51.盛り上がる3人、置いてけぼりの2人
本日も読んで頂きありがとうございます!
皆で花火を見上げた、あのめぶり祭りから数週間。しつこく残る暑さに、まだ扇風機は手放せないでいる。
ただ、それとは別に自分達の生活には着実に変化が訪れようとしていた。
その長さに最初は戸惑いを見せた夏休み。
けど、終わってみればバイトにサークルに男子会、そしてめぶり祭り。
そのどれもが楽しくて思い出に残る事ばかりだった。出来れば延長を……そう思いたくもなる休みがついに終わりを迎える。
そんな中、今日は前々から予定していた、俺の部屋に集まってのドンチャン騒ぎ。これで最後に楽しく夏休みを終えよう。そう思っていたんだけど……
「あっ、そういえばぁ日南君? バイト辞めちゃうってどう言う事なのぉー!?」
良い感じに盛り上がった所で、天女目が不意打ちの一言を口にして……一瞬にして陽気な気分は消し飛んだ。
「はぁ? そうなのか? 日南?」
まっ、まぁ話さなきゃいけないとは思ってたけど、今日まで言えなかったのは事実。特に天女目には言い辛かった。けど、その天女目からその事が出たという事は……店長から聞いたか? もしくはシフト見たか?
どっちにしろ、良いんだ。聞かれても良いと思ってたんだ……
「えーそうなのー? 日南っち?」
「そうなの?」
この2人がいなければなっ!
最初はいつも通りの男子会の予定だった。なのに鷹野の奴が気を遣う……って言う名のお節介な事をしてくれた。
『折角だし、千那と算用子も連れて来たぞ』
……ハッキリ言って衝撃だったね? 夏休み中に俺と天女目の家での男子会は結構やってたから、アパートの場所も分かってる。そう思って、時間とか決めた後は特に連絡らしい連絡もしてなかった。
けどさ? まさか2人連れて来るとは思わないだろ?
『まぁ最後のドンチャン騒ぎ。多い方が良いと思ってな?』
『こんばんは、日南君』
『やっほー日南っちー』
言っちゃあれだけど、これでアパートも部屋もバレたぞ? 宮原さんですら部屋までは知らなかったぞ?
しかも部屋の前まで来て楽しそうな2人を追い払う訳にもいかないし。そりゃ中に入れたよ。澄川が居ないだけマシだと思ってさ? もう割り切って楽しんでたよ。
なのに、よりによって天女目……ここでそれを言うか?
「えっ、あぁ……」
これはマズイ。何がマズイか。バイトを辞める理由をちゃんと話すべきかどうかだ。
宮原さんには澄川や立花との関係を話したのは話した。けど、バイト辞める事とその理由については言ってない。
ただ、宮原さんと話した時の様に……もう誰にも嘘は吐きたくない。そんな気持ちがある。
下手な嘘を言うのが正しいのか。いや? むしろ宮原さんには見抜かれそうな気がしてならない。
澄川も立花もゴーストでバイトしてるのは知ってるし、前に俺が話した事を結びつけて…………あり得る。底知れぬ勘の良さを持っていそうな宮原さんならあり得る。
そうなるとその嘘は完全にバレバレになってしまう訳で……けど、そうなると澄川と立花の事を言う? いやいや、鷹野や算用子さんはまだしも、天女目はバイト続けるんだぞ? そんな話を聞いて今まで通り気分良く働けるか? それこそ俺の都合に巻き込む形になる。
原因が澄川……これでも3人の澄川に対する見方が変わる。
原因が立花……鷹野と算用子さんも高校の後輩ってのはあるけど、1番被害を被るのは天女目だ。
一体どうする? どうする?
…………っ!
こっ、ここは……宮原さんに賭けるしかないか? 俺の心情を知っているはずの宮原さんに。だったら……
「なんでぇ? 理由はぁぁ?」
「そーそー」
「まさか、能登さんか? 能登さんにいじめられたのか!?」
「違うって。実はな……」
「苦手な人がいてさ?」
どうしても人間的に合わない人がいる。正直に話す!
「人間関係かー」
「はっ! やっぱり能登さんか……」
「店長……嘘だよねぇ?」
おいおい、なんか盛大に勘違いしてるぞ? 特に鷹野。お前普段能登店長に何言われてんだよ。まっ、まぁとにかくその誤解は解いて、
「いやいや、店長はあり得ないだろ? むしろ良くしてもらってる」
「じゃあ誰なんだよ?」
「そっ、そうだよぉ?」
あとは……
「ん? 何言ってんだよ。俺が個人名言ったら、天女目に申し訳ないって。天女目? お前は今のバイトの環境に不満とかないんだろ?」
「えっ? あっ、うん。皆優しいしぃ……」
「だろ? だったら俺がそいつの名前言って、そのせいで変に気負わせるのは嫌だからな? どれだけ意識しない様に努力しても、同じバイト先に居る以上無理だろ? だから言えないって」
「そりゃ言えてるかも」
「確かにねー」
「そっ、そうかもしれないけどぉ……」
あえて匿名にする。
俺にはどうしようもなく苦手な人がいる。けど天女目の為に名前は言えない。
少なくとも、個人を断定出来ないとなればある程度は今まで通り働けるだろう。
後は……宮原さん。出来ればその相手に気付かないで欲しい。そして気付いたとしても……それを口にはしないでくれ。
頼む……宮原さん。宮原千那。
「なるほど」
……なるほど? このあと何を言うつもり……
「だったらこの話はもう終わりにしよ?」
えっ?
「えぇ?」
「終わりってお前……」
「そうねー」
「うん? だってさ? 日南君はどうしても苦手な人がいるからバイトを辞める。それだけだよ? 私達が何を言っても、日南君の感じてる苦手意識は分からない。けど辞めるって決断したって事は、想像以上の苦しさだったんじゃないかな?」
宮原さん……
「たっ、確かに」
「うっ、うん……」
「だから、日南君が決めたなら、それが1番良い選択肢なんだよ? だったら私達が出来る事は??」
「でっ、出来る……」
「事ぉ?」
「いやいやー大体分かるっしょー?」
「流石、すずちゃんっ! そうっ! 今日という日を思いっ切り盛り上げて、日南君を楽しませるんだよっ! そうだな? バイトお疲れ様会ってのはどう?」
バッ、バイトお疲れ様会って……
「おい千那……そりゃネーミングセンスが……」
「なになに? なんか言った? 千太? 雰囲気台無し!」
「そうだよー? 空気読みなー」
「なっ……」
「あっ、そう言えば天女目君ゲーム持って来たんだよね?」
「うっ、うん! これ……」
「あー、これちょー面白いよねー」
「なら、千太は放っておいて……やろうやろう!」
「えっ。じゃ、じゃあセッティングするねぇ?」
「腕がなるねー」
「おっ、おい! お前ら……」
「ねっ? 日南君?」
「えっ?」
「一緒に……楽しんじゃお?」
……なんだろ? 宮原さんていっつも想像のはるか上の事するよなぁ。俺の苦手な人……いや? 人達の事分かってるのかもしれないし、分かってなくてもこんな行動してくれるのはありがたい。
それに、助けてもらったのは間違いないよな?
……また1つ借りが出来ちゃったな。
「そう……だね?」
「うんっ!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「おりゃ!」
「まだまだぁ!」
「あーまーいー」
「あっ、負けちゃった」
ははっ、楽しもうとは言ったけど、白熱し過ぎじゃね? 俺今回見学者だけど、思いのほか算用子さんが上手いのは驚いた。
……っと、あれ? 気付いたらお菓子とかジュースないな? まだこの3人の決着つかなそうだし……適当にコンビニ行ってくるか?
「あれ? どうかしたの? 日南君?」
あっ、宮原さん。この3人相手じゃ分が悪いよな。
「ん? あぁ、お菓子とかもないし、買い出し行こうかなって」
「あっ……確かに! じゃあ私も一緒に行くよ」
「えっ? 良いって、宮原さんはここ居て?」
「だってぇ、この3人の戦い1人で見てたって、暑苦しくて仕方ないよ」
……そっ、それは言えてる。だったら……
「分かる」
「でしょでしょ? だから、今の内に行っちゃぉ?」
ちょっとだけついて来てもらおうかな?
「……そうだね?」
「うんっ!」
「おーい、俺達買い出し行って来るぞ? 何か食べたいものは?」
「「「お任せっ!」」」
「ったく」
「ふふっ、集中してるねぇ」
「じゃあその間に……ちゃちゃっと行きますか?」
「はーい。了解っ!」
次話も宜しくお願い致しますm(_ _)m
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