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117.ますます悩める少女

 



 私、日城凛恋は悩んでいる。

 日南先輩を振り向かせる為に、映画に出ると言ったはずだった。

 ただ、宮原千那の表情を可哀そうにも感じたのは事実。


 自分でも、自分の気持ちが分からずにモヤモヤしているのに……なぜ?


「凛恋ちゃ~ん、お菓子だよぉ」


 私は宮原千那の部屋に居るんでしょう?


「あっ、ありがとうございます」

「今、飲み物持ってくるね?」


 もとを辿れば、私のあの言葉が原因だった。




 威勢良く啖呵を切り、三月叔母さんを説き伏せ、監督さんに承諾を頂いたまでは良かった。

 しかしながら、予想外の反応を見せたのが宮原千那。


『りっ、凛恋ちゃ~ん! ありがとう!』


 いきなりこちらへ来たかと思うと、思いっきり抱き着いてきやがった。いやまぁ、すごく良い匂いで自分を遥かに上回る柔らかいものには、言いたくないけどドキッとしてしまったけど?

 それは良いとして、


『ちょっと千那? 凛恋さんにちゃんとお礼しなさい? ありがとう凛恋さん。この子の代わりに映画出るって言ってくれて』

『もちろん! とりあえず凛恋ちゃん、三月さんと来たって事は夜も居るよね? てか、今日泊まるよね?』

『えっ? まっ、まぁ……』

『おもてなし、させてちょうだい!?』




 そして今に至る。

 いやいや、お母さんの巴さんも居る状態で断れる訳ないでしょ? 

 ……まぁ、仕方がない。こうなれば思考を変えよう。敵の本丸に上手く来れたと思えば良い。せっかくの機会だし、居ない内に観察させてもらおう。


 そうと決まれば! なんて気を取り直した私は、ここぞとばかりに宮原千那の部屋を隅々まで、それはもう舐め回すかの様に見回した。


 壁紙は基本的には水色だけど、窓際が白。その外見とは違って洋風なイメージ。

 ゴミでも散らかっていたら良かったのに、塵の1つも見当たらない。家具全般も白と水色を基調としていて、明るく爽やかな雰囲気だ。


 ベッドに机に本棚、洋服を掛けるラックに小さなテーブル。

 洋服は結構大人っぽい? 本棚には漫画もあるけど小説も数多い。


 しかも何なの? このいい香り。本人も良い匂い漂わせて、部屋も良い香り?

 くそっ。下着はどこだ? せっかくならサイズやら手持ちの種類や色の確認を……


「お待たせ~! ごめんね? とりあえず何が好きか分からないから、いっぱい持ってきちゃった」


 って、危ない危ない。物色しようとしてたのがバレるところだった。


「そんなお構い……はっ!」


 それは感じた事のある気配だった。そして宮原千那の肩から少しづつ見えたその影は、私を確信へと導く。

 くっ、確かにここは本丸。となれば、居るはずよね?


「あっ、そうそう! せっかくだし紹介しようと思って連れてきちゃった! はいはい、真也ちゃんも入って入って?」


 宮原真也。


「こんにち……は」


 やつが私を見た途端、一瞬言葉を詰まらせたのを見逃しはしない。なぜなら私も同じ気持ちだから。

 さて、どうする? お前の反応次第で私は色々と対応しますけど?


「初めまして、宮原真也です。千那姉の姪にあたります」


 ほほう。

 宮原真也の対応は、あくまで初対面という体のものだった。

 正直、私としてもすでに会っていたという事実を口にしたところで、何のメリットも浮かばない。それにその流れで行った方が、色々と良い気がする。


「初めまして! 宮原先輩の大学の後輩で、サークルでもお世話になってます。日城凛恋って言います」

「ささっ、座って座って。女子会だぁ~」


 こうして、何だかんだで幕を開けた女子会。

 対面には宮原真也。左隣に宮原千那という位置関係だったものの……おそらく、宮原真也は私と同じ事を思っているに違いない。


 なぜこの人とお菓子やらを食べなくてはいけないのか。


 最初の内は、あの日の続きかの様に互いを互いが牽制しあう雰囲気。しかし、それを上手く中和したのが宮原千那だった。


「でね? 凛恋ちゃんったら私の代わりに映画に出てくれるのよ? ほんっとにありがとう~!


 それはさっき……うっ!

 いきなり抱きつかないでもらえます? しかも柔らかいものが顔面に直なんですけど?


「ん~! ちょっ、宮原先輩? さっきから気にしないでって言ってるじゃないですか!」


 ふぅ。って、なんだよ宮原真也。そのうわぁ……みたいな表情!


「あれ? なになに? 真也ちゃんもして欲しいの? 仕方ないなぁ」

「はっ? えっ、ちょっと千……」


 いいぞいいぞ? いい気味だ!


「ふふっ」


 げっ。思わず笑い声が……


「ほらほら? 凛恋ちゃんが笑ってるよぉ?」

「ぷはっ! だからいきなり止めてよ!」

「またまた。凛恋ちゃん? こうは言ってるけど、この子髪とか撫でられたりギュってされるの好きなんだよ?」


 おぉ……なんだ? 見た事のない宮原真也の表情だ。これは良い気味……


「なっ、違うから……こら、撫でないの! てか、凛恋さん見てるから!」

「ふふっ。仲が良いなぁって思って」

「でしょ? あっ、凛恋ちゃんにもしてあげようか? ほれぇ~」


 って! 今度はこっち? ちょっ、待って……


「あの宮原先輩? そのめちゃくちゃ恥ずかしいんですけど……」

「ふふふっ」


 あっ、貴様笑ったな? 宮原真也!


「良いじゃん良いじゃん! せっかくこうして出会えたんだし、仲良くしようね?」


 なっ、なんなんだよ宮原千那。

 そりゃサークルとかでも、中心人物って雰囲気はしていた。それがこういう狭い空間だと顕著に分かる。


 宮原千那に支配されているような気がする。自分のペースに持って行けない。

 言葉なのか表情なのか雰囲気なのか、不思議と宮原千那に惑わされる。

 なんで私こんなに笑ってる? なんでこんなに楽しい? ライバルの前で……しかも要注意人物宮原真也が居るのに!

 いや、なんで宮原真也も笑ってるんだ?


 なんでこんなにも嬉しい気持ちになるんだろう? どうして宮原千那は……


「そうだ! せっかくだし、みんなでお風呂入ろう!? 今なら映画クルーの皆さんも帰って来てないからさ!?」


 はいぃ?




 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 なぜだ……。


 その沢山の湯煙に、額からは汗が滴る。

 もはや何が何だか分からない状態のまま、私は宮原旅館の大浴場に立っていた。


 なっ、なんで? どうして断れなかったの?

 いやいや、あの雰囲気で誘われたら、せっかくのご厚意だし? 先輩だし? 入らない訳にはいかないでしょ?


 それにしてもまさか、


「はぁ~気持ち良い」

「足伸ばせるのは、やっぱり良い」


 宮原千那はもちろんだけど、宮原真也も入るとは思わなかった。

 しかも、


「やっぱ温泉サイコー!」


 三月叔母さんまで!? 


『そうだ、三月さんも誘っちゃお?』


 なんて言って部屋出て行ったけど、本当に来るとは思わないじゃん? 

 あぁもう、なんなのよ宮原千那。


「凛恋も突っ立ってないで入れよ~? あと、バスタオルはちゃんと取るんだぞ? マナー違反だからな」


 ぐっ! 三月叔母さんめ、本当に血縁者か? 姪っ子の気持ちを察しなさいよ。

 にしても、宮原千那……生で見ると胸もお尻もデカいな。着やせするタイプか。正直スタイルじゃ勝てる気はしない。

 宮原真也は……胸は僅差で勝ったか? けど、なんだそのくびれ? 細すぎじゃない? なんか負けた気になるんですけど? 

 三月叔母さんだって、宮原千那までとはいかないけど、全体的にスタイル抜群だ。

 わっ、私だってそれなりだと思うんですけど? お尻には自信……


「あっ、なになに~? 恥ずかしい? 凛恋ちゃん?」


 その時だった。お風呂に入っていた宮原千那が徐に立ち上がると、笑みを浮かべながらこちらに近づいてくる。1歩歩くたびに、たわわなものが揺れ動き、それが目に入るたびに心が抉られる。


 あぁ……やめて……見せつけないで……


「捕まえた! ほら、一緒に……」


 やめて……その柔らかいの……


「お風呂入ろうよっ!」


 押し付けないでぇ!




次話も宜しくお願いします<(_ _)>

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