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100.2人の逢瀬?

 



 遊びたいかも。

 千那の言葉に少し驚きはあった。ただそれ以上に嬉しさがこみ上げる。

 そりゃそうだ。思いもよらない形で2人で居られる時間が出来たんだからさ。そういう意味では、やっぱりあの20歳3人組に感謝しないといけないかもしれない。


「よっと」

「よいしょっと」


 さっきまでのお花見とは打って変わって、静かさあふれる公園。そのベンチに、俺と千那は腰を掛ける。


『マジか。千那が大丈夫なら、全然大丈夫だよ』

『本当? やった』

『じゃあ、どこ行こうか? この時間だとボウリングかカラオケかゲーセンかな? 千那はどこ行きたい?』

『あの……太陽君? ごめん! 遊びたいって言ったけど、その……全然お話とかするだけでも十分だよ?』


 そんな感じで訪れたのが、黒前駅近くの小さな公園。

 先日算用子さんの依頼でリア充高校生を尾行していた場所だ。まさか同じ場所に座る事になるとは思いもしなかったけど。

 にしても、正直、俺と話するだけよりはどっか行った方がいいとは思った。ただ、千那が良いなら全然問題なし。

 それに自分の提案で変にお金とかを使わせたくないなんて思っている可能性もある。千那なら全然あり得るな。


「それじゃあ、とりあえず乾杯でもしようか? はいっ!」


 俺としては、2人で居られるだけで万々歳だけどさ。


「ありがとう。じゃあ……」


「「乾杯~」」


 それから俺達は、ベンチに座りながらホントに他愛もない話をした。

 ゴールデンウィークの予定。

 今年のめぶり祭り。

 夏休み。

 そして俺のバイトの話。

 最後の話題については、さすがに心にグサっと刺さった。そろそろ本気でバイトをしないと……


「いやぁ。なんとか頑張ります」

「えっへへ。そんなに気張らなくてもぉ大丈夫だよぉ」


 その優しい言葉が、心に来るんだよなぁ。てか、なんだろう? 千那の様子がだんだん変というかなんというか。


 それは単なる予感でしかなかった。言葉の言い回しはいつもと同じだとは思う。ただ、徐々に雰囲気というかそういったものが、柔らかいというか崩れているような気がした。

 公園とはいっても街灯自体の数は少ない。こちらを見る千那の顔も若干薄暗くて、はっきりと見えている訳じゃなかった。


「ふふっ。楽しいねぇ。それになんかぁ暑くない?」

「暑いって、今の時期は夜になるとまだ肌寒くないか? 地元民は強いなぁ」


 まぁ……気のせいか。あっ、そういえばゲットモンスターの話、結局してなかったな。聞いてみよう。


「そういえば千那?」

「なになにぃ?」


「この前さ? ゲットモンスターの事聞いてきたじゃん。いきなりでびっくりしたよ」

「ゲットモンスター? あぁ! ごめんねぇ、いきなり」


「全然大丈夫だって。千那もやってたのか?」

「そりゃもちろん! 滅茶苦茶やってましたよぉ」


 おぉ、確かに男子はほぼ全員やってた記憶があるけど、女子にも相当な人気だったな。その辺は全国共通か。


「マジか。いやぁなんか意外だな」

「意外とはぁなんですかぁ。むぅー」


「ごめんごめん。ちなみに何のモンスターが好きだった?」

「えぇ? 私はあのぷりぷりしたモンスターかな?」


 ぷりぷり? 

 そう言いながら、千那は目を閉じて必死に思い出そうとしている様子だった。

 思い当たるのは数体いるけど……


「ぷりぷりって結構いるぞ?」

「ほらぁ、あのぷりぷりして温かくて……」


「ほうほう」

「ふわふわして温かくて……」


「ふわふわ?」

「それでなんか気持ちよくて……」


「うん?」

「こう……あれ……なんか本当に気持ちよく…………すやすや」


 ん? あれ? 


「千那?」

「すやすや」


 ねっ、寝てる~!? 


「おーい!」


「千那~?」


 突然の出来事に、何度か呼びかける俺。しかしながら千那は本当に寝てしまっている様子だ。

 呼び掛けても起きない状態に、仕方なく肩を叩こうと少し近くに寄った時だった。千那から漂う匂い。それは、さっきまで嫌というほど鼻に付いていた匂いだった。


 なっ、これってお酒の匂い? でも千那も俺もお酒は飲んでない……はっ!?

 俺は思わず、千那が握っていた缶をに目を向ける。そしてそっと抜き取るとそれは……案の定それだった。


「って! これお酒じゃねぇか!」


 パッケージに書かれたレモンの果実。けど、その下には堂々と“これはお酒です”と書かれていた。

 おそらく手元が暗くて勘違いしたのか……って! おいおい、しかもアルコール9%!? どんだけ度数高いんだよ。酎ハイでこれじゃ、酔っ払いまで一直線だぞ。


「こんなのあいつら何本も飲んでたのかよ。あんな状態になるのも無理ないか。とはいえ、今はそれどころじゃないよなぁ」


 そう、今はそれどころじゃない。この眠れる姫をどうするか……それに尽きる。

 4月下旬だけど、夜になると肌寒さは感じる。それにいくら千那の服装が肌の露出がないにしても、このままここに居たら風邪は確実に引くだろう。


「どうする……おーい千那?」

「むにゃむにゃ」


 気持ち良さそうに寝てる~! えっと、算用子さんは……駄目だ! 今日の算用子さんは役に立たない。かといって、ここに居るのはもっとヤバイ。


 どうする……どうする……

 考えろ日南太陽!!




 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 ガチャ


「なんとか誰にも見られることなく来たぞぉ。よっと」


 静まり返った室内。見慣れたはずの光景が今日だけは全く違うように感じた。


 透也さんに連絡をしようとしたけど、おそらく宮原旅館に居るとなると来るまでに40分は掛かる。

 考えた結果、俺には千那をおぶって体を休められる・尚且つ安全な場所へ行くという選択肢しか浮かばなかった。駅前近くだったとはいえ、公園近くが住宅地で助かった。


 まぁ、そんな条件の合う場所と言ったら真っ先にアッチ系のホテルが浮かんだけどさ? さすがに駄目だと思ったよ。そんで最終手段が……最終手段が俺の部屋だった。


「いや、とりあえずは良しとしよ……うっ!?」


 無事に部屋に着き、緊張感から解き放たれたからなのか、一気に体の感覚が戻ってくる。その結果、真っ先に感じたのは背中の柔らかい感覚。アルコールの匂いに負けない、良い匂い。


 これは……やばい。


「よいしょっと」


 色々な危機感を感じながら、俺は千那を自分のベッドに寝かせた。内心、自分の寝てる場所で申し訳ない気持ちでいっぱいだったけど、フローリングの上よりは格段にマシだ。


「ふぅ……」


 床に腰を下ろした瞬間、思わず息が零れる。

 とりあえず、やれるべき事は出来たよな?


「さて、どうしたもんか。やっぱ透也さんに連絡しないとだよな」


 なんて、安堵した時だった。


「ん~?」


 そんな気持ち良さそうな声とともに、


「ありゃぁ~? 太陽くぅん?」


 眠れる姫が目を覚ました。


「う~ん」


 おっ、起きたか。体調とかは……悪くなさそうだな? あっ、普通に起き上がってベッドに座れてるし。

 辺り見渡してるし、ちゃんと説明しないと。


「あっ、千那。起きたか?」

「あれ? ここぉ太陽くんの部屋ぁ?」


「あぁ。千那ジュースと間違えて、お酒飲んでたんだよ」

「お酒ぇ~?」


 やっぱ間違えて飲んでたのか。


「そうそう。そんで寝ちゃってたから、とりあえず俺の部屋に連れてきた。風邪とか引くとダメだしさ」

「えぇ~? そうなのぉ? 太陽君優しいねぇ」


 うん。これはいつもの……


「でもぉ~」


 千那の笑い顔……


「ホントはお部屋に連れ込んでどうするつもりだったのぉ~?」


 じゃないっ!!


「はっ、はい?」

「とぼけちゃダメよぉ。2人きりで自分の部屋に連れてきたってことはぁ、何かしらしようとしてたんでしょぉ~?


 おっ、おいおい待て! いつもの千那じゃない! しかもこの雰囲気……あの酔っ払い3人組と同じじゃないか。それに、こうして明る居場所でまじまじと顔を見ると、滅茶苦茶真っ赤じゃないか!

 これはもしかして、千那も……


「そうなんでしょぉ~? 太陽君?」


 酔っぱらってる?

 となれば、とりあえず落ち着いてもらうしかないぞ!?


「いやいや、そんな事ないよ」

「あぁ~! なにそれぇ! ひどくなぁい」


「えぇ?」

「ふんだ! どうせ私なんて、今まで誰とも付き合ったことないし、処女だし、キスもした事ないですよぉ~」


 やべぇ! 滅茶苦茶地雷踏みました?


「そっ、そんな事……」

「でもね? それなりに体には自信あるよぉ? 意外かもしれないけど、Fカップあるしダイエットも頑張って、お腹も出てないんだぞぉ? お尻だって……」


 あぁ、日南太陽。どうするどうする。

 その雰囲気は、もはやいつもの千那じゃないような気がした。

 そんな姿に若干の恐怖と動揺を隠せずにいると、そんなのお構いなしに、


「そもそもさぁ!? 太陽君はぁ、私の事どう思ってる訳ぇ?」


 なんて言いながら、俺へと近づいてくる。


 やっ、やばい。

 少し後ずさりする俺。


「ねぇねぇ~どうなのぉ?」


 ベッドから降り、四つん這いで迫る千那。


「いっ、いや……」

「ねぇ~太陽くぅん?」


 これは…っ!!

 その時、背中に感じる固い存在。それはまさしく壁で間違いない。つまりもはや、退路は断たれた。


「ねぇ~?」


 近付く千那。


「ちっ、千那?」

「なぁにぃ? だからぁ~」


 逃げられない俺。

 迫りに迫られ、ついに千那は俺の上に覆いかぶさるような位置まで来ていた。


「私の事ぉ~」


 おっ、お~い!


 そしてついにその顔が至近距離まで近付いた。


「どう思ってるのぉ~?」


 やっ、やばいぃ!!


 トンッ


 それは……ある意味運が良かった。

 どうにも出来ないと諦めていたその時、目の前の千那の顔が視界から消えた。と同時に、体に感じる重さ。


「むにゃむにゃ~」


 どうやら寸での所で、またもや眠りの姫に戻ったようだった。


「あぁ~危なかった。てか、千那のあんな姿見た事ないぞ?」


 そういいつつ、俺は自分の胸を枕代わりにして寝ている千那を眺めた。ただ、その寝顔は……やはり可愛かった。


 てか、この状況も結構ヤバくね? とりあえずベッドに寝せて、透也さんに連絡しないと。あと……千那にはアルコールは控えるようにしないとな。


「アルコールってやっぱ怖いなぁ。俺も飲まない様にしよう」


 お酒は絶対飲まないようにしよう。俺は心に固く誓った。




 ふぅ。じゃあとりあえずベッドに……


「すやすや~」


 そういえばさっきFカップって言ってたよな? お腹の辺りに感じるのって……それだよな?


 ……滅茶苦茶柔らかい。




次話も宜しくお願いします<(_ _)>

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