失態。それに尽きる。


「はぁ……太陽君に変なとこ見られたぁ……」


 すずちゃんの頼まれ事に付き合ってくれた太陽君。それだけでも申し訳なくて、同時に嬉しい出来事だったんだ。現に尾行よりも、2人で居られる事にウキウキしてたし。

 それに本当ならすずちゃんに報告した後、お礼にご飯を……なんて考えていたのに、気が付いたら寝てて目の前には太陽君とすずちゃん。事の顛末聞いて、すぐに謝ったよ。


「もうっ、本当に私のバカっ」


 太陽君はいつも通り優しく接してくれたけど、家に帰ってから直ぐにストメで謝ったよ。

 おかげで何気ないやりとりのキッカケが出来たのは良かったものの、この不細工な顔に気絶というデバフを受けた顔を見られたのが恥ずかしくて仕方がない。そのダメージは想像以上で、旅館の手伝いやら何やらをしている時は薄れるものの、無意識の時間になった瞬間どこからともなく現れて……


「うぅ……」


 顔全体が熱くなる。


 いやぁ……絶対不細工だったよね? 太陽君優しいから何でもなかったかの用に振舞ってくれてるけど、内心ドン引きしてるんじゃない? 

 滅茶苦茶心配してくれてるけど、内心幻滅してるんじゃない?

 何気なくすずちゃんに昨日の話を聞いてみたけど、


『んー? 日南っち、心配そうに手を扇いでたけど。それに男子にしては珍しくハンカチ持ってんだねー』


 聞けば聞くほど、優しさが身に染みる結果。だからこそ、自分の顔面に対する申し訳なさが際立ってしまう。


「きゃー」


 思い出すだけで恥ずかしさが何度も蘇り、それをかき消すかのように顔を左右に振った時だった。

 カタッ


 その枕が何かに当たった音がした。

 すぐさま、枕から顔を上げて見ると……机の上に置いていたボックスが移動していることに気付く。


 あっ、危ない危ない。

 それは大事な物を入れている2段重ねのボックス。その多くが思い出のある品々で、小さい頃に真也ちゃんから貰ったお手紙や、父さん母さんから貰ったお守り、花那ちゃんが作ってくれた折り鶴なんかが入っていた。

 そんな大事な物に気が付かない自分にほどほど呆れつつ、少しだけ開いている引き出しをしまおうとした時だった。


「床に落ちなくて良かった……あれ?」


 その隙間から、ある物が私の目に入った。

 それはある意味久しぶりで……ある意味印象に残っている物。さすがに中学、高校に入ってからは忙しさも相まって手にする機会は減っていたけど、小学校の時は常に隣にあった。


「これ、懐かしいな」


 久しぶりに手に取ったそれは、なんら昔と変わらない姿をしてる。


「ゲームキッズ……スケルトンバージョン」


 ゲームキッズ。今でこそ様変わりしてしまった携帯用ゲーム機の点といってもいい代物だ。

 ただ、このゲームキッズに関しては特別家族の誰かが関係しているものではない。クリスマスプレゼントでもないし、誕生日プレゼントでもない。お兄ちゃんからのお下がりでもない。ましてや、自分の物でもなかった。

 ただ、見た瞬間にその記憶が蘇る位、思い出深い代物。


「電池……大丈夫かな?」


 充電式ではない仕様に年代を感じながらも、徐にスイッチを押してみるとやはり反応はない。とはいえ、必要なのは単三電池2本。幸いにも机の中にあったのは不幸中の幸いだった。

 思い出すかのように電池を交換し、もう1度スイッチを押すと赤いランプがつき……目の前には懐かしい画面が現れる。


「わぁ……懐かしいなぁ。ゲットモンスターレッドバージョン」


 それは野生のモンスターを捕まえ育ててバトルをしていくロールプレイングゲーム。更にレッド、グリーン、ブルーと3種類があり、出てくるモンスターが違うという斬新な発想で爆発的人気を博したシリーズ第1作品目。もちろん今でもその人気は留まる事を知らない。

 懐かしい画面にBGM。そんな状況にいつしか顔の火照りも忘れて……私はゲームキッズのボタンを押していた。


「ふふっ」


 思わず零れた笑み。それと同時に懐かしい記憶も蘇ってくる。


 あれは確か小学校1年の時だったかな? 家族で黒前に遊びに行ったんだよね? いつもは車なんだけど、その日は父さんがこれも経験だって言って電車で行こうって言って……行くだけでめちゃくちゃ楽しかったんだよ。

 それで黒前駅について、私はテンション上がりまくり。あちこちの店を指さしながらワクワクして、ショーウィンドウにかじりついてた。でもその行動が仇になったんだよね……そう迷子。


 気付いたら皆居なくて、周りを見渡しても人がすごくて、知らない場所で……一瞬で怖くなった。

 その時は人に声をかけるなんて出来なくて、あてもなく歩き回ってさ? どれくらい経った頃か分からないけど、1つの公園を見つけたんだ。


 ブランコ乗りながら、めちゃくちゃ泣いてたっけ。

 そんな時、男の子が声を掛けてくれたんだ。少しパーマのかかった髪型で、言葉が綺麗な男の子。当時はたまに旅館に来るお客さんの言葉が綺麗なのは理解してたけど、自分と同じくらいの年の子がいわゆる標準語を話してるのに違和感を感じて、それも記憶に残ってる一因だった。


 正直、どんな話をしたかまでは覚えてない。でも、私を笑わせようとしてくれた気がする。なのに私ったら、不安と初めて会った子に人見知り全開で……だいぶ失礼だったよね。

 そんなやり取りをしていた時だった。公園の入り口から女の人の声が聞こえたんだ。その声に男の子が気が付いて……


『あっ、姉ちゃん!』


 そうそう。その人は男の子のお姉さんで……男の子が色々と説明してくれたっけ。そしてお姉さんが一緒に交番まで付いて来てくれる事になったんだ。

 男の子は、お姉さんの家で待ってなって言われてさ? その時……いきなり渡してくれたんだよ。


『あっ、ちょっと待って。これやるからさ? もう泣くなよ? 可愛い顔が台無しだから』


 ……やばっ。今思い出すと子どもがいう言葉じゃなくない? いやまぁ、当時はいきなりゲームキッズ手渡された事の方にテンパって、全然気にしてなかったけどね。

 それで、そんないきなりの出来事におどおどしてると男の子のお姉さんが、


『いいのいいの。くれるって言うんだからね? もしかしてもう持ってる?』


 優しい声に首を横に振ったんだ。

 お姉さんもすごく優しかったな。聞いてるだけで安心する声で……美人さんだったのを覚えてる。


 そんなお姉さんと一緒に交番に。結局お姉さんは、お母さんたちが来るまでずっと一緒にいてくれた。そのうちに母さん達が来て、お姉さんにお礼言って……私はしこたま怒られたっけ? 

 それに家に着いてから、ゲームキッズ持ってるのが分かって、一悶着あったり……ふふっ。だからこそ、すごく記憶に残ってる子どもの頃の思い出。


 あっ、でも……


『それじゃあね?』


 そう言った男の子の笑顔……格好良かったな。なんか今までの不安が一気に消えて、呼吸が変になったの覚えてる。それにそんな男の子見て、


『うんっ』


 少し笑ってたかも。

 …………今思うと、あれってもしかして初恋かな? 言われてみれば、今まで異性に対して感じた事ない気持ちだった気がする。


「はぁ……甘酸っぱいなぁ。昔の私」


 なんて過去の思い出に花を咲かせつつ、私はゲームキッズの画面に目を向けた。そりゃ久しぶりに電源を入れたからには、当時のデータを見ずにはいられない。


「えっと、あぁ! 懐かしい。最初の街だよね? たぶん、五天王倒した後にセーブしたんだ。えっとなになに? 主人公がサトル。デフォルトの名前ね?」


 今では考えられない少し粗目の画面。ただ今は、それに夢中になっていた小学生時代に戻っている。

 そうそう、モンスターもいるんだけど、私男の子から貰った時にパーティーにいたモンスターを重点的に育ててたんだよね? しかも最後の五天王とチャンピオンに挑む時は、絶対その時のモンスターって決めた。えっとどれどれ?


「懐かしいー! えっと? そうそう! 最初からモンスターの名前じゃなくて違う名前だったんだよね? 最初は……カアサン? お母さんかぁ」


 一番上のモンスターの名前はカアサン。小さい頃にやりがちな、家族や友達の名前を付けるパターンだ。当然、当時の私は何の疑いもなくプレイしてたと思う。


「じゃあ次は、トウサン? やっぱりなぁ。それで次がキノネエ?」


 キノネエ? キノネさんって人? もしかしたらエってのは間違ってつけたのかな?


「えっと、四番目は……シノネエ?」


 その名前を見た瞬間、少しだけ感じる違和感。いくら小学生とはいえ、二回も名前を付け間違える? それもどちらもエをいう文字。


 キノネエ……シノネエ……

 それにこの2つの名前にはどこか聞き覚えがある気がした。ただ、それらを結びつけるのには到底無理がある話。けど、五番目のモンスターの名前を見た途端、そんな考えは一瞬で消え去った。


「キノネエ? シノネエ? えっと、ちなみに次のモンスターの名前は……タイヨウ?」


 タイヨウ、キノネエ、シノネエ……

 太陽、希乃ネエ、詩乃ネエ……


「太陽、希乃姉、詩乃姉……?」


 偶然としか思えなかった。ただ、偶然にしては出来過ぎていた。

 そんな1つの可能性が浮かんだ瞬間、私は徐にゲームキッズの電源を切って……ソフトを取り出す。小学生の頃ならやっているかもしれない。その行動の痕跡があればと思ったから。


 カセットを抜き取り、その裏面を見てみると……そこにはあった。間違いなく書かれていた。


 “たいよう” 


 という文字が。


「えっ……噓でしょ? 太陽ってもしかして……」




「太陽君だったりするのぉ!?」




不定期ながら更新できればと思っています<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=191455327&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ