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妹と旅する曰く付き異世界  作者: 智慧じゃこ
32/33

沼地

大分日が開いてしまいました!申し訳ない

永遠の別れという訳ではないので家から学校へ行くかのような軽い挨拶で北門まで見送りに来てくれたセーラと別れる。が向こうはそうは思っていないのか、姿が見えなくなるまでずっと門の前に立っていた。流石にずっと手を振るということはしてなかったが。


この世界で最も死亡率が高い年齢は10台らしい。冒険者になるのに年齢制限はないらしいが、大体がこの世界での成人、15歳で稼ぎに出る事が多いとの事。あくまで多いだけで小さい頃から冒険者登録をし、薬草取り等の採取系専門で依頼をこなす子も割と居る。


薬草取りだって街の外へ行くので絶対安全ではない。運悪く魔物と遭遇し殺される事は多々ある。ある程度体が出来てきて魔物を討伐を始めるのが15歳前後で、初めての戦闘で命を落とすのも少なくはない。ベテランの冒険者だって不運が重なったり、未知と遭遇したりすれば簡単に死んでしまう、そんな世界だ。…っていう話しを以前セーラから聞いた。


だから心配なのかもしれない。ああやって送り出して帰って来ない人が何人も居たのかもしれない。推測する事しか出来ないが俺らは無事に戻ってまた笑いあいたいものだ。


俺達が今歩いてるのがルーナ平原。

パランルーナの周りは大体ルーナ平原と呼ばれているらしい。今俺らが歩いて居る北は、道以外草原がどこまでも広がっている。北西には山…確か亜山だったか。があり、南に30分程歩けばエド族が隠れているデナイアル森(命名)がある。東、南東は知らない。


周りに草原しかない道を北へ永遠と歩く事4時間。

暇すぎた。モンスターは途中に3体一緒に歩いて来たD級のトシュという猪みたいなのが1回出て来ただけだ。それもシャロが雷操作で稲妻を発生させ電撃が横から3体貫通してすぐに終わってしまった。食べられるモンスターだけど捌き方が分からない。一応魔物のコアを取り出した後【次元袋】に保存しておいた。


「さて…草原のど真ん中だがまだまだ続きそうだしそろそろ飯にしよう。」

「わーいごはんで()ー!」

「今日は何かなー!」

「あたし手伝うわね。」

「あ、ワタシも…簡単な事だったら。」

「オレは…なんか混ぜるぐらいなら?」


気を使わないでいいんだけどな、俺料理好きだし。というか今回は女将さんにお弁当を作ってもらったのでそれを食べる。


「いや、大丈夫だ。女将さんから旅の餞別として弁当もらったからな。」


キャンプセットを創造した時に付いて来たレジャーシートと女将さんからもらった弁当箱(特大)を【次元袋】から出して、シートの中央に置く。弁当箱というか重箱なんだが木で出来ていて趣がある。返さなくてもいいと言ってくれたので食べ終わったら洗ってまた何か詰めよう。


俺シートに座ると隣に結衣とシエラが座る。奥にシャロとラルシェが座り…あれ、ニナちゃんは?と思ったら俺の腕を持ち上げて潜り込んできて、胡坐をかいていた俺の真ん中にすっぽり収まった。


「にひひー特等席で()


「こ、こらニナ!天使蒼汰が困るでしょ。」


「いや、まぁ別にいいよ。お弁当も摘まんで食べられるものばっかりだしね。」


女将さんが気を使って食べやすい食べ物で揃えてくれたみたいだ。お、ニナちゃんは卵焼きを最初に行くか。と思ったら違った。


「そーたおにーちゃん、()い。あーん!」


「お、ありがとう。あーん…うん、うまいな。」


「ニナも食べるで()!あーん!あーん!」


あ、ニナちゃんの分は俺が口に運ぶのね?んー同じ卵焼きでいいか。


「はいはい、どうぞ。あーん」


「あーむ!…んぐんぐ…おいしーで()ね!」


あーんなんて恥ずかしいけどまぁニナちゃんなら仕方ないか。それも最初だけで、1口食べた後はパクパク一人で食べいる。お、この金平牛蒡(きんぴらごぼう)みたいなのうまいな


「「「・・・」」」


「い、いやー女将さんの料理はうまいぜ!んーうまいうまい!」


「あ、ああ…どうしたんだラルシェ」


「いや…なんでもないよソウタ兄」


この時は全く気付かなかったがこれから1日置きに自分の上に座る人が交替制になり、毎回アーンをされる事になるとは思ってもいなかった。まぁ楽しそうだったからいいんだけど…勘付いてたんだな…ラルシェ。


結衣がやるのは分かる。家に居る時は特にくっ付いてくる事はあまりなかったのだがこちらの世界に来てから結構触れ合う機会が多くなったと思う。最初は知らない世界であまり出ない外だから怖くてくっ付いてきてるのかと思ったが、そんな感じはしないんだよな。兄としては嬉しいからいいんだけど。


そしてシエラもまぁ分かる。身近に甘えられるような人が居なかったのだろうか。色々甘えてくる。寝る時もそうだし、風呂なんかにも来て、アーンしてほしいだなんてな。OKOK、俺が皆の兄になる!!


そして4日目のお昼。

ニナちゃん、結衣、シエラと来たから次はー


「「・・・」」


シャロもするのだろうか?そんな感じのキャラじゃないと思うんだけど・・・無言でこちらを見つめてくる。俺というか皆が順番に座っていった胡坐をかいた中央を。ジッと見つめては顔をぶんぶん振りまた見つめる。


「えっと、シャロ?」


「―!な、なに?」


「あーっと…いや、座る?」


「―っ!!な、なんでよ!そ、そんな、別に…」


「そ、そうだよな!ごめんごめん」


ふ、ふう・・・何故か緊張した。シャロは割とクールめというか、妹が居るからか姉として子供っぽい行動を好かない・・・というか避けているように見える。色々素っ気無いんだけど俺嫌われてないよね?後ろめたさがまだ抜けないのだろうか。


「おねーちゃんが座らないなら、今日はニナのば」


「す、座らないとは言ってないわ。す、座るわよ。それがこのチームのルールなんでしょ!」


いや、別にそんなルールはないけど…と言う前に顔を背けながら歩いてきてストンと座る。そして


「は、はははハイ!」


「ングッ!?」


昼になると何食べたいか聞くと最近は必ず一口大のサンドイッチ!と揃えて言ってくるので具を毎度変えたサンドイッチを作っているのだが、それを一つ摘まみ、意を決して勢いよく俺の口に突っ込んできた。

俺もサンドイッチを摘まみ、シャロの口へ持っていくと、パクッと食べた。ちょっと面白い。


「お、美味しい、わ・・・」


「ああ、それなら良かった。」


耳が赤くなってるのが見えるので顔も真っ赤なんだろう…恥ずかしいならそこまで無理しなくてもいいのにな。


「あー!お姉ちゃんお顔真っ赤で()!」


「う、うるさい!ちょっと暑いだけよ!」


まぁ確かに今日は日が出てて温かいというよりは少し暑い。出発前より段々蒸してきた気がする。よく知ってる暑さだ


「そろそろ沼地だからな!ここら辺に来ると湿気が出て来て暑さが気持ち悪い暑さになるんだ。って言っても人の身で通ったのは初めてだからオレも初体験なんだけど」


俺の心を読んだかのようにラルシェが嫌な暑さの説明をしてくれる。湿気が多いか…だから日本でよく体験する暑さに近いからよく知ってる暑さだと思ったのか。


昼を食べ終わり、少しするとラルシェが言ってた通り沼地が見えてくる。律儀に立てられている看板にも[この先沼地。注意すべし]と書かれており、凶悪な顔、恐らく魔物をイメージしたマークが最後に付いている。

確かに【気配察知】で魔物が居ることがわかる。一見何も居ないが・・・


「皆気を付けろ、沼の中に魔物が居るぞ。」


そう言った瞬間、泥の塊が沼から複数飛び出して来た。ぱっと見スライムだろうか?色は泥まみれで茶色だ。大きさはサッカーボールよりやや大きい。それが6体。こっちも6人。それぞれ一気に襲い掛かってきた。


「土よ、握りつぶせ!」


【土属性操作】で土を操作し手の形に組み上げ、手首をしならせるように6体とも捕まえ握りつぶす。蒼汰は道中暇だったので各属性操作を練習していた。それなりに使いこなせるようになったので試し打ちだ。


・・・因みに属性操作は特に何も言わずとも出来るのだがまぁ気分だ。それにどんな技か言ったほうが味方にも分かってやりやすくなるだろうしな。


ぶちゅっと液体率が高いものが潰れた音がし、土の拳から茶色い液体が垂れる。倒したと思いきやその液体は集まり、1つの大きい塊へとなった。

土属性は効かないか。握りつぶして駄目なら物理も駄目そうだな。雷属性が効きそうか?土纏ってたら駄目かね…まぁやってみるか。


「ソウタ兄!こいつらは土スライムだ。こいつらは核がないから火の魔法で水分を蒸発させれば倒せるはずだぜ」


考えて居るとラルシェが弱点を教えてくれた。なるほど火なのか。


「火ならあたしがやってみるわ!『(こぶし)に宿る炎は善心(ぜんしん)の現れ!炎を纏う拳(フラムプグヌス)】』!」


シエラの自分の戦闘に合った魔法。炎を拳に纏って直接殴る!と分かりやすい攻撃で結構気に入ってるようだ。もうスキルレベルがⅡに上がったらしい。


シエラが詠唱し終わるぐらいで合体してバランスボールぐらいの大きさになった土スライムが飛び掛かってくる。


「はぁあああ!」


何発も殴る。手に魔法を纏ってるおかげかスライムを触っても手が沈み込む事は無く、その場で浮いてるような状態になる。ちょっとずつ蒸発しているのか煙が出て来た。


「せぇぇえい!」


気合を入れて力強く一発撃ちこむと土スライムが10m程上空に飛んで行った。


「『力の源たる輝きし炎よ、敵を穿ち焼き尽くせ!【ファイアーアロー】』!」


細い炎が段々肥大化しながら飛んでいき、火柱が上がる。通常のレベル1なら貫通した所がチリチリ燃えるだけなのだが、魔力ブーストのおかげで威力増し増しだ。対悪魔戦で使用したスクロールの効果を見ていち早く覚えたくなったそうでシエラもまた俺と同じように技の練習、習得を試していた。そして1日前に【ファイアーアロー】を覚えた。

魔導書みたいに細かい説明が載ってないので時間がかかったらしい。それでも早い方みたいだが。


道中俺が試しに【炎属性操作】でファイアーアローをイメージし撃ったら一発で出来てしまい、シエラが口を尖らせてずるいと言ってた。…こういうことはあまりやらないでおこう。



ジュワッとすごい音をたてて土スライムは倒せたが、土スライムの土は魔物の一部ではないらしく土の雨となり俺達は泥まみれになった。


「うべぇ…ごめん…」


シエラが泥だらけの顔で泥だらけの皆に謝ってくる。こんなこともあるさ…どっかで体を洗いたい所だが…


「しょうがないわね。ワタシが掛けるわ。」


掛けるって何を?と聞く前に詠唱を始めていた。


「あどけなき水の鏡よ、今一度真の姿を映し出せ。【穢れなき浄水の雫ファウ・アクアドロップ】」


ピチャンと音がした。皆の頭の上に水が落ちるのが見えたので自分の頭の上にも落ちてきたのだろう。

湖面に水が落ち、波紋が広がるかのようにその波が全身に広がる。ふと全身に付着していた泥が消えた。汗も消えた。汚れが全て消えた…!


「すごいな・・・風呂に入って珈琲牛乳を飲み終わった後の最高の状態と同じ気分だ」


「私はそのイチゴ牛乳バージョン・・・!」


「何よそれ・・・洗浄魔法覚えてないの?」


「ああ、知らなかった。…だからシャロはいい匂いがしたのか」


「バッ!な、何言ってるのよ…さっさと進むわよ!」


早歩きで進んで行ったシャロにまた泥スライムが大量に現れ、【雷装】で自動防御を展開するも、泥だけは攻撃判定と見られず泥だらけになったシャロが「なによ、もー!」と珍しく声を荒げるのであった。


泥スライムを捌きながら1日ちょっと進むと沼地は抜けられた。何度目か分からない洗浄魔法をシャロに掛けてもらい、半日程進むとようやくラルシェが住んでいた村が見えて来た。


近づくと何かを抜ける感覚がした。ラルシェが言ってた魔物化を抑える結界というやつか?ちょっと力を抑えつけられるような嫌な感じはするがこれが村の生命線と考えると怖いね。こんな結界1枚無くなるだけでここの村人は魔物化し暴走してしまうかもしれないのか。


「な、まさかラルシェルクか!?なぜ…あいや、無事でなによりだ」


「ただいま戻りました、司祭様!」


結界を超えて少し経つと、司祭様とやらが走ってきた。結界を抜けると術者に伝わるのか、便利だな。


「ラルシェルクよ…そちらの方々は一体…?」


「俺の命の恩人です司祭様!街で魔物化した俺を助けてくれただけでなく、ここまで護衛もしてくれました。村の食べ物や薬も運んでくださったのです。この人達は信用できます。この村に入れても問題ないですか?」


「しかし……いや分かった。お前さんの家に泊めてやるがいい」


「ありがとうございます!では妹の様子が心配なのでこれで失礼致します、司祭様。」


「い!妹…お前さんの妹だが一人じゃ心配だったから協会で寝かせてある。今日はもう夜遅いから明日来るといい」


「あ、そうなんですか…?うーん、分かりました。では明日伺います。」


この司祭、目が泳いでいる。何か焦っている感じもするしかなり怪しい。だからと言ってここで何を言おうとシラを切るだろう。なんの証拠もないしもう少し様子を見よう。


ラルシェに案内され、石壁に藁の屋根に着いた。といっても歩きながら見た全ての家がそんな感じだったけどね。んでここがラルシェの家らしい。思ったより広く、子供二人で住んでるようには思えない場所だ。水道なんかはなく少し離れた所に井戸があり、4か所ある井戸から近くの井戸を使うんだと。


家の中ではトイレとキッチン…と言っても昔話に出てくるような窯が2つと下に木を敷いて燃やし、鍋を吊るして調理するものがあるだけだ。不便だが蒼汰からしたらナニコレ使ってみたい!という逆に喜べる所だった。

しかし長旅で皆疲れていた為今日はもう寝る事となった。当然この人数の布団等は無い為、ふかふかの絨毯…女将さんの貴族用の部屋に泊まった時にあったあの絨毯をイメージして出し、皆で雑魚寝だ。

ラルシェが魔力を注ぐと光る灯りを弱く点け、眠りについた。


家では寝る時電気をオレンジ色の小さい豆電球みたいなのだけ点けていつも寝てたな。別に消してもなんの問題もないんだけど、昔からのクセというか習慣かな。あの弱い光の電気、小さいのだけ!とかオレンジのだけ!友達は夕日モードとか言ってたっけ。いつか調べた時、名前は夜中ずっと付けているものということで<常夜灯>という名前なんだと。こっちの世界でもあるんだね。


そんなどうでもいいことを考えながら眠りについた。


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