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99.2度目の桜

 



 朗らかな風が気持ち良い今日この頃。

 目の前には、ある意味見慣れた光景。

 千太、天女目、算用子さん。そして……


「そなの?」


 千那。

 最初に仲良くなった皆と、1年経ってもこうして変わらず机を囲める事は嬉しい限りだ。


 いやぁ、平和だなぁ。

 そう平和。まさしく俺に似つかわしくない言葉トップ3に入るだろう言葉だが、今の状況にはその言葉こそ相応しい。何せ、その存在を危惧していた奴らとほぼほぼ遭遇していないのだから。


 違う学部の風杜とは別棟って事もあったけど、運の良い事に今の所その姿に遭遇していない。

 立花は学年は違えど同じ校舎。正直、何度かその姿は目撃している。ただ、変に接触してこないか警戒はしたものの、幸いにも今の所それはない。

 澄川に関しては、宮原さんから普通に接する発言を受けている以上、最低限の会話はするつもりだ。現状そんな機会は訪れてはいないけど。


 平和だ。そう、これこそ俺が望んでいた平和に違いない。

 ……そう言えば、前の休みの時に千那からいきなり変なストメ来たな?


【太陽君って、ゲットモンスターって知ってる?】

【ちなみに、レッド・グリーン・ブルーだと何派?】

【そっか! ありがとうっ!】


 まさか千那からゲットモンスターの話題が出るとは思わなかったよ。しかも初代の話とは。

 もちろん小学校時代に大いにハマったゲームだし、何と言われようとレッド派だったな。色によってイメージモンスターがいて、レッドバージョンのドラゴンが格好良くてさ?

 そういえば、その事について千那に話そうと思って……


「そうだ!」


 って、千那?


「皆で今年も、さくらまつり行こう!」




 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 ……という訳で、俺は今とんでもなく立派な桜の木の下にいる。

 辺りでは各々盛り上がりを見せつつある中、一人座っているのは場違い感があるものの……それももう少しの辛抱だと自分に言い聞かせる。


 えっと、時間は6時か。最後の講義も終わって、そろそろ皆来るかな? ふぅ。

 一つ息を吐きながら上を見上げると、薄暗さを見せる空とは対照的に映えるピンクの花びら。約1年ぶりの再会に、改めて時の流れを感じた。


「いやはや、去年も思ったけど、やっぱこの桜の木でかいよな」


 去年、講義をサボってまで千太が確保してくれたその場所こそ、このひと際は大きな桜の木の下。

 流石に2年連続で千太に場所取りを頼める訳もなく、今年は俺がその大役を買って出たという訳だ

 。

 まぁ、人気の場所だって事。去年と同じく大型連休前の金曜日。

 それを加味して、昼から講義をサボった手前。この場所を確保できたことは素直に嬉しい。

 ……うん。今日だけはサボりをお許しください。


 なんて考えていた時だった。


「あっ! 太陽君~!」


 一人寂しかった男の耳に、待ちに待った声が飛び込んできた。


「日南君、場所取りばっちりだねぇ。ありがとぉ」

「日南っちーやるぅー!」

「流石午後の講義全部サボった甲斐があったな! 太陽!」

「そうだな」


 千那を始めとしたいつものメンバー。そして各々の手にはが大きな買い物袋。


「ふふっ、それじゃあ早速。さくら祭り楽しんじゃいましょー!」


 こうして、俺達にとって2度目のさくら祭りが始まった。

 にしても、買い物袋多くね? 全員両手に抱えてるけど……


「なぁ千太。なんか物が多くないか?」

「なに言ってんだよ! これくらい普通だろ?」


「屋台でも色々買ってきたよ? 太陽君、焼きそば食べる?」

「おっ、サンキュー千那」

「はいっ。よいしょっと」


 ん? おっと、そのまま千那が隣に? これは場所取りを頑張った俺へのご褒美か。


「さーさー、年に1度の桜の季節。しかもー夜桜となったらテンション上がるでしょー」

「そうだよぉ! とくればこれだよねぇ」


 確かに去年は昼の花見だったけど、今年は千那の提案で夜の時間帯の花見。確かにライトアップされた桜は一味……


「じゃーん」


 って算用子さん!?

 いつも以上にテンションが高い算用子さん。それに呼応するようにぶら下げた買い物袋から次々とある物を取り出していく天女目。一般的なジュースもあるものの、俺の目にはある飲料が目に入った。


「って、これお酒じゃね?」

「ピーンポーン」

「せぇいかぁい」


 おいおい! 見た目こそあれだけどチューハイじゃないか。大丈夫なのかよ? 


「せっかくの祭り事にこれは欠かせないだろ!」

「いやいや、千太。流石に酒はまずくないか」


「ん? どうしてだ?」

「どうしても何も、まだ未成年じゃ……」

「えー? 私もう20歳だけどー?」


 ……ん? 算用子さん?


「僕もだよぉ~?」


 えっ、天女目?


「俺もなんだよな!」


 せっ、千太?

 ……待て待て、そういえばトントン拍子に仲良くなってたから、今更だけど皆の誕生日分からなくね?

 いやいや、去年の今頃は色々と余裕がなかったし、むしろすでに知ってた気にはなってたんだけど。


 ん? もしかして俺だけ? 俺だけ皆の情報知らなかったの? てか、千那の誕生日も知らないって今更だけどヤバいのでは。てか誕プレとかあげてないないぞ? どどっ、どうする? いや、ここは冷静になれ。あとで挽回すればいい。あくまで冷静に。


「ちょっ! えっと……さ? 今更なんだけど……誕生日は……算用子さん?」

「4月4日ー」


「天女目?」

「4月の5日だよぉ」


「千太?」

「奇跡的に4月6日なんだよなぁ」


 おいっ! なんだよその奇跡的な感覚!? あれ? って事は、もしかして千那も?


「今日の講義中に丁度その話になってな? 寿々音の誕生日は知ってたけど、天女目の誕生日その時知ったんだよ。んで、20歳だからお酒飲んで良いんじゃないかって話になってな。数買っていきゃ、太陽の分も賄えるだろうって思ってたんだけど……」


 ……おいおいKYで申し訳ないが、俺の誕生日は7月7日なんだよ。つまりまだ19歳! 未成年です!


「残念ながら……俺は未成年だ」

「マジかよっ!?」

「そぉなのぉ?」


 くそっ、こいつら見下してやがる。なんだこの屈辱感。


「って事はー、千那と一緒じゃーん」

「えっ? 千那も?」

「うん! 私の誕生日7月7日なんだ。だから太陽君と一緒で未成年だよ?」


 7月7日? まさかの一緒じゃんか。これはナイスな情報だぞ。この結果を生んだ20歳3人組に今日だけは敬意を払おう。


「そっ、そうなの?」

「別に誕生日来てないくらい関係ないだろ? ほぼ20歳みたいなもんだし」

「鷹野くぅん? 一歩間違えたらアルハラだよぉ?」

「はいはいー! 細かい話は後々ー、とりあえず始めよー」


 これまた、楽しい花見になりそうだな。




 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 前略、先ほどまでの自分。

 20歳3人組に敬意を払おうと思っていたみたいですが……


「おいー! せんたー! もっと飲めー」

「飲んでるだろうよ! 寿々音こそ足りてないんにゃないか?」

「にゃいかってにゃんだよぉ千太ぁぁ」


 前言撤回させていただきますっ!!


 夜桜の雰囲気、楽しめる場、気の合う友達。それらが相まって、それはそれは大盛り上がりだった。

 結局、俺と千那はお酒には手を付けずジュースの飲んでいたのだが……威勢を張っていた20歳3人組はご覧の有様だ。まぁ周りのお花見客の皆も同じ様な雰囲気で、目立つ訳でもないけど……肌寒くもなってきたしそろそろ引き上げようと言っているのに、こいつら……


「きゃはー、千太の花に桜ついてるーウケる―」

「あははぁ。まるでトナカイだねぇ。季節外れのぉー」

「なに? ワンってか!?」


 そりゃ犬だろうよ。いや、もはやツッコミ疲れた。頼みの綱は千那だけだよ。


「えっと、余った飲み物とお菓子系はこれで良し。太陽君? シート大丈夫だよ」

「了解。これで……片付け終了」

「いやぁ、皆アルコール入るとすごいねぇ。あんな姿初めて見たよ」

「千太はイメージ付くけど、天女目がこうなるとはな」

「「ははっ」」


 なんて事を言いながら、俺と千那はそれぞれ買い物袋やらシートを抱えて、俺たちの事なんかお構いなしに公園の外へ向かう3人の後を付いて行った。

 何気なく横目に映る、夜桜と千那は……ライトアップの雰囲気も相まっていつも以上に綺麗に見える。


 ……今年も良い花見だったな。


「うぉーい! もう一軒行くぞぉ! ど真ん中行くぞぉ!」

「「おぉ!」」


 ……マジか? いやいや、もうお腹いっぱいなんですが?


「マジかよ。もうお腹いっぱいなんだけど

「わっ、私もだよぉ」

「だっ、だよな? 結構な物食べたし」


「おーい! 未成年! 行くぞー?」

「お姉さんと一緒にー行きましょー?」

「きゃもんきゃもん」


 ……なんか今だけは一緒に居たくないな。


「悪い! 俺今日は帰るわ。お腹もいっぱいでなんも入らない。千那はどうする?」

「私も今日は良いかな? これ以上食べたら、流石に至る所にお肉がついちゃうし」


「なんでぇ! これだから未成年はノリが悪いんだぞ」

「そうだぁそうだぁ」


 あはは……


「ちぇ、ノリが悪い奴は帰れ帰れ! 俺達3人でもっと楽しくやるからよ」

「これだからお子ちゃまはー。これからは大人の時間よー光? 行くわよー」

「はぁーい」


 なんて散々なことを言いつつ、居酒屋ど真ん中に向かう3人。その後ろ姿は、まるでドラマに出てくる酔っ払いそのものだった。

 ただ、それと同時に一気に安堵感と疲労感が押し寄せる。


「はぁぁ」

「ふふっ、なんか一気に疲れちゃったね」


 千那も色々と大変だったと思うぞ? 算用子さんがトイレから戻ってこなくなった時は焦ったもんな。


「だよな。それじゃあ……帰る?」

「んっと、今時間は…………あのね? 太陽君」


「うん?」

「もう少しだけ……」


 ……はい?


「遊びたい……かも?」


 あのその……


 聞き間違いじゃないですよね?




次話も宜しくお願いします<(_ _)>

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