103.姉はある意味恐ろしい
思いもよらない千那との1泊。そんな想定外の出来事からスタートしたゴールデンウィークはもはや半分を過ぎようとしている。
最初のインパクトが大きすぎたのか、それ以降はなんて事もなく平穏な休日ばかりで、少しだけ拍子抜けしている自分がいた。
今年はバスケのサークルも帰省者が多いという事もあって、休み中はサークルも休み。空いている時間でバイトを探している毎日だった。
「ん~、やっぱゴーストがバイトとしては丁度良すぎたんだよな」
♪~♪♪
「ん? 希乃姉? もしもし?」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
辺りが少し薄暗くなりかけた黒前駅前。そんな場所に、俺は1人立っていた。
当然待ち合わせをしている訳だけど、その相手は千那ではない。ましてや千太でも算用子さんでも天女目でもない。
……お正月以来かな?
「お~い! たいちゃん~!」
「いたいた~!」
「久しぶり、姉ちゃん」
その懐かしい声とともに、こちらに駆けて来る希乃姉、詩乃姉。相も変わらず元気な姿に、自然と笑みがこぼれる。
「じゃあ、色々と買い物とか~ご飯とか食べよう~」
「おぉ~!」
この感じも、久しぶりだな。……でもさ?
「あの、あの姉ちゃん達?」
「うん?」
「うん?」
「両サイドで袖を掴むの止めてもらえる?」
「えぇ!? そんな……お姉ちゃんの事嫌いになった?」
「うぅ……悲しい……」
……これは俺が小さい頃に迷子にならない様にやってたやつだろ! 姉ちゃん達の中の俺は、未だに幼稚園児か?
「そうじゃなくてさ? ここ俺の通っている大学の近く! 同じ大学に通ってる子とかも居るかもしれないだろ? だから……」
「はっ! そういえば、たいちゃん大学生だった!」
「めんごめんご~ついつい昔の癖が抜けなくてさ?」
ははっ……でもまぁ、それが姉ちゃんらしいと言えばらしい……
「じゃあ、大人らしく腕を掴もうっ! えいっ」
「そうだね! えいっ」
「はっ、はぁ?」
ちょっ、なんでそうなるんだよっ!
なんとか普通に歩いてもらうように説得し、ぶーぶー文句を言う姉さん達を宥めながら……俺達は黒前市内を堪能した。
俺が大学生になってから、姉さん達2人が揃って黒前に来たのは今回が初めてという事もあって、テンションがいつも以上に高いのも納得がいく。とはいえ、
「うわぁ~この服可愛い~」
「ホントだ! お揃いで買っちゃう?」
「うんうん、たいちゃんも……」
「俺は男だっての」
「いやぁ、スッキリとした映画だったねぇ」
「うんうん。やっぱりこう、急に出てくるところとかワクワクしたもんね?」
「……本当にたった今一緒に見た映画の話してる? ホラー映画だったよね?」
「このTシャツ良いなぁ~」
「じゃあお揃いで買っちゃおう。たいちゃんもどう?」
「だから俺は男……あれ? デザイン良いな」
「このオムライス美味しいぃ~!」
「このナポリタン美味しいい~!」
「まじで食べてる顔とかスピードが一緒だよ」
「このブラ良いなぁ。ねぇ詩乃ちゃん?」
「うんうん。このパンツもデザイン凝ってない?」
「「たいちゃんはどう思う~? って、なんでそんな遠くに居るのぉ~?」」
「どっちでも良いよっ!!」
その雰囲気は……やっぱりどこか懐かしくて安心した。
ガチャ
「「お邪魔しま~す」」
こうしてひとしきり黒前を堪能した姉ちゃん達。最後に訪れたのはなぜか俺の部屋だった。
なんでも泊まるホテルは一応予約したらしいけど、3人で遊んでいるうちになぜか俺の部屋に泊まりたくなったらしい。ホテルに向かい予約取り消しとキャンセル料を支払ったとはいえ、俺だったらホテルでのびのびと寝る方が良いと思う。
それにコンビニで色々買っちゃって……お酒につまみにお菓子とは、マジで姉ちゃん達は変らないな。
「いいの? 結構狭いから、3人で寝るのはキツイと思うけど」
「大丈夫だよっ! クンクン……あれ?」
「そうそう大丈夫! ……ん?」
なんだ? 部屋そんなに匂うか? ゴミとかはちゃんと片付けてるんだけど。
「詩乃?」
「うん、希乃姉。ねぇたいちゃん? この部屋に女の子来た?」
その突然の言葉に俺は思わず詩乃姉に視線を向けた。
すると、やっぱりかという表情の姉さん達。その良く分からない能力に、少しだけ寒気がした。
「その感じ、正解だね」
「もしかして、千那ちゃん?」
はっ? なんでそこまで……
「ふふっ、正解みたいだよ詩乃」
「そうみたいだね」
なんだよこの2人怖いよ。
「いやその……」
「まぁまぁ、とりあえず乾杯でもしてじっくり話を聞きましょう」
「そうだね。よいしょ」
「「乾ぱぁ~い」」
なっ、なんで女の子が来たって分かったんだ?
なんで千那だって……
「ふふっ、どうして分かったのかって顔してるねぇたいちゃん」
「そりゃ姉弟なんだから、たいちゃんの匂いは分かる訳よ? ねぇ希乃姉。そこに違う匂いが混じってたら分かる訳。まぁ、私はその違う匂いが誰かは分からなかったけど……」
「うん。これは間違いなく千那ちゃんだね。もちろん詩乃は直接千那ちゃん見た事ないからねぇ」
「でも、透也さんと湯花ちゃんの妹でしょ? なんとなくイメージはつくかな?」
……やっぱり怖いっす。
「そんで? 来たって事は……付き合ってるの?」
「はっ、はぁ?」
「そうなの? 憶測だけど、ロングヘアーでスタイルの良い……まるで女神みたいな可愛さなのかな? 今度お姉ちゃんにも紹介してねっ?」
「ちょっ、詩乃姉までっ! 付き合ってないって!」
いやいや、なんで憶測で外見まで分かるんだよっ! 偶然にしても恐ろしいよっ!
「えっ? そうなの? だってたいちゃん……千那ちゃんの事好きでしょ?」
「きっ、希乃姉!?」
「キャー、青春ってやつ? そうなのそうなの?」
なっ、なんなんだよこの2人!
揃いも揃って、やっぱり……
「じゃあどこまで行ったの?」
「部屋に来たってことは、付き合ってないけどキスくらいはしたのっ?」
「いや、その……」
「「ねぇねぇ、たいちゃん?」」
なんか滅茶苦茶怖いんですけど!?
次話も宜しくお願いします<(_ _)>




