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45.疼く男心

本日も読んで頂きありがとうございます!

今回も、のほほん回?

 



 めぶり祭り。

 それは江戸時代から夏を呼ぶ行事として行われてきた。

 市内、または近隣の各町会や有志会が、戦国時代や三国志の武将を模った人型や武者絵の描かれた山車燈籠を作って引いて街を練り歩く。

 そして太鼓と笛と摺鉦(すりがね)が奏でる囃子や掛け声はまさに壮観。一緒に行われる花火大会も相まって、この辺りじゃ結構有名らしい。それこそ国の重要無形民俗文化財に指定される位に。


「めぶり祭りはどこの町会でも大体1週間程度行われてぇ。期間中は自分の町会はもちろん、近隣の町会を回って、少しばかり気持ちという名の小銭をもらうみたい。この時期には玄関に小銭を用意しておくのが風物詩になっているんだってさぁ」

「なるほどな? サンキュー天女目」


 天女目の説明を聞きながら、俺達はその会場である更紗(さらさ)公園という場所に向かっていた。とはいっても、駅から出ると目の前に見える大きな道路。その先にあるらしく本当に一直線だ。その道路脇にはすでに沢山の見物客達が陣取っていて、その多さは、俺が青森に来て1番のモノ。これだけで、想像していた夏祭りとは違うのだと理解出来る。


「凄いねぇ」

「だな?」

「ははっ、だろ? てか、めぶり祭りの時が1番人集まるかもしれないな? あとマッケ市か?」


 ん? マッケ?


「マッケ……市?」

「あー石白市でやってるー、なんだろう? お買い得期間だっけー? 鷹野」

「そんな感じだな? 朝早くから店開店してさ? 大体3000円位の買い物すると、色んな物が入ってる段ボールやらクリアケースなんかがもらえるんだ。オマケでな? だからマッケ市」

「えぇ? 凄くお得じゃないぃ?」


 確かに……いや? そのもらえる物の量によらないか?


「見て見てぇ? 日南君?」


 って、調べるの早いな天女目。まぁ流石というか……どれどれ?

 ……っ! 嘘だろ? トイレットペーパーや箱ティッシュといった日用雑貨はもちろん、お菓子にジュース? いやいや一般的な段ボールにこれでもかって詰め込んでるじゃねぇか!

 下手したらこれだけでも1000円以上は……


「凄いな?」

「私もー結構来たりするもん。その日は全体的に色んな物安いしねー。黒前からもいっぱい来ると思うよー?」

「まぁ、毎年2月にやるから、天気によっては地獄だけどな? ははっ、でも良かったら来年来れば良いよ。石白にお金落としてくれ」

「いくいくぅー!」

「俺は検討するわ」


 なんて、地元のイベントやら何やらの話をしていると、目の前に沢山の山車の様な物が見えてて来た。

 遠目からでもその数は結構ある様に見える。そして近付くにつれて、その大きさを直に感じる。


「よっし、到着! どうせなら俺達の山車燈籠見せるよ」


 そう言いながら、山車同士の間を歩いて行く鷹野。その後を俺達はゆっくりついて行く。

 大体4メートル位だろうか? それこそその違いはあるにせよ、多くは同じ高さの様に見える。ただ、その題材は全てが違う。そして色使いも絵の作風も……だからこそ決して飽きる事がない。

 それに、山車の近くに居る大人達は殆どが鷹野の様な格好。勿論Tシャツにズボンの人も居るけど、ある意味正装なのかもしれない。


 これらが練り歩く。その光景は想像もつかないな……あっ。

 そんな沢山の山車を見回していた時だった、目の前に見た事のある姿を発見した。


「着いたぞ―」

「あっ、みんな―」


 それは、紛れもなく宮原さん。あとは……真也ちゃん?

 こうして山車の前に居た2人の前に行くと、ちょっとした挨拶が始まった。まぁ天女目は真也ちゃんと初めましてだもんな。


「あっ、真也ちゃん? 日南君は知ってるよね?」


 えぇ、大分知ってます。


「大学の友達の天女目君と澄川さんだよ?」

「初めまして。宮原真也と言います」


 ……ん? 気のせいか?


「天女目光と言いますぅ」

「すっ、澄川燈子です」

「ようこそめぶり祭りへ。楽しみましょうね?」


 なんか違うくね? 俺と話してる時と声のトーンが……


「やっほ、まやっち」

「寿々音さーん!」


 全然違うくないですか!?


「よっし、じゃあ女の子達は着替えに行こうか?」


 なんて理不尽さを感じていると、宮原さんはそう言って大きな段ボールを手に取る。


「着替え?」

「着替えぇ?」


 同じ様な反応をする天女目と澄川。その表情に疑問を覚えたのか、宮原さんは不思議そうに口を開いた。


「えっ? 皆もお祭り出るんでしょ?」


 えっ?


「マジか? 俺は祭り見物してもらうつもりで誘ったんだけど?」

「えっ? そうなの千太? 私てっきり……」


 おいおいどういうこった? 


 と言う事で、何やら宮原さんと鷹野の間で行き違いがあったみたいで……要は、鷹野は祭りを見物してもらおうと誘った。宮原さんは祭りに誘う=参加すると思ってたらしい。

 まぁ俺は、いやいや流石にいきなり参加は無理だろ? そう思っていたんだけど……


「えぇー、でも皆の衣装用意しちゃったよ?」

「まぁ今日は表彰式だし、大人数の方が盛り上がるけどさ?」

「私はー全然良いよ―? てか去年も出させてもらったし―」


 えっ? この流れ……


「日南君と天女目君、澄川さんもどうかなっ?」


 そうなりますよね?

 いや、そもそも本当に俺達が参加しても良いのか?


「俺達参加しても大丈夫なのか?」

「あぁ、山車引っ張る中に混じれば問題ないぞ?」

「表彰式は、はっちゃける日だからねっ! 太鼓とかやっても良いんだよ?」

「えっ? 本当ぉ? 僕、摺鉦やってみたいなぁ」


 おっ、おい天女目?


「私、笛やってみたい」


 はっ、はぁ? 澄川?


「でしょでしょ??」

「確かに予備はあるから大丈夫だ」


 なっ、なんだよお前ら! 随分と積極的だな? 普段とは全く違うぞ?

 ……くっ、くそっ。そう言われたら俺だって……あのデカい太鼓叩いてみたいっ!


「おっ、俺は……太鼓叩いてみたい」

「おぉ! じゃあ決定だぁ」

「じゃあ早速着替えるか」


 こうして決まった祭りへの参加。

 最初は恥ずかしさが勝っていたものの、天女目達の言葉にそれが薄れたんだと思う。気が付けば自分の好奇心を我慢することなく話していた。


「じゃあ、男はこっちで着替えだ」

「はぁい」


「女の子は近くの公民館だけど……あっ、そうだった! 真也ちゃん? みんな連れて先に行ってて?」

「分かった!」


 流石に着替える場所は違うよな? ん? 宮原さんこっち……


「あっ、日南君? 忘れ物持って来たよ?」

「えっ?」

「こっちこっちー」


 真也ちゃんに案内を任せ、俺達の方へ戻って来た宮原さん。だけど、正直その言葉の意味が分からなかった。

 忘れ物? いつ? あの日か? それともサークル?


「こっちだよ?」


 訳も分からぬまま、引かれるように付いていくと……2つ横の山車の前でその歩みが止まった。そして……


「日南君ごめんっ!」

「ごっ、ごめん? 何? 急に」


「本当はね? 澄川さん呼ぶつもり無かったんだ。でも、すずちゃんが気を遣って誘ってくれてね? あんな話聞いたのに……ごめん!」


 あっ……そういう事か。まぁ、最初は驚いたけどさ? 別に……


「あぁ、全然大丈夫」


 何ら問題ないよ。


「ほっ、本当?」

「うん。こんなデカいお祭り楽しまなきゃ損だろ? むしろ誘ってくれて、参加までさせてくれるなんて、感謝しかないよ?」


「良かったぁ! 運行中の雰囲気感じたら、もっとテンション上がっちゃうよ?」

「まじか? 楽しみだな」


「ふふっ、日南君からその言葉聞けて安心したよっ。じゃあ着替え行ってくるね? また……後でっ!」

「あぁ、後で」


 そう言うと、宮原さんは急ぎ足で行ってしまった。そしてその姿は瞬く間に人混みの中に消えていく。


 即行で行っちゃったな。しかも心なしかスッキリした顔してた様な……要らない心配させたかな?


 なんか申し訳ない気もするけど……ダメだダメ。今日は夏祭り。折角鷹野達が誘ってくれて、参加までさせてくれる。こんな機会滅多にないぞ?


 だったら……


 楽しまないと損だよな?







「うぉっ! 天女目、やっぱ色白いな! しかもガリガリじゃねぇか」

「えっ? そう……ひゃっ! へっ、変なトコ触らないでよぉ」


 ん? ……ったく、あいつ等。


「おい日南! どこ行ったー!」

「ちょっ、鷹野君! 服返してよぉ、半纏貸してよぉ」


 ……俺も負けてられないなっ!


「はいよー! 今行くっ!」




次話は月曜日辺りになりますので、宜しくお願いしますm(_ _)m


また、早く読みたい・面白いなど感じてもらえましたら、感想等頂けると滅茶苦茶嬉しい限り嬉しいです!

(ㆁωㆁ)

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