表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

102/149

101.2人の朝

 



 ……なんか……背中が痛い。

 ボヤけた視界に節々の痛み。どこか覚えのある感覚に、俺は夢であって欲しいと切に願った。

 ただ、現実は非常だ。意識がハッキリとしていくにつれて、その痛みもまたハッキリと襲い掛かってくる。

 まさしく最悪の目覚めとはこの事だろう。


 あぁ……絨毯があるとはいえ床で寝るもんじゃないな。

 これもまた良い人生経験なのかもしれない。とはいえ、今はこの痛みを和らげるのが先決だ。

 俺はゆっくりと、重い体を起き上がらせた。


 関節がピキピキ言ってるよ。それに瞼がいつも以上に重い気がする。

 無理やりにでも開けようと目をこすった時だった。鼻に感じる良い匂い。


 ん? なんだ?

 それはどこか安心する。どこか懐かしい匂い。何度か瞬きをすると、キッチンのところに何やら人影が見える。


 誰かいる? 誰だ?

 小刻みに聞こえるテンポの良い包丁の音。キッチン近くの窓から差し込む光で、辛うじて分かるポニーテールの様な髪形。


 えっと、女の……


「あっ! たたたっ、太陽君」

「えっ、ちっ千那?」

「おおおおっ、おはよう!」




 味噌汁、ご飯、サバの味噌煮、卵焼きに納豆。漬物にひじき。

 テーブルに並べられた立派な朝食を前に、本当なら感動を覚えるはずだけど……


「ほっ、本当に! ごめんなさいっ!」


 対面の千那の姿を見る限り、そうともいかない。

 ははっ、俺もはっきりと思い出したけどね。


 酔っ払った千那が、間一髪の所で眠り姫になってくれた事である意味事なきを得た。

 まぁ、人が人なら色々考えるんだろうけど、俺としてはそういう状況下であれこれしたくはなかった。それに好きな人ならなおの事だ。


 そして、千那を抱き抱え……再びベッドに寝かせた後、流石に透也さんに連絡したよね。


『お~、太陽か? どうした』

『あのすいません。透也さん、今家ですか?』


『そうだけど?』

『あのですね? 千那がジュースと間違えてお酒飲んじゃって、寝ちゃってるんですよ』


『マジか。ちなみに今どこにいるんだ? 今日は花見に行くって話だったよな』

『えっと、恥ずかしながら自分のアパートでして……千那が公園で寝ちゃったもので、とりあえずと思い……』


『まさかおぶってくれたのか? こりゃ妹に代わってお礼言わせてくれ。重かったろ?』

『全然ですよ。って、それより透也さん? 迎えに来てもらう事ってできますか?』


『あぁ、今日俺旅館の夜間当番なんだよなぁ。親父達も酒入ってるし……』

『えぇ? そうなんですか!?』


『まっ、太陽。とりあえず一晩お願いできるかな?』

『一晩ですか!?』


『そうそう。太陽のアパートなら大丈夫だろ』

『いっや、いや……』


『それに千那も明日からは大学休みだし、こっちの手伝いも必要ないから問題なしっ!』

『こっちの問題はあるんですけど!?』


『まぁまぁ、とりあえずなんとか頼むわ』

『たっ、頼むって……』


『あっ、それはそうとちゃんとゴムだけはしろよぉ?』

『はっ、はい!? なっ、何言ってるんですか透……』

『ははっ! じゃあ千那を頼むぞ太陽!』


 いやいや……マジかと思ったよね? もちろんそういった如何わしい事はしてない。

 ちゃんと千那に布団掛けて、俺は床で寝たんだ。ったく、透也さんめ。今思い出してもとんでもない事言ってるぞ?

 まぁ、俺としては千那の寝顔+不可抗力とはいえ、柔らかい感触を堪能出来たから良かったけど……千那はほとんど記憶ないみたいだしな。


「うぅ……」


 こうなるのも無理はないか。事があるごとに俯いたり謝ったりのリピートだ。

 俺に対する申し訳なさからとはいえ、準備してくれた朝食は凄いと思うけど。

 とりあえず、ある意味お互い様なんだし……そんなに謝るなよ千那。


「なぁ千那?」

「はっ、はい!」


「こんな立派な朝食作ってくれてありがとう」

「ぜっ、全然だよ。太陽君にはかなりお世話になったもん。それに手間も掛けられなかったから……こんなんじゃ全然恩返しにもならないよ。それに、おっ……おんぶまで……うぅ……重かったでしょ?」


「軽すぎて余裕だよ? もっとご飯食べなよぉ?」

「もっ、もう太陽君? ふざけないでよぉ」


「本当。それにさ? 色々と考えすぎだって」

「でっ、でも……」


 ったく、ホント律儀で良い子だよな。


「むしろ千那の方が割に合ってないよ。さっき言ってたじゃん? この朝食作る為にコンビニ行ったんだろ? 冷蔵庫の物勝手に使っちゃダメだって考えてさ。その労力考えたら、むしろ俺が千那に何かしてあげないといけないんじゃない?」

「なっ、なんでそうなるの~!」


「はいっ! じゃあ、これでおあいこ。俺は千那を運んだ。千那は朝ご飯作ってくれた。これでトントン。いいでしょ?」

「う~ん……それで太陽君が良いなら……それでお願いしますっ!」


「了解。じゃあ決まりね?」

「もう……太陽君優しいんだから……」


 いやいや、俺からしてみれば千那ほど優しい子はいないけどな。


「そうかぁ? あっ、せっかく千那が作ってくれたご飯冷めるぞ? 食べよう?」

「あっ、そうだね? 温かいうちに食べて欲しいなっ」


「だったら、早速……」

「「いただきます」」


 こうして、千那とのちょっとした騒動? は無事に解決した。

 ……って、2人で話して、色々とご褒美もあって、手作りの朝ご飯を食べてって……俺良い事尽くしじゃないか?


 そう考えると、マジで最高のさくらまつりだったよ。






「朝に味噌汁とか久しぶりだよ」

「さすがにインスタントのだけど、具材が寂しいから色々と入れてみたよ?」


「マジか? ありがとう。美味い」

「本当? じゃあ私も……」


 ……千那の事だし、味噌汁とかも本当はちゃんと作れるんだろうな。毎食このクオリティって、

 良いよなぁ。


「なぁ、千那。また泊まりに来てもいいぞぉ?」

「プーっ!!」


「あっつ!!!!!!」

「たたたたっ、太陽君の……」




「バカぁぁ!」




次話も宜しくお願いします<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=191455327&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ